覚醒の話20 「伏すこと久しきは、飛ぶこと必ず高し」-菜根譚から-
「伏すこと久しきは、飛ぶこと必ず高し」とは、菜根譚の中にある一説です。
もう少し長めに書くと、次の通り。
以下は、PHP文庫 中国古典百言百話1『菜根譚』吉田 豊著より引用。
「伏すこと久しきは、飛ぶこと必ず高く、開くこと先なるは、謝すること独り早し。これを知らば、もって蹭蹬(そうとう)の憂いを免るべく、もって躁急の念(おもい)を消すべし。
長いことうずくまっていた鳥が、はるか高い空に舞い上がり、いち早く咲いた花は、いちばん先にしおれてしまう。この道理を心得ておけば、途中でへたばる心配もなく、あせって苦しむこともない」
引用以上。
私が書の道を目指して研鑽していた時、課題に出された言葉がこの「伏すこと久しきは飛ぶこと必ず高し」という前半部分で、自宅で何枚も半紙に書いては練習をしていましたが、それ以来、好きな言葉となりました。
コツコツ、黙々と修練を続け、ひたむきな努力を重ねている時が、「伏すこと久しきは」であり、年月を経てその苦労が実り、社会で認められ、それなりの評価を受ける時が、「飛ぶこと必ず高し」です。
どんなことでも志すものを成就しようと思ったら、その考えが大事だと思っています。
ただ私自身、突然、それまでの仕事を辞めたことで経済基盤が危うくなり、書道を続けることができなくなってしまい、この戒めを守れなかったので、成就しませんでした。
若い内、まだ内面の充実もそれほどでない内に、社会で認められ、それなりの評価を得ているとしたら、それは「開くこと先なるは、謝すること独り早し」に当たるため、 ある意味、危険な状態だと思います。
伏して伏して耐え続けていく、というのも時に嫌気がさすことではありますが、それでも長いこと伏して、己の中身の充実というものを図っていきたいものだと思います。