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動植物の話26 錦鯉に想う 日本人の美意識(774文字)

かなり昔、会社の出張で、京都に行ったことがあります。
その会議を終え、確か京都の天龍寺に立ち寄ったときだったと思うのですが、寺には立派な庭園と、たくさんの鯉が泳ぐ池がありました。

元来、動植物が好きな私は、一人みんなから外れ、池のたもとに立って悠然と泳ぐ色鮮やかな錦鯉を見ていました。
すると、誰かがふいに餌を投げ込んだのです。

錦鯉たちは一斉に集まってきて、とたんに口を大きく開き、大きいのから小さいのまで、音を立てながら重なり合って、ひとつの塊のようになって餌にパクつきました。

投げ込まれた餌は、水に漂う間もなく、すぐさま大きな口の中に吸い込まれていきます。
餌はあっという間になくなりましたが、鯉たちの重なり合う水の音、パクパクと大きく口を開く音がいつまでも続き、見ていてとても圧巻でした。

昔、ドキュメンタリー番組で、錦鯉の養殖業者の様子を見たことがありますが、たいへんな心くばりをして、育てているものです。
特に高価なものは、なおさらです。
これを死なせてしまったら、それこそ大損だからです。

業者の息子はインターネットで、自らのホームページを立ち上げ、そこで、家の錦鯉を写真入りで掲載したら、海外からもたくさんのアクセスがあったということでした。

「是非その錦鯉を見てみたい」ということで、とうとう日本に来てしまった、という外国人が何人かいて、その人たちと業者との交流が映し出されていました。

結局、その商談は成功しなかったようでしたが、こうして日本の錦鯉が外国人にも人気となり、有名になるというのは、やはり嬉しいものですね。

現在では、アメリカやヨーロッパでも錦鯉の品評会が開催され、大いに盛り上がっているそうです。

古来からの日本人の美意識が、こうした鯉たちを作り上げたと思うのですが、真に素晴らしいものは、外国人にも通じるものだということですね。

クンシラン


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