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第59回理学療法士国家試験  午前41-45の解説

 息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
 第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
 昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
 理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。

                  
(41) 介護保険制度の特定福祉用具販売にかかる給付対象品目はどれか。(59回午前41)
1.スライディングボード
2.移動用リフトの吊り具
3.ロフストランド杖
4.ベット用手すり
5.歩行器
 
                    【答え】2

【解説】
介護保険制度で福祉用具をレンタルできるもの以下の13品目あります。

また福祉用具を購入する(全額自己負担)ものは以下の5品目あります。

1.スライディングボード:×
 →貸与13品目の特殊寝台付属品に当たります。

2.移動用リフトの吊り具:○
 →購入すべき5品目

3.ロフストランド杖:×
 →ロフストランド杖は貸与13品目に当たります。なおT字杖は貸与13品目に当たらないので注意が必要です。

4.ベット用手すり:×
 →手すりは貸与13品目に当たります。

5.歩行器:×
 →手すりは貸与13品目に当たります。


 
(42) アキレス腱炎で見られるアライメント異常の組み合わせで適切なのはどれか。59回午前42)
1.骨盤―――――――――――後傾位
2.下腿―――――――――――内旋位
3.踵骨―――――――――――底屈位
4.立方骨――――――――――上方偏位
5.ショパール関節――――――外転位
 
 不適切問題:問題として適切であるが、受験生レベルでは難しすぎる
                    
【答え】なし

【解説】
 解答速報では3社の解答がきれいに別れました(リハアカデミー5、ワニベゼミ:4、三輪書店:3)また私の解答は3としていました。厚労省発表では「問題として適切であるが、受験生レベルでは難しすぎる」ため、採点除外となっています。そして厚労省からは正解も提示されていません。したがって、この問題は無視して、今後も勉強しなくても良いと思います。

一応解答発表前に作成していた暫定版の解説は残しておきます(私の解答は3)。

 問題文が不明瞭です。「アキレス腱炎で見られる」というのが、「原因」を聞いているのか、「結果」を聞いているのかはっきりしません。アキレス腱炎の原因はアライメント異常ではなく、overuseなので「結果」を聞いているものとして考えます。
 この問題に関しては解答速報で完全に解答が割れています。日本語・英語サイトを色々調べてもアキレス腱炎患者でのアライメント異常に関するものは出てきません。なので、この問題に関しては、厚労省の正解発表を待った方が良いと思います。解答・解説は暫定としてください。

 さて、アキレス腱炎の場合、基本的には炎症となっているアキレス腱に対してストレスをかけずに安静を保ちたいです。したがって、3の踵骨→底屈位が良いように思えますが、何か裏があるでしょうか?私は単純に3を正解としました。

1.骨盤――――――後傾位:×
 足関節が背屈位だとアキレス腱がストレッチされ、アキレス腱炎が悪化します。したがって、足関節は底屈位となるでしょう。また膝は屈曲位の方が下腿三頭筋のストレッチを避ける事ができます。膝屈曲位だと股関節も屈曲位となり、このような場合、骨盤は前傾位(体幹は前弯)となると思います。

2.下腿――――――内旋位:×
 足関節が底屈位になると、尖足のようになり、尖足の場合、内反尖足が安定するので、下腿は膝に対してわずかに外旋位になると思います。

3.踵骨――――――底屈位:○
 前述のようにアキレス腱に対するストレッチを避けるために、足関節は底屈位となると思います。
 
4.立方骨―――――上方偏位:×
 足底屈位が軽度であれば立方骨は上方偏位しますが、下図のように完全に底屈位になると立方骨は下方偏位します。

5.ショパール関節―外転位:×
 足関節が底屈位になると、尖足のようになり、尖足の場合、内反尖足が安定するので、ショパール関節はわずかに内転位になると思います。


(43) Parkinson病の治療で適切でないのはどれか。(59回午前43)
1.リズム刺激
2.ドパミン作動薬
3.脳深部刺激法
4.経頭蓋磁気刺激法
5.ボツリヌス毒素療法
 
                    【答え】5

【解説】
選択肢3・4は理学療法士の学生レベルではありません(理学療法士の国家試験レベルではありませんので今後は出題されないと思います)が、選択肢5が明らかに違うので問題攻略は可能です。

1.リズム刺激:○
 パーキンソン病の代表的症状である「すくみ足 (frozen gait):英語も覚えてください)」のリハビリにはメトロノームに合わせた歩行訓練が効果的です。

クエスチョンバンクから引用

2.ドパミン作動薬:○ 
 パーキンソン病は黒質線条体系のドパミン不足が原因です。内服薬としてドパミンの前駆物質であるL-DOPAが処方されます。

3.脳深部刺激法:○
 脳深部刺激法 (DBS: deep brain stimulation)は頭蓋骨に小さい穴をあけ、定位脳手術という方法で外科的に脳の深部にある大脳基底核(とくに視床下核)にへ針電極を埋め込み、それを電気刺激する事によってパーキンソン病の症状緩和を行う治療法です。パーキンソン病に対するDBS治療は 日本では2000年4月に保険適用となっています。

4.経頭蓋磁気刺激法:○
 経頭蓋磁気刺激法とは頭皮上に置いたコイルに高い電流を反復して流すことにより直下の大脳皮質を刺激する方法です。パーキンソン病の治療として、反復経頭蓋磁気刺激法(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)が用いられる場合があります。

5.ボツリヌス毒素療法 :×
 ボツリヌス毒素療法とは痙縮に用いられる治療法です。


(44) 重症筋無力症患者のQMG score (Quantitative Myasthenia Gravis score)に含まれる評価法がどれか。2つ選べ。(59回午前44)
1.意識状態
2.嚥下機能
3.感覚障害
4.眼球運動
5.排尿機能                   
                
                  【答え】2・4

【解説】
 58回午前32でQMGスコアが選択肢となっていたため、重症筋無力症→QMGスコアが出題されると予想していましたが、まさかQMGスコアの内容が問われるとは思いませんでした…。
 QMGのQuatitativeは量的、Myasthenia Gravisは重症筋無力症の事です。受験生は面食らったと思いますが、それでも攻略方法はあったのではないでしょうか?
 重症筋無力症は骨格筋の筋力低下と考えれば、重症筋無力症で見られる症状と見られない症状を区別できると思います。

1.意識状態:×
 →重症筋無力症では意識障害をきたす事はありません

2.嚥下機能:○

3.感覚障害:×
 →重症筋無力症は骨格筋の筋力低下で、感覚障害をきたす事はありません。

4.眼球運動:○
 
5.排尿機能:×
 →重症筋無力症は骨格筋(横紋筋)の麻痺・筋力低下等をきたしますが、自律神経支配の心筋・平滑筋の障害,特に排尿障害をきたす事は稀です。

 以下にQMGスコアの点数表を示します。合計点が高い程重症ということになります。

「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会編.
重症筋無力症診療ガイドライン2014. 東京:南江堂;2014.より引用


 
 
(45) フレイルの判定要件でないのはどれか。(59回午前45)
1.疲労感
2.筋力低下
3.体重減少
4.身体活動低下
5.歩行距離減少
 
                    【答え】5

【解説】
今年も出ましたフレイルとサルコペニアです。今年はフレイルの診断基準でした。

フレイルは以下のFriedの基準で3項目以上該当するものをいいます。

1.疲労感:○
2.筋力低下:○
3.体重減少:○
4.身体活動低下:○
5.歩行距離減少:×
 →歩行距離の減少ではなく、歩行速度の低下です。


Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。


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