第59回理学療法士国家試験 午後51−55の解説
息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。
(51) 関節の組合せで正しいのはどれか。(59回午後51)
1.肩関節――――臼状関節
2.胸鎖関節―――蝶番関節
3.上橈尺関節――車軸関節
4.腕尺関節―――球関節
5.MCP関節―――鞍関節
【答え】3
【解説】
1.肩関節―臼状関節:× →球関節
2.胸鎖関節―蝶番関節:× →鞍関節
→鞍関節:胸鎖関節には関節円板があり、鞍関節でぐりぐり動きます。一方、肩鎖関節は平面関節です。
3.上橈尺関節―車軸関節:○
4.腕尺関節―球関節:× →らせん関節
5.MCP関節―鞍関節:× →顆状関節
MCP関節とは中手指節関節の事でMP関節と同義です。
(52) ヤコビー (Jacoby)線上に位置する椎骨はどれか。(59回午後52)
1.T12
2.L1
3.L2
4.L3
5.L4
【答え】5
【解説】
ヤコビー線はROMにおいて体幹側屈の基準点(基本軸がヤコビー線の中点にたてた垂直線)となっていたりするので、知っておくべき線ですね。
ヤコビー線は両側の腸骨稜を結んだ線ですが、椎体部では第4腰椎の棘突起の高さになります。
臨床的にはヤコビー線は腰椎穿刺(腰椎麻酔を含む)をする際に目印にします。ヤコビー線(L4棘突起)をはさんで、通常その下のL4/5の椎間またはその上のL3/4の椎間を穿刺します。
なぜそこで穿刺をするのかというと、通常腰髄はL1の高さで脊髄円錐となり、L2以下の高さでは馬尾となっているので、L3/4またはL4/5で腰椎穿刺を行っても、脊髄の太い幹部分を穿刺するリスクは少ないからです。
(53) 滑車神経が支配する外眼筋はどれか。(59回午後53)
1.下斜筋
2.下直筋
3.上斜筋
4.上直筋
5.外側直筋
【答え】3
【解説】
外観筋は動眼神経 (III)、滑車神経 (IV)、外転神経 (V)の3つの神経に支配されていますが、滑車神経が支配するのは、下図のように上斜筋です。
なお滑車神経は脳幹の背部から出る唯一の神経という事も知っておいてください。
1.下斜筋:× →動眼神経
2.下直筋:× →動眼神経
3.上斜筋:○
4.上直筋:× →動眼神経
5.外側直筋:× →外転神経
(54) 温痛覚の経路はどれか。(59回午後54)
1.脊髄小脳路
2.皮質脊髄路
3.前脊髄視床路
4.網様体脊髄路
5.外側脊髄視床路
【答え】5
【解説】
1.脊髄小脳路:×
→脊髄小脳路には前脊髄小脳路と後脊髄小脳路があります。下肢の筋からのIa・Ib線維の感覚は同側の後脊髄小脳路を上行して同側の小脳に入力されます。また下肢の全体的な感覚は同側または対側の前脊髄小脳路を上行して同側の小脳に入力します。
一方、上肢の筋からのIa・Ib線維の感覚は同側の後索路を上行して同側の小脳に入力されます(このあたりややこしいですね)。
2.皮質脊髄路:×
→皮質脊髄路はいわゆる錐体路といわれる運動ニューロンの伝導路です。大脳脂質から始まり、放線冠・内包を通って、延髄の錐体で反対側に交叉し、脊髄では側索を通ります。
3.前脊髄視床路:×
→ゴールが視床なので、感覚の伝導路です。下図中のように粗大触覚は後根から入り、脊髄で交叉して、前脊髄視床路を上行して視床に至ります。
4.網様体脊髄路:×
→スタートが毛様体(脳幹の橋にあります)で、ゴールが脊髄ですから上行性ではなく下行性の伝達路です(それだけでこの選択肢は×とわかります)。国試では初出です。この伝導路は運動と姿勢の制御の関連していると言われています。錐体路は皮質脊髄路や皮質核路ですから、運動調節の作用があるこの伝導路は錐体外路という事になります。
5.外側脊髄視床路:○
選択肢解説の図左のように温痛覚は後根から入り、脊髄で交叉して、外側脊髄視床路を上行して視床に至ります。
(55) 一次ニューロンの細胞体が主に存在する部位はどれか。(59回午後55)
1.後角
2.後索
3.前角
4.側索
5.後根神経節
【答え】5
【解説】
一次運動ニューロンと書かずに一次ニューロンと書いているのがミソですね…ははは(^0^;)。
ご存じの通り、一次運動ニューロンの細胞は大脳皮質(Betz細胞)にあり、二次運動ニューロンの細胞体は脊髄前角にあります。ん?となったかもしれませんが、そうこれは運動ニューロンの話ではないのです。運動ニューロンでないとなると、それは感覚のニューロンの事なのです。
下図のように感覚神経の受容体は末梢組織に分布していますが、その細胞体は脊髄後根神経節にあります。後根神経節から末梢と脊髄方向の2方向に線維が伸びており、たとえば温痛覚の感覚ニューロンでは、対側の前角で二次ニューロンに中継して、脊髄を上行する事になります。
なのでこの問題は感覚神経の一次ニューロンの細胞体はどこにあるか?という問題なのです。「感覚神経の一次ニューロンの細胞体はどこにあるか?」ではなくて、「一次ニューロンの細胞体はどこにあるか?」と書くところが国試出題委員の意地悪さ全開です。あ〜意地悪!。
1.後角:×
2.後索:×
3.前角:×
4.側索:×
5.後根神経節:○
Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
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