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虹色の鳩

20年以上昔の話です。
なんか急に思い出しました。

東京から山梨に引越してきて、新しい我が家の周りにはまだ空き地が沢山ありました。そもそも何故、東京から山梨に引っ越してきたかというと、当時は子育て真っ最中で、交通量の多い便利な土地の賃貸マンション住まいで、近くに自然がないわけでもないけど、そこに行くまでの道はどこも車が多く危険…子供たちが自由に外遊びを満喫できないことを残念に思っていました。そんな時に偶然山梨の自然豊かな土地の魅力に出会う機会があり、新たな子育ての場所としてはピッタリなのではないかと心惹かれて選び移り住みました。

子供の頃、東京と言いつつイメージは「東京の田舎」(多摩動物公園がすぐ近くにありました!)に住んでいた私は、自分が毎日楽しんだ友達との自然の中での自由でワイルドな外遊び体験を自分の子供たちにも経験して欲しいという思いが強かったのです。もっともっと伸び伸び自然と戯れながら遊んで欲しかったのです。

幸いにも2人の子供たちはそれぞれに、引越し先の山梨にもすぐ馴染むことができて沢山のお友達に恵まれ楽しそうに暮らしておりました。
学校や幼稚園から帰宅すると毎日毎日、自転車に乗って近所のお友達と日が暮れるまで遊んでいました。東京のお友達とのお別れは寂しかったと思いますが、「お引越しはお友達が減るんじゃなくて、更に沢山に増えるんだよ!」って話したことを覚えています。

そして、山梨にもすっかり慣れてきたある日、小学1年生だった息子が学校から帰って近所の同級生たちと外で元気に遊んでいました。そして、その出来事があったのです。

家にいた私のもとへ、息子とその友達数人が息を切らせて駆け込んできて、
「たいへん!たいへん!」
「鳩が!鳩が!」
「虹色の鳩が死んでるみたいー!」
「どうしよう…どうしたらいい?」
「ねぇ!お母さん早くきて!一緒に見て!」

鳩?虹色の? 鳩ぉ〜?? 虹色のぉ〜??
あたまをぐるぐるさせながらとりあえず、子供たちに手を引っ張られながら私も行ってみました。一羽の鳥が空き地で倒れてる…可哀想だけど、もう既に死んでる鳥の姿がそこにはありました。

ただその鳥は鳩ではなく、雄のキジでした。
雌のキジは色が地味ですが、雄のキジはキラキラおしゃれな色なんですね。子供たちの感性は素晴らしいなと思いました。鳥の種類もあまり知らなかったのだと思いますが、キラキラ色鮮やかな雄のキジを「虹色の鳩」と表現するあたり…なんて素敵なんでしょう!今でも思い出すたびに子供だからこそ表現できるその素直な感性に感動します。

ちなみに、虹色の鳩はその後、子供たちがチカラを合わせて空き地の隅っこの方に穴を掘ってお墓を作ってあげていました。「にじいろのはとのおはか」…目印のあったその空き地にも今ではもう新しい家が建ち、虹色の鳩は、その姿を知るみんなの心の中にだけ思い出として佇んでいます。優しい子供たちに見つけてもらって、素敵なお名前で呼んでもらって…あの鳩…いや、本当は「キジさん」…は最後にとっても幸せな気持ちで天国に飛んでいったんじゃないかな?今もそんな風に想いを馳せています。

虹色の鳩…思い出すと心がホッコリ温かい気持ちになります。当時は近所でキジが朝よく鳴いていたことも思い出します。子供たちの優しい心を育んでくれたこの自然に感謝しています。
ありがとう♡

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