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樋口円香の【ピトス・エルピス】を読んだ感想文と気付き

このnoteには、樋口円香のコミュ【オイサラバエル】【Merry】その他色々や、浅倉透について、シナリオコミュの『天塵』や『天檻』などにも触れているネタバレ満載noteです。

また画像を使いまくっているので通信量にご注意ください。

2024/03/22 なんか読み直してると繋がってない部分や逆の意味になってる文があったので加筆修正しました。あと浮いてた謎まで埋まったのでこれが俺の答えや!!ありがたいことに修正するまでにいくらか見ていただいているので、更新したことをタイトルにも入れておきます。(見方が全然変わってしまった部分があったので)

2024/03/29 オイサラバエルとMerryを読んで追加の発見があったのでまた追記しています……なんなのこのコミュ……。

樋口円香には激情がある

このコミュの感想文を書くにはこれを大前提に進める必要があります。


宝石箱の中身とはなんだったのか?


暗転字幕:その中身は何?

hakoコミュでは冒頭に以下の暗転字幕が入ります。

それは
古い宝石箱だった
大切なものを仕舞うために作られた箱だった
宝石箱に鍵をかけよう
大切なその中身を誰にも気づかれないように

暗転字幕:宝石箱に鍵をかけよう。大切なその中身を誰にも気づかれないように

普通、宝石箱というのは大切な中身を誰にも取られないようにするものです。
この箱は誰にも気づかれないようにするために鍵がかかっています。

結論から言えば、それは激情でしょう。


なぜオルゴールに鍵を締めたのか

いきなりですが、正直よくわかってません。

過去オルゴールを聴いた思い出という感傷的な考えもなくはないですが、僕はそのが円香の胸を打ち、しかしそのが円香が自分自身に定義する音楽とは異なっていたからだと思っています。

もっと簡単に言うと、好きだけど自分には歌えない曲(向いてない曲)だと円香が感じたのではないかと思っています。

ところで、オルゴールなのになぜと書いているのかというと、このオルゴールは『天檻』のエンディングで流れたあのメロディ。
つまり透(円香)が歌うことになったあの歌だと思っているからです。

暗転字幕:放置されていたせいか、オルゴールの音は歪んでいた
gemで歌い始める前に挿入される暗転字幕
セピア色の景色の中でオルゴールが歪んだ音でメロディを奏でる


小糸:……そういえば、透ちゃん、なんでこの曲にしたの……?
小糸:昔観てた、教育番組のやつ……
透:あー、そう。エンディングのやつ
透:なんでだろ……なんとなく?
円香:これなら歌詞飛ばないって思ったんでしょ……2番、怪しそうだったけど
雛菜:あは~。雛菜この曲、ごはんの匂いする~
ノクチル全員で共有されている

大体の人はそういう歌を聴いても「いいな」と思って聞き続けるだけでしょうが、hakoでは円香は「必要のないものは残さない。買えないものは諦める。そんなものは最初から無かったことにする」と言っていました。

円香「必要な物ならまた買えばいいいし」シャニP「でも――二度と買えないものだってあるじゃないか」円香「それなら諦めるしか無いですね。最初から無かったんです、そんなものは」
hakoコミュ「足場」選択肢より

つまり、円香はこの曲を、円香が感じた通りの正しい形で歌いたかっただと思います。
それが手に入らないことを悟ったから、鍵を締めてしまい込み、無かったことにした。

シャニP「大切ではなくなったから捨てる――そうとも限らないだろう」
円香「そうかもしれませんね」
hakoコミュより


オルゴールの話に戻しますが、面白いのはここからで、物理的には閉じ込めたのはその恐らくは〝繊細〟で〝技術〟の要る美しい憧れの曲であって、精神的にはその憧れに近づくために自身の激情を閉じ込めているということです。

実際にピトス・エルピスまでの円香は〝いつも冷静で分別がつく、精巧で複雑で繊細で技術を重要視する〟人間に見せていました。

憧れるものに自分を近づけるのはある種当然だと思いますが、ここまで徹底して今の円香になったのは、なんとも円香らしいと思います。

子供の頃の「憧れ」というのは後の成長に大きな影響を与えます。
子供の頃に、今まで無意識のうちにしていた行動を「これってダサい気がするから止めておこう」と思って止めたり、憧れの人がやっていたからという理由で意識的になにかを真似し始めたりした経験は誰にでも経験があると思います。

私がここで書いているのは、それです。
円香にとってその分岐点となるアイテムが、オルゴールだったのではないでしょうか。


ところで、『天檻』ではこの歌を歌うことに決めたのは円香ではなく、浅倉透です。

実際にどういう曲なのかわかりませんが、この曲、浅倉透なら間違いなくうまく歌えるでしょう。
浅倉透の歌声は、技術は……精巧かどうかはちょっとわかりませんが、繊細で透明なのは間違いないと思っています。

円香はこの曲に浅倉透を見たのでしょうか。
少なくともオルゴールに鍵を締めた理由に浅倉透が関わっているのではないかと思っています。

「透にできることで、私にできないことはない」という言葉が突き刺さります。

円香「透にできることで、私にできないことはない」
『天塵』より

それにしても、透がこの曲に決めたのは「なんとなく?」でしたが、もしかすると最初から透は円香が歌うこの曲を聞きたかったから、これを選んだのかも知れません。

透「なんでだろ……なんとなく?」
透はそんなこと意識してないだろうけどね

ここからuru uruに繋がります。


樋口円香には正解がある

uru uruでは、なにかのコンサートを見た帰りのシーンから始まるのですが、そこの会話で重要なのは一番最初のこれだと思います。

〝胸を打つものは〟
技術
私も同感です。


暗転字幕:胸を打つものは
円香「技術」円香「いかに涙を誘う曲であっても、泣きながらステージに立つわけではない。譜面に合わせた緩急、強弱――」
円香「演奏するものの内面ではなく技術こそが、観客に楽しさや悲しさをもたらすのだと。そう言っていましたよ。どこかの有名な演奏家が」
円香「私も同感です。」

なぜ円香は技術を重要視するのでしょうか。
その答えはシーンが移った先の選択肢にあるように思いました。

場所が変わってトレーニング中、円香が楽曲のある箇所に納得が行っていない様子で繰り返し練習して喉を痛めつつあるということにシャニPが気付くシーンです。

その中の選択肢「納得いかない?

円香「……トレーナーさんにも評価いただいていますし、求められているレベルには達しているかと」シャニP「ああ、俺もそう思う。だけど円香にとっては違うんだろう?」円香「……………」
円香「私にとって、ではなく……違うものは……違う……」
円香「まあ、知りませんが」シャニP(まるで……正解があるかのように言うんだな。世界にたったひとつの正解が)

違うものは、違う…と正解があるように言う円香

別の選択肢「きれいに歌えていたよ」では以下の通り。

シャニP「美しく歌えていればいいわけじゃないんだな」
円香「……え?」
円香「そもそも美しくありません。私にとっては」シャニP「………」シャニP(決しておだてたわけじゃなかったが………円香には見えているんだろうか。本当に美しいものが)

「美しく歌えればいいってわけじゃないんだな」という発言に対して本気でなんのことを言っているのかピンときておらず、そもそも美しいとは思ってないと言い切る円香

この2つの選択肢をまとめると、円香はたった一つの正解・本当に美しいものが見えているということです。
少なくとも円香の中で基準になるものがあるのです。

樋口円香はなぜ技術にこだわっているのかという話に戻りますが、円香は正解を既に知っていて、恐らくは正解へ近づくために技術を求めているのだろうと思います。
至極真っ当なアプローチですが、場合(正解)によってはこれが正しいとは限りません

それでは正解とは何でしょうか。

僕は音楽を聞いているとき、ここのこれは正解の音だ、あるいは正解のメロディだと思うことがあります。
カラオケのようにお手本があるわけでもないのに、個人の好みを超えてこれで正解だと確信するようなことがあるんです。

円香もそういう基準になるものを実際に見たり、経験したのではないでしょうか。

それはおそらく、封印したオルゴールに関連します。

先にも書いたように、このオルゴールの曲はノクチル全員が知っている曲です。そして、おそらくこの曲は樋口円香にとって浅倉透を想起させる曲なのだと思います。

つまり、円香がオルゴールを封印した理由は、浅倉透という美しい正解に届かないためであり、しかし尚、浅倉透に近づくために、浅倉透を一人にしないために、今の樋口円香を形作ったのではないでしょうか。

大切で、美しいから封印したのかも…とも考えなくはないですが、こう考えた方が天塵の「透にできることで、私にできないことはない」発言が更に美味しくなります。


正解が浅倉透であると仮定した場合、浅倉透という正解に近づくためのアプローチとして技術を求めるのは正解でしょうか?

円香は〝胸をうつもの〟技術であるという考えのもとに、レッスンをしていました。
ですが、浅倉透(正解)は、明らかに技術で勝負していません

私が浅倉透を見ている時、浅倉透に感じることは

暗転字幕:心をえぐるものは
hibi冒頭より

これです。

浅倉透は技術を無視して心を穿ってきます。

円香が求めている正解が浅倉透なら、〝胸をうつ〟ための技術ではなく、〝心をえぐる〟ための物が必要になります。

それは選択肢「喉、痛めてないか」でも、円香が薄々気づきつつあることが示唆されていると思います。

円香「……歌について学ぶほど必要なのは技術なのだと思います。精巧な技術がなくてはならない。感動も陶酔も、自由で伸びやかに見せるのも技術」
円香「なんて語るにはおこがましいレベルですが」シャニP(歌の技術を求めながら、丁寧に扱うべき喉を痛めることには、なにか、少しだけ違和感があった)

技術を求めながら喉を痛めているのは、正解が技術にはないと理解しつつあるからではないでしょうか。
技術に正解が見つからないから無理をして痛めるし、技術とは異なるアプローチを試して喉を痛める。

〝胸をうつ〟のは技術でも、〝心をえぐる〟のは激情。

それに気づき始めたのがこのコミュだと思います。


正直、円香が透を基準にしたり、固執しているという考え方に偏るのが好きではなかったので、これまで全然言ったり書いたりしてこなかったのですが、ここまで状況証拠が揃うとこう言わざるを得ません……。

2024/03/29追記 オイサラバエルを読みました。
不完全なもの(欠けたもの)と完璧なものこそ美しいのかという問いに対して、円香の答えは「目に見えるものは極まったところで落ちていく。だからどこまでも見えないものこそがきっと美しい」という答えにたどり着く。


プロデューサー「うん、やっぱり。目を閉じたほうが、この花が見える気がする」円香「透明、なのかもしれない。美しいものは」
円香「透き通る」


円香「透(す)」


円香「き」


円香「と お」


コミュの実装順を確認して見たんだけど、もうさ、ピトス・エルピスの答え合わせをどう考えても【オイサラバエル】【Merry】【天檻】でやってるじゃんこれ。

そうなると、オルゴールの曲ってオイサラバエルの「We Wish You a Merry Christmas」だったの可能性も出てきた……けど、まあ天檻説のほうが好きなのでそっちを推していきます。


kara su

カラスは円香の暗喩だと思います。

プロデューサー(窓辺のカラスが小さな箱をつついていた)
プロデューサー(人間に驚いたのかすぐに去ったが)
プロデューサー(小箱は落ちた衝撃で蓋が壊れたようだった)

カラスは繊細な声も自由で伸びやかな声も出せません。
ですが粗く、単純で、野性的な声で鳴くことができます。

カラスが箱をつついて壊したのは、円香が自分がこれまで自分自身を定義して、海深くに沈めていた激情の箱を壊したことの比喩表現なのだと思います。

また、他の選択肢でも円香らしいところが見て取れます。

円香「……」プロデューサー「ガラクタだらけだ。人間にはガラクタに見えても、カラスにとっては宝物なのかな」円香「でも、撤去するんでしょ」
円香「カラスも自分で捨てたんだし」
この台詞の後、屋上から去っていく

カラスは自分で「っぽの」を捨てた。
円香は自分で「っぽの」を捨てた。

円香は透という正解を追いかけるためには、自身の激情家な部分を無駄だと思っていたのかもしれません。
あるいは、元から彼女は詮索されることを、本心を探られることを良しとしない人間なので、激情化の部分は本当に隠したくて捨てたのかもしれません。(別選択肢にも詮索についての言及があります)

暗転字幕:誰にも傷つけられないように
hakoコミュ「足場」選択肢より

ともかく、重要なのは人間にはガラクタに見えてもカラスにとっては宝物だということだと思います。

冷静な円香(人間)にとってガラクタに見えていた激情という巣(素)は、本来の円香(カラス)にとっては宝物だったのでしょう。


gem

こうして、gemの歌唱シーンでは、円香は激情を取り戻したようでした。
しかし、頭は冷静に、心は熱く。


暗転字幕:オルゴールだ 円香「………あーーーーー…」
激情を収めたオルゴールが鳴り始めた


プロデューサー「……あーあ、まだ歌わないようにって言ったのに」


プロデューサー「いつも冷静で分別がつく――そういう円香らしくないな」


円香「あーーーー…………」
思いの高ぶりのままに声を出す樋口円香。よく張った声。


最後の歌うシーンでは、今の冷静な円香と、円香本来の激情の部分がうまく融合した形になったのだと思います。

暗転字幕:放置されていたせいかオルゴールの音は歪んでいた
放置された己の中の激情に向き合う


プロデューサー「きれいな音じゃない」

きれいな音がでない

プロデューサー「いつもとは違う」

違う、違う、違う。

プロデューサー「だけどこの音だ」

この音じゃない

プロデューサー「とても粗くて、単純で、野性的で」

もっと精巧で、複雑で、繊細で

プロデューサー「豊かな音があるじゃないか」

透明な音じゃないと

プロデューサー「まるで」

もっと

プロデューサー「魂を削り出すように」

魂を削り出すように

プロデューサー「美しく」

美しく


円香が激情をもって歌唱するアニメーションGIF



箱は開けられた

hakoコミュの冒頭では、以下のように暗転字幕で箱の説明が入っていましたが、

暗転字幕:大切なものを仕舞うために作られた箱だった
閉じられた箱

gemコミュの最後に入るこの白背景の「大切なものを仕舞うために作られた箱だった」という過去形の文章は、箱がその役目を終えたことを示しているように思います。

白背景字幕:それは
白背景字幕:大切なものを仕舞うために作られた箱だった

終わり。



2024/03/29追記 Merryを読みました。

プロデューサー「プレゼントは、俺が贈りたいものを選んだ」
プロデューサー「円香はきっといらないって言うだろうけど、今日だけは押し付けるよ」
プロデューサー「好きなものとか大事なものとか……何か見つかった時に使ってくれ」
円香「………宝石箱――――」
プロデューサー「俺に教えてくれなんて言わない。ただ、大切にしてほしい」
プロデューサー「……そういう願いを込めて」

過去に不要と判断したものを入れて放置した挙げ句壊れた宝石箱(オルゴール)とは対象的に、大事なものは大切にしてほしいと願いを込めて送る宝石箱。

なんすかこれ。震えた。



所要時間7時間30分。
もう二度とシャニマスのnote書かん。

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