『チリンの鈴』(1978)【この映画に注目!】
羊といえば、心理テストでも“優しさ”の象徴として
登場するほど、穏和な動物として知られる。
そんな可愛い子羊・チリンが、
母親を狼に殺され、価値観を一変させる。
「弱いまま殺されるのはイヤだっ!」
そしてチリンは事もあろうに、
母のカタキである狼・ウォーに弟子入りする。
「ぼくは狼より強くなって、お前をやっつけてやる!」
…この時点で、チリンは色々と過ちを犯していたのかも知れない。
師であり、父とも言える存在となったウォーは、
「生きる事は悲しみを知る事」
とチリンに説く。また、
「心の牙を研げ」
とも説くが、それは、“憎め”とか“呪え”といった
負の感情を鼓舞している訳では無い様に思える。
…そしてチリンは、鋭い角と岩をも砕く蹄を持つ
恐るべき野獣の姿へと変貌を遂げ、
今やウォーと共に「殺し屋」と恐れられる存在と
なったのだった…!
そしてチリンが、最後に知った悲しみ。
強さと殺戮の果てに待ち受ける宿命。
捉え方によっては、視聴者に向けて、
「生き抜く事は地獄。孤独。イヤなら弱いまま死ね」
…と、説いている様でもある。
このアニメを観ている子供達が(特に男の子が)、
野獣と化したチリンの姿を見たら、どう思うだろうか?
「おぉ、カッコイイ!」
「やっぱり、生きるためには強くならんとな!」
と、鼓舞されるかも知れない。
だがその一方で困惑し、本作の悲劇を忘れられないだろう。
そしてその後の人生で、“生きる”という意味を
問い続けていくのではないだろうか…。☆
やなせたかし先生の原作絵本も、なかなか強烈だ。
ぜひ、お子様に読み聞かせよう!♪
そして、お子様からの質問には真摯に向き合い、
責任を持って答えような!!☆