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第59回理学療法士国家試験 午後41−45の解説

 息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
 第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
 昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
 理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。


(41) 間質性肺炎の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。(59回午後41)
1.湿性咳嗽を生じる
2.拡散障害による低酸素血症を生じる
3.呼吸機能検査で閉塞性換気障害を呈する
4.胸部単純エックス線写真で線維化を呈する
5.コースクラックル (coarse crackle・水泡音)を聴取する
 
                  【答え】2・4

【解説】
1.湿性咳嗽を生じる:×
 →間質性肺炎では肺の実質である肺胞ではなく、肺胞を支持する間質に炎症をきたします。肺胞の炎症(肺炎)では肺胞内に痰がたまり湿性咳嗽となりますが、間質性肺炎では痰がたまらないので、乾性咳嗽(fine crackle)となります。

2.拡散障害による低酸素血症を生じる:○
 →間質性肺炎では肺の間質に炎症を生じ、間質が肥厚するため、肺胞から肺毛細血管への拡散が障害されます。

3.呼吸機能検査で閉塞性換気障害を呈する:×
 →間質性肺炎では拘束性換気障害をきたします。

4.胸部単純エックス線写真で線維化を呈する:△
 →胸部エックス線で線維化を直接見る事はできません。間質性肺炎では線維化を反映したスリガラス陰影を呈します。

5.コースクラックル (coarse crackle・水泡音)を聴取する:×
 →間質性肺炎では乾性咳嗽を来たし、fine crackleを聴取します。
 

 
(42) MRC (Medical Research Council) sum scoreによる筋力が集中治療室獲得性筋力低下 (ICU-AW)に判定を満たすのはどれか。2つ選べ。(59回午後42)
1.すべて同一の背臥位姿勢で測定する
2.ICU入室時の検査で判定する
3.両側合計で48点未満である
4.握力が20kg未満である
5.平均が4点未満である
 
                  【答え】3・5

【解説】
ICU acquired weakness(ICU 獲得性筋力低下:ICU-AW)は、集中治療を受ける重症患者が急性発症するびまん性の筋力低下です。 発症すると病態の重症化を招き、死亡率の増加や ICU 入室期間の延長をきたすと言われています。
 MRC スコアは、徒手筋力テストにより上肢、下肢それぞれ 3 つの筋群について筋力を 5点満点で評価(60 点満点)するもので、簡単で評価者間のばらつきが少ないとされています 。診断には 24 時間以上の間隔をあけて 2 回評価する必要があります。
 測定筋は肩関節外転筋(三角筋)、肘関節屈曲筋(上腕二頭筋)、手関節伸展筋および股関節屈曲筋(腸腰筋)、膝関節伸展筋(大腿四頭筋)、足関節伸展筋であり 、6カ所×2側 (左右)×5段階評価 (MMT)=60点満点で、合計 48 点未満平均 4 点未満の場合に筋力低下ありと定義されます。

Stevens RD, Marshall SA, Cornblath DR, et al:A frame- work for diagnosing and classifying intensive care unit- acquired weakness. Crit Care Med. 2009;37:S299-308


1.すべて同一の背臥位姿勢で測定する:×
 →測定姿勢の規定はありません。ICUでは呼吸不全で腹臥位で管理されている患者さんもいますからね…。

2.ICU入室時の検査で判定する:×
 →ICU入室後ICU-AWを疑った場合、どの時点でも評価しても良いです。ただし、24時間以上時間をあけて2回以上評価する必要があります。

3.両側合計で48点未満である:○

4.握力が20kg未満である:×
 →MMTで評価する。

5.平均が4点未満である:○

MMTを評価する筋と運動方向について60回以降出題される可能性があると思います。



(43) 介護予防事業の基本チェックリストで低栄養判断基準となるBMIはどれか。(59回午後43)
1.16.5未満
2.18.5未満
3.20.5未満
4.22.5未満
5.24.5未満
 
                    【答え】2

【解説】
 BMI (Body Mass Index) はBMI = 体重 (kg) ÷ 身長(m)÷身長(m)で計算され、世界共通の肥満度の指標です。標準値は「22」とされています。
 日本肥満学会の基準によると、普通体重は18.5〜25とされています。
肥満の基準が25以上も覚えておいてください。

1.16.5未満:×
2.18.5未満:○
3.20.5未満:×
4.22.5未満:×
5.24.5未満:×


 
(44) 介護保険制度で対象外の住宅改修はどれか。(59回午後44)
1.浴室段差の解消
2.階段昇降機の設置
3.外階段に手すりの設置
4.トイレ扉を引き戸に交換
5.和式便座を洋式便座に交換
 
                    【答え】2

【解説】
 介護保険制度での住宅改修は要支援や要介護の認定を受けている人が原則一人1回のみ、限度額20万円(うち1割2万円自己負担、補助18万円)で行う事ができます。
 限度額20万円なので、あまり大掛かりなものはできません(居室や廊下の拡張など)。また住宅改修を伴わないもの(照明器具の変更など)は対象外
です(足下照明の設置も対象外。

1.浴室段差の解消:○
2.階段昇降機の設置:× →限度額20万を超えるのでダメ
3.外階段に手すりの設置:○
4.トイレ扉を引き戸に交換:○
5.和式便座を洋式便座に交換:○

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介護保険制度の対象となるのはどれか。 (56回 午前 50)
1. 居室の増築
2. 廊下幅の拡張
3. 照明器具の変更
4. 床面材料の変更
5. 寝室スペースの増築
                     【答え】4
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(45) 特別支援学校の教育現場で誤っているのはどれか。(59回午後45)
1.自立活動関係教室を設置する
2.発達障害を有する児も在籍する
3.学級編成人数は10名以上である
4.複数の食形態での食事が可能である
5.ベットタイプのトイレが併設された学校もある
 
                    【答え】3

【解説】
 特別支援学校は、障害者が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校」に準じた教育を受ける事こと」と「学習上または生活上の困難を克服し、自律が測られること」を目的とした学校です。
 子どもたち一人一人の実態に応じたきめ細かな指導を行うため、公立特別支援学校(小・中学部)の1学級あたりの人数は上限 6人で平均3人、特別支援学級(公立小・中学校)の1学級あたりの人数は上限8人で平均3人と、少人数で学級が編制されてい ます。

1.自立活動関係教室を設置する:○
2.発達障害を有する児も在籍する:○
3.学級編成人数は10名以上である:×
4.複数の食形態での食事が可能である:○
5.ベットタイプのトイレが併設された学校もある:○



Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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