恐竜の世界史
若手恐竜研究者のスティーブ・ブルサッテ氏が書いた『恐竜の世界史』を読んだ。
研究現場の熱気と、最新研究のこと、そして恐竜が誕生してから絶滅するまでの歴史を一冊で書ききった、とても良い本だった。
表現も翻訳も平易で、読みやすいと思う。
ぜひおすすめしたい。
実は、恐竜や昔の地球のことを研究している研究者というのは、非常に少ない。
理系の中でも、どうしても「すぐに役立つ研究」「金になる研究」に金が流れるので、自ずとそうした研究に多くの人員が割かれる。
だから、世に出回っている本や情報も、どこかの本から拾ってきた孫引き情報が多く、最新研究が載っていないばかりか、今はもう否定された情報が載っていることさえある。
考えると、高校の理科で地学を学んだ人は少ないはずだ。
大学入試でも地学受験者は少なく、参考書も少ない。
しかし地学で扱うのは、宇宙、地球、環境、天気、恐竜、鉱物、地震や土砂崩れ、火山、海…
つまりはとても範囲が広く、関心のある人も決して少なくないだろうトピックたちなのだ。
こうした分野の少ない研究者の中で、
説明がうまく、文才があって、かつ一般の人たちにむけて語りかけるモチベーションやタフネス、余裕がある人はごくごく稀だ。
そういう意味で『恐竜の世界史』を書いたブルサッテ氏は、大変貴重な人材だと思う。
地球科学や惑星科学、宇宙科学の良い本はとても少ない。出版ペースも遅い。
これは地球惑星科学をかじった身としてはとても悔しい。
私の仕事はテレビなので、番組でももっと量産したいのだが、膨大なCGが必要で金がかかること、世界中の限られた研究者に片っ端から取材していくのは時間予算両面で厳しいことから、そう量産できない。
今後の課題にしたいと考えているところだ。
週末は台風のようなので、また地球史の本を読みながら、こもって少し考えてみようと思う。