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箔押し屋さんに同人誌カバーの全面空押しを依頼した話。

◇はじめに

私、閑宮が5/21イベントにて頒布した冊子装丁について、誠に今更ながらまとめておきます。拙作同人誌をお手にとってくださった方、これから同人誌を作られる方のご参考になれば幸いです。
※女性向け二次版権同人誌の装丁に関する話なので、苦手な方はご注意下さい。

頒布した同人誌


『全面箔押しの同人誌が出したい!』
実はかねてからの野望でした。
箔押しといえば素晴らしい加工ですが、高価なもの。それを全面となると簡単には踏み切れませんでした。ですが、5月のイベントで自分にとってとても思い入れの深い作品を頒布する事となり、長年の野望を実行に移しました。

(1)なぜ印刷所に依頼しなかったのか

大手の同人誌印刷所さんには箔押し加工のプランがあります。もちろん、そちらで作ったほうが全ておまかせでやってくれるので、煩雑さはありません。ですが、納品時まで箔押しの完成形が分からなかったり、紙選びやデザインに迷いがあったため、相談と校正ができる箔押し屋さんに別途依頼する事に決めました。
箔押し同人誌の単価を下げるためにはある程度の部数を発注しなければなりませんが、もし大量に発注して納得できない結果になった場合は大量の在庫を抱える事になってしまいます。しかし、同人誌カバーだけ先に製作し始めれば、たとえ一冊も頒布できなかったとしても、同人誌カバー代だけの赤字で済むと思いました。

(2)今回の装丁のテーマと箔押しの種類

今回出した同人誌タイトルは『Chocolate brownie with strawberry syrup』
冊子の名前が表現しやすいものだった事もあり、テーマは悩みませんでした。パティスリーが似合う可愛い装丁にしようと決めました。
冊子カバーは箔押しのみ、中の冊子は一色刷りのようなシンプルな物。
カバー付きの状態だと中の冊子カラーがうっすら透ける、空押し加工がされた装丁ににしようと思いました。箔も可愛いですが、今回は空押しでいく事にしました。

(3)紙選び〜相性の良い紙探し〜

空押しする事を決めてたので、加工と相性の良い紙を探しました。
まず最初に思いついたのはパチカ。
次に、OKフロートとOKムーンカラー。
今回はシンプルなデザインなのでパチカとOKムーンカラーを試そうと決めました。

紙問屋さんから、パチカ130kgとOKムーンカラー90kgを10枚ずつ仕入れました。だいたいパチカが1,000円位、OKムーンカラーが500円位でした。いかにパチカがお高い紙か、これだけで分かりますね。もちろん、少量だと断裁費が割高なのでまとめて買うともっと安くなりますが、安くはないOKムーンカラーの倍の価格という事になります。

空押し加工に合う紙

(3)箔押し屋、『コスモテック』さん

今回、東京にある箔押し屋さん、コスモテックさんに依頼しました。
※あらかじめコスモテックさんには社名掲載許可を頂いてます。

もしかしたら、大手同人誌印刷所さんを利用されている方ならご存知かもしれません。とにかく技術が凄い箔押し屋さんで、もちろん一般の制作がメインの会社さんですが、同人誌の表紙やカバーのご依頼もOKの会社です。
以前、コスモテックさんが作られたパチカ空押しを見て数年、まさか自分がお願いできる日が来るとは思いませんでした。
まずは、コスモテックさんにデザインを見せつつ、空押しに適したデザインを完成させていきました。
細かすぎる?大き過ぎる?線と線の隙間は足りる?余白はどれくらい?と、一人では全く分からない部分を色々ご相談させていただきました。とても親身に相談にのって頂き、何度もデザインの修正を行いました。この段階で、コスモテックさんにご依頼する事にして良かったと確信しました。

※タイトル部分はセンスが無さすぎて絶望してましたが、
相互さんのぽん様にアドバイスを頂きました。大変、お世話になりました。

最終的に仕上がった入稿データはかなり細かいデザインになりました。
箔押しの場合、もっと大きなデザインしかできないと思ってたので、
『こんなに細かい点や線もOKなの?』と衝撃を受けました。

(4)いざ、校正

『次の同人誌で箔押しするぞ!』と決心してから2ヶ月弱。
ついに校正をお願いしました。
10枚ずつ買ってコスモテックさんに送付したパチカとOKムーンを使用して頂き校正をお願いしました。
この段階で掛かる費用は紙代+フィルム代+版代+校正代。
デザインや仕様によって価格は異なると思うので具体的な金額は濁しますが、私の場合は新幹線で日帰り旅行する位の費用でした。この価格で夢の箔押しにチャレンジできるとは!
そして、校正出しされたのがこちら。

しっかり透けてる!そして、写真では伝わりづらいかもしれませんが、想像以上にふわふわの感触です。
もう一枚の方はというと

うっすら透けてます!そして、写真では分かりづらいかもですが、パールがキラキラして上品な感じです。
今回イメージしてた、パティスリーみたいな装丁には、OKムーンカラーがドンピシャでした。パチカもパチカで素敵だったので、また機会があれば使ってみたいですね。
この時点で大興奮!こんなに素敵な空押しをして頂けたなら、たとえ本番発注で在庫が残っても後悔しない自信がありました。

(5)いざ、本番

OKムーンに決めたところで、紙問屋さんからOKムーンカラーを仕入れます。箔押し屋さんと校正をしてる間に、同人誌の部数アンケート等もさせて頂きました。思った以上にご投票頂き、ドキドキしながらも、過去一番多い部数での作成を決めました。
紙代は外資系ホテルのシングルルーム一泊分位でした。
パチカだとしたら、多分倍してたと思います。
流石に紙の量が多いので、紙問屋さんからコスモテックさんに直接送付頂きました。あわせて、コスモテックさんにも校了と本番の発注をしました。今回は偶然にも本番の代金も校正代金と同じくらいの費用でした。
ちなみに後から頂いたマグネシウム版がこちら。とても美しいです!

(6)本体作成

ここまで来てようやく冊子本体を作り始めました。肝心の原稿もヒイヒイ言いつつも、なんとか仕上がりました。本文サンプルも掲載しないまま、部数アンケートをお願いしてしまい大変申し訳ございませんでした。見切り発車なのに、ご投票頂いて感謝しかありません。
冊子本体はいつもお世話になってる大阪印刷さんで作成しました。今回は部数が多いので、だいたいヨーロッパ旅行位の費用です。
冊子の表紙はアストロブライトライトピンク。ビビットなピンクです。一応、ストロングピンクも見本紙を取り寄せて試してみましたが、なぜかライトピンクの方が綺麗に透けたので、ライトピンクに決めました。
カバー前提なので、表紙デザインはシンプル!一応、『ストロベリーソース掛けチョコレートブラウニー』のつもりです。

(7)いよいよ完成

コスモテックさんより、空押し済カバーが届きました。
また、同時にプリンパさんに発注してたブック帯も届きました。ちなみにブック帯はトレーシングペーパーで作成しました。トレペ帯なら、気合をいれたカバーもちらっと見えると思い選択しました。
いよいよ、冊子本体+カバー+帯を合体させます。

いかがでしょうか。可愛くないですか?私的には100点満点の仕上がりでした!
写真では少し分かりづらいかもですが、細かいところまでキッチリ空押しして頂けたおかげで、全体的に薄っすらピンク。しかも表面がパールでキラキラしてます。正直、ぱっと見では何の同人誌なのか、というか同人誌かどうかも怪しい仕上がりですが、今回は通販のみの頒布なので問題なかったと思います。

(オマケ1)一番悩む、頒布価格

私にとって、同人誌の一番の悩み。それは、頒布価格です。
もちろん、同人誌なので利益が出ないようにするのはマストです。
ただ、赤字は赤字で辛いので、限りなく赤字が出ないようにしています。
また、頒布価格を高くしてしまうと手にとってくださる方はもちろん、私自身の立て替え代金も増えるので、なるべく頒布価格を抑えるように心掛けています。
たとえば、今回は一番最初の支出が2月。だいたい2月〜5月でヨーロッパ周遊位の合計金額を各業者さんへ支払ってます。
5/21のイベント同人誌を🐯さん経由頒布し、私の手元に着金するのは早くて6月末。今回は私の梱包出荷作業が遅れたため、実際の着金は8月でした。
数千冊頒布するような大手さんはつくづく凄いと思います。場合によっては数百万円を数ヶ月立て替える事もあるのではないでしょうか。
最終的に、今回は1冊820円(税抜)で頒布致しました。私が出した本の中では高くなってしまって恐縮ですが、全面箔押しの同人誌としてはかなり頑張れたと思います。たくさん部数を出させてもらったおかげで、ここまで単価を下げれました。

(オマケ2)あると便利な折り機

今回、自力で大量のカバーと帯を巻くことになったので紙折機を購入しました。一番お手頃な手動のものにしましたが、一度に数枚ずつピシッと折り筋をつけられるので、枚数が多い場合はダントツオススメです。価格は一万円前後です。

◇追記

誤解を招くといけないので、追記しておきます。
筆者はかなり同人歴の長いオタクで、XX年越しにこだわりの一冊を求めた結果、こんな感じになりました。また、大変ありがたい事に人気ジャンルの追い風もあって、小説では珍しい部数を出しました(🐯さんのランキングでは3位でした。おそらくジャンル問わず小説作品が上位ランクインするのはレアだと思います)。トータル金額やカバー巻きの量がえぐかったのは、単に部数が多かったからです。

少数部数から、なるべく低価格で同人誌を出す事は可能です!
個人的に10部以下なら『ちょ古っ都製本工房』さん、それ以上なら『大阪印刷』さんがオススメです。ページ数にもよりますが、諭吉さん1枚以下から発注する事もできます。私も学生時代はお手製のコピー本を出したり、清水の舞台から飛び降りる覚悟で印刷所に数冊単位で発注したりしてました。
今回のまとめ記事で同人誌を出そうか悩んでる方のハードルを上げてしまっては悲しいので、追記しておきます。

◇最後に

おかげさまで、こちらの同人誌は全て頒布を終えました。
作りすぎたかも?と頒布前は不安もあったのですが、結果的にたくさんの方にお手にとって頂けて嬉しかったです。
今後、箔押しを検討される方にはぜひ、箔押し屋さんをおすすめしたいです。私はコスモテックさん、激推しです!きっとこだわりの一冊を作ることができると思います。

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