第58回理学療法士国家試験 午後21-25の解説
息子は57回の国試では不合格で、1年間一緒に勉強し、58回の国試になんとか合格する事ができました。一緒に勉強したというのは、私が医師の立場でいろいろ教える事ができたという事です。理学療法士の専門ではありませんが、医師である事から、それなりに知識もありますので、恩返しの意味を込めて、解説やコメントをしたいと思います(いわゆる理学療法士出身の予備校講師や塾の先生と比較して詳しいところもありますが、詳しくないところもありますのでご容赦ください)。もしこれは違うよという所があればご連絡いただければ幸いです。
21.介護保険制度で第2号被保険者がサービス利用となるのはどれか。(58回午後21)
1.多発性硬化症
2.統合失調症
3.腱板損傷
4.白内障
5.末期癌
【答え】5
【解説】
58回午前95でも解説した内容です。第2号被保険者とは40歳以上65歳未満で以下の16の特定疾患に該当すれば介護保険サービスを受ける事ができます。16の特定疾患については、国試までに覚えましょう。
特徴的な事は、心臓や肝臓・腎臓の内臓疾患は含まれていません。透析患者が含まれないのは、身体障害者になるからだと思います。ランダムに力ずくで覚えるのは大変でしょうから、【脳】・【小脳】・・・などと分類して覚えるようにしました。国試までには、覚えておきたいところです(直前詰め込みでOK)。16疾患もあるので語呂合わせはむずかしいと思います。
内臓疾患ではCOPDや合併症をきたした糖尿病があります。
あと、認知症や脳血管疾患、パーキンソン、がんの末期が介護認定してもらえるってありがたいですね。若くてこれらの病気になれば大変ですもの。がんの末期はさすがに身体障害者になりませんしね。
答えは5の末期癌になります。
22.個人情報の保護に関する法律<個人情報保護法>で個人情報として扱わないのはどれか。(58回午後22)
1.血液型
2.氏名
3.生年月日
4.電話番号
5.メールアドレス
【答え】1
【解説】
個人情報とは簡単にいえば、それがあれば特定の個人を識別できるものです。
1.血液型:×
血液型がA型だからといって「あなた」を特定できませんので個人情報とはなりません。
2.氏名:○
氏名はもろに個人情報です。
3.生年月日:○
生年月日や性別はそれだけでは特定の個人が識別されませんが、氏名などと組み合わせて使用する場合には特定の個人を識別することができるため、全体として個人情報となります。
4.電話番号:○
電話番号(とくに携帯電話の電話番号)は個人と1:1の関係にありますので、個人情報となります。
5.メールアドレス:○
複数のメールアドレスを持っている人もいますが、それぞれのメールアドレスは個人に特有のもの(他の人が同じメールアドレスを持てない)ですので、個人情報になります。
23.歩行周期の中で単脚支持となるのはどれか。2つ選べ。(58回午後23)
1.初期接地
2,荷重応答期
3.立脚中期
4.立脚終期
5.前遊脚期
【答え】3、4
【解説】歩行周期に関する問題です。
下の表の上段と下段は左右の歩行周期の対応表となっています。
例えば、一方の歩行周期がIC〜LRの時は、他方はPswになっているという事を表しています。
下の表からは緑の部分が両脚支持期で、青の部分と黄色の部分が単脚支持期になります。
上の表から
1.初期接地:×両脚支持期
2,荷重応答期:×両脚支持期
3.立脚中期:○単脚支持期
4.立脚終期:○単脚支持期
5.前遊脚期:×両脚支持期
24.頭痛を感じる痛覚受容器が存在しないのはどれか。(58回午後24)
1.硬膜
2.脳動脈
3.脳軟膜
4.頭蓋骨膜
5.大脳皮質
【答え】5
【解説】
う〜ん、難問ですね。こんな事、だれも知らないでしょう?本番でこのような問題がでれば勘で選ぶしかないですね。
一応、調べてみました。『中山書店 アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 識る 診る 治す 頭痛のすべて I.頭痛のアウトライン 頭痛はどこが痛むか より引用』には以下のように記載されています。
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疼痛感受性を有する頭蓋外組織は、皮膚、粘膜、筋膜、筋肉、血管および骨膜である。頭蓋骨には疼痛感受性はない。また、(中略)頭蓋骨を灌流するすべての動脈は、種々の疼痛刺激に感受性を有している。しかし、頭蓋骨の静脈には疼痛感受性はないか、あるとしてもわずかである。また、大脳半球円蓋部の脳軟膜動脈や静脈は疼痛感受性が高いわけではなく、大脳円蓋部を覆っている硬膜も他の硬膜と比べ疼痛感受性が低いことが示された。
……………………………………………………………………………….
この記載から1,硬膜 2,脳動脈 4.頭蓋骨膜には痛覚受容体があることがわかります。
また、同様にこのようにも記載されています。
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1940年 Ray と Wolff は,覚醒状態にある脳神経外科患者の硬膜,硬膜動脈,脳動脈および脳静脈に電気刺激を加え、うずくような疼痛が刺激側と同側の側頭・頭頂部に生じることを報告した。しかし、脳実質を刺激しても痛みは生じなかった。
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上記のどこに痛覚受容器がどこにあるかについては、このように意識のある患者で脳の中の各部分を直接刺激して得られたものなんですね。びっくりです。この中で5.大脳皮質のような脳実質には痛覚受容器がないという事になります。
残る脳軟膜ですが、いろいろ調べましたが、脳軟膜に痛覚受容器が「ある」、あるいは「ない」と明確に記載しているものは発見できませんでした。ただし、前述のように、脳軟膜動脈は感受性が低いながら痛覚受容器があるので、脳軟膜も感受性があるとして良いかもしれません。
という事での選択肢のうち、痛覚受容器がないのは5の大脳皮質という事になります。
25.一次予防で正しいのはどれか。(58回午後25)
1.高血圧に対する薬物療法
2.糖尿病に対する運動療法
3.内視鏡検査による胃がん健診
4.骨折経験のある高齢者に対する再発予防
5.健康な高齢者に対する転倒予防の講演会開催
【答え】5
【解説】
地域理学療法での分野である予防医学に関する問題です。
・一次予防:疾病予防・健康増進
・二次予防:早期発見・早期治療
・三次予防:再発予防・リハビリテーション
となります。
ポイント1:リハビリは三次予防
ご存じのようにリハビリテーション(Rehabilitation)の語源は「再び」を意味するReとラテン語の「適する」を意味する「Habilis」が組み合わさったもので、本来の意味は一旦病気となった状態から適した状態を再び取り戻す事です。骨関節障害のリハビリを考えると早期治療とも思えますが、国試では三次予防で覚えてください。
ポイント2:疾患に対する運動療法などは二次予防
運動療法は理学療法の主たる治療法です。理学療法はPhysical therapyと呼ばれるように治療ですので二次予防になります。
ポイント3:合併症の予防は三次予防
合併症の予防は治療のようにも思えますが、三次予防になるようです。
では選択肢をみていきます。
一次予防で正しいのはどれか。
1.高血圧に対する薬物療法:× →二次予防
(薬物療法は治療になります)
2.糖尿病に対する運動療法:× →二次予防
(運動療法はphysical therapyで治療になります)
3.内視鏡検査による胃がん健診:× →二次予防
(健診は疾患を早期発見するためのものですので二次予防になります)
4.骨折経験のある高齢者に対する再発予防:× →三次予防
(再発予防は三次予防になります)
5.健康な高齢者に対する転倒予防の講演会開催:○
(講演会開催は病気にならないように疾病を予防するためのものなので一次予防になります)
紛らわしい過去問を以下に2問紹介します。
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疾患の予防対策で正しいのはどれか。 (第53回 午後 22)
1. 健康診断は一次予防である。
2. ワクチン接種は一次予防である。
3. 禁煙は二次予防である。
4. 合併症の予防は二次予防である。
5. 糖尿病の運動療法は三次予防である。
答え:1
1は二次 3は一次 4は三次 5は二次
一次予防はどれか。 (第56回 午前 23)
1. 高血圧症患者の運動療法
2. 脳出血患者の合併症予防
3. 脳梗塞患者の再発予防教育
4. メタボリックシンドロームの予防教育
5. 糖尿病性足病変患者の筋力トレーニング
答え:4
1は二次 2は三次 3は三次 5は二次
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Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
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