第58回理学療法士国家試験 午前91-95の解説
息子は57回の国試では不合格で、1年間一緒に勉強し、58回の国試になんとか合格する事ができました。一緒に勉強したというのは、私が医師の立場でいろいろ教える事ができたという事です。理学療法士の専門ではありませんが、医師である事から、それなりに知識もありますので、恩返しの意味を込めて、解説やコメントをしたいと思います(いわゆる理学療法士出身の予備校講師や塾の先生と比較して詳しいところもありますが、詳しくないところもありますのでご容赦ください)。もしこれは違うよという所があればご連絡いただければ幸いです。
91.糖尿病性神経障害に特徴的な所見はどれか。(58回午前91)
1.急激な発症
2.自律神経過反射
3.深部腱反射の亢進
4.下肢の靴下型感覚障害
5.近位筋優位の筋力低下
【答え】4
【解説】
糖尿病の3大合併症のうちの一つは末梢神経障害です。
糖尿病の3大合併症とは
1.糖尿病性網膜症
2.糖尿病性腎症
3.糖尿病性神経障害
の3つです。以下のように「し・め・じ」と覚える方法もあります。
このうち糖尿病性神経障害は糖尿病の発症から10~15年で糖尿病に罹患した患者さんの半数近くが併発するといわれています。糖尿病性神経障害では知覚障害や自自律神経障害をきたす事が多く、知覚神経障害では足の感覚鈍麻やしびれ・こむら返りが生じます。知覚障害は左右対称的に手袋と靴下をするところの感覚が強く障害されることが特徴です。自律神経障害では発汗が減少し、皮膚が乾燥して荒れやすくなります。
糖尿病性神経障害の特徴は以下の通りです(脂質と血栓の医学 糖尿病性神経障害 から引用 (http://hobab.fc2web.com/sub4-DM_neuropathy.htm))
1.感覚障害が優位
2.下肢の障害が優位で、上肢の障害は軽い
3.振動覚が早期から障害される
4.下肢の腱反射が早期から低下する
5.眼筋麻痺をしばしば生じる
6.自律神経障害をしばしば伴っている
糖尿病の神経障害では、小径線維(冷感、灼熱感、痛みを伝導する、感覚線維)の方が障害を受け易く、大径線維が構成する運動神経が障害されることは稀です。
以下は神経線維の分類ですが、α運動ニューロンはIa線維で一番太いです。糖尿病性神経障害では細い神経線維が障害されますから、感覚線維や交感神経線維が障害されます。交感神経線維が障害されると副交感線維が優位になりますね。単に、糖尿病性神経障害では感覚線維と自律神経障害になるって機械的に覚えるのではなく、このような理屈を覚えると長期記憶につながると思います。
したがって糖尿病性神経障害では、運動神経が障害される事はまれです。
では選択肢をみていきます。
1.急激な発症:×
糖尿病性神経障害は糖尿病の発症から10~15年で糖尿病に罹患した患者さんの半数近くが併発するといわれていますが、発症は急激でなくゆっくりです。
2.自律神経過反射:×
糖尿病性神経障害では自律神経の障害をきたしますが、起立性低血圧やたちくらみ、発汗が減少し、皮膚が乾燥など、交感神経の活動が低下し、副交感神経の活動が優位の症状となります。 自律神経過反射とは、脊髄損傷患者の合併症で、急な発汗・高血圧・頻脈など交感神経優位の症状となります。
3.深部腱反射の亢進:×
糖尿病性神経障害では末梢神経障害のため、深部腱反射は早期から減弱します。
4.下肢の靴下型感覚障害:○
5.近位筋優位の筋力低下:×
一般的にはニューロパチーの場合は遠位筋優位の筋力低下をきたし、ミオパチーの場合は近位筋優位の筋力低下をきたします。ただし糖尿病性神経障害では知覚神経障害や自律神経障害が主で、運動神経障害による筋力低下をきたす事はまれで特徴的ではありません。
糖尿病では筋力低下をきたす場合がありますが、それはニューロパチーやミオパチーによるものではなく、代謝性要因によるもので、近位筋にも遠位筋にも偏りなく起こります。
92.肝不全でみられるのはどれか。(58回午前92)
1.脳炎
2.裂肛
3.腹水貯留
4.血小板増加
5.高アルブミン血症
【答え】3
【解説】
58回の内部障害の消化器は肝不全でしたね。炎症性腸疾患を予想していたんですが、外れました。内部障害の消化器は、基本的には過去問とはかぶりませんので、過去問を勉強する意義はあまりありませんが、肝硬変・肝不全は複数回出題されているので、勉強しておく価値はありそうです。
肝臓の機能と肝硬変や肝不全についてまとめてみます。
肝臓は栄養にとってとても重要な臓器です。肝臓は3大栄養素の糖・蛋白・脂肪について以下のような働きがあります。
【肝臓の主な働き】
(1) 糖をグリコーゲンとして貯蔵します。
(2)脂肪を中性脂肪として貯蔵します。ただし肝細胞の30%以上に中性脂肪
がたまると脂肪肝と診断されます。
(3) タンパク質を合成します(タンパク質の合成工場)
蛋白質は貯蔵するのではなく(貯蔵庫はない)、必要に応じて合成します。肝臓で合成する蛋白質で代表的なものにはアルブミンと凝固因子があります。
(3)-(i) アルブミン
血液中の蛋白質の大部分はアルブミンとグロブリンです。グロブリンは免疫グロブリン(抗体の事)でB細胞から分化した形質細胞が産生します。
一方、アルブミンは肝臓で合成されます。血液検査で栄養の指標としても用いられます。アルブミンの主な働きは、血中でいろいろな物質を運搬する事ですが、血管内に血液を引きつける作用もあり(膠質浸透圧)、アルブミンが低下すると、血管内から組織へ水分がもれだして浮腫や胸水・腹水の原因となります。
(3)-(ii) 凝固因子
凝固因子はI〜XIII因子が発見されていますが、そのほとんどが肝臓で産生されます。このうちII・VII・IX・X因子は合成の際にビタミンKが必要です。
(4)ビリルビンの排泄
赤血球が寿命を終えて脾臓で破壊されると、ビリルビンというゴミがでてきます。脾臓で赤血球が壊されて生じるビリルビンを間接型ビリルビンといいます。それがアルブミンと結合して肝臓に運ばれて、グルクロン酸と結合(グルクロン酸抱合)したものを直接ビリルビンといい、それが胆汁として十二指腸に排泄されます。胆汁が何らかの障害で分泌できなくなると、血中のビリルビン値が上昇し、体が黄色くなる黄疸になります。
(5) 解毒作用
肝臓では常に新しいタンパク質合成され、古いタンパク質はアミノ酸に分解されます。その際に生じたアンモニアは肝臓で尿素に変換されて尿に排泄されます。アンモニアは体にとって毒で、血中のアンモニアが上昇すると肝性脳症といって意識障害をきたします。
(6)胆汁生成
肝臓では胆汁を生成して胆管から十二指腸に分泌し、脂肪の吸収を助けます。分泌された胆汁は回腸末端で吸収されて循環します(腸肝循環)
では選択肢をみていきます。
肝不全でみられるのはどれか。(58回午前92)
1.脳炎:×
肝不全では意識障害をきたしますが、脳に炎症をきたす脳炎が原因ではありません。肝不全で意識障害をきたすのもを肝性脳症(脳炎とはいわず脳症です)といい、アンモニアの蓄積が原因です。肝性脳症の場合、はばたき振戦という特徴的な振戦がみられます。はばたき振戦では、患者の両上肢をまっすぐと伸ばしてもらい、手関節を背屈させた状態で保持するように指示すると筋緊張の消失と手関節の緊張による背屈位が交互に繰り返され、両手をパタパタと羽ばたかせるようにみえる徴候です。固定姿勢を保持できないことから固定姿勢保持困難とも言われます(asterixis)。
2.裂肛:×
肝不全をきたしている患者の多くが肝硬変となっていると思われます。肝硬変では、門脈圧が高くなる結果、食道静脈瘤や腹壁静脈の拡張(メデューサの頭)、痔核などが生じます。痔核は肛門の静脈が拡張したものです。肛門粘膜が一部切れる裂肛は生じません。
3.腹水貯留:○
肝不全により、アルブミン産生が低下すると膠質浸透圧が低下し、血管内から組織へと水分が漏れ出し、四肢の浮腫や胸水・腹水をきたします。
4.血小板増加:×
肝不全になるような肝硬変では、門脈圧亢進から脾臓が腫脹する事によって、脾臓の機能が亢進します(脾機能亢進症)。血中の赤血球や血小板は寿命を迎えると、脾臓に取り込まれて分解されます。脾機能亢進症では、血小板が取り込まれて分解されることが増えるので、血小板は減少します。
肝不全では肝臓での凝固因子の産生が低下する他、脾機能亢進により血小板も減少するので、二重に出血しやすくなります。
5.高アルブミン血症:×
肝不全になると、肝臓でのアルブミン合成が低下するため、低アルブミン血症になります。
93.ビタミンと欠乏時の症候 との組み合わせで正しいのはどれか。(58回午前93)
1.ビタミンA ― 舌炎
2.ビタミンB1 ― 皮下出血
3.ビタミンC ― 末梢神経障害
4.ビタミンD ― 骨粗鬆症
5.ビタミンK ― 壊血病
【答え】4
【解説】
またまたビタミンですね。85回午前76でも詳しく解説しましたので、そちらも参照してください。
1.ビタミンA ― 舌炎:×
ビタミンAは視力の維持に必要な脂溶性ビタミンです、ビタミンAは欠乏すると夜盲症になります。覚え方は下のイラストのようにAを横にすると目のようなイメージになりますね。
なお国家試験的には類洞と肝細胞の間にディッセ腔という隙間があり、そこにある星細胞(伊東細胞)がビタミンAを貯蔵しているという点も押さえておく必要があります。
ちなみにビタミンB2やB6の欠乏では口内炎になります。
2.ビタミンB1 ― 皮下出血:×
ビタミンB1はチアミンとも呼ばれます。解糖系・クエン酸回路において、ピルビン酸がクエン酸に変換されるときに必要です。
そのため、体内の至るところでエネルギー不足になります。B1欠乏で
・エネルギー不足が脳にくるとウエルニッケ脳症になります
・エネルギー不足が脚にくると脚気になります
・エネルギー不足で乳酸が増えるので乳酸アシドーシスになります。
(覚え方)B1 ですから地下1階です。下図のように、なぜか地下1階にはチアリーダー(チアミン)がいて、チアダンスを踊って、ジャンプしてます。そのイメージから脚気を想像してください。脚気(○○け)からウエルニッケ(最後だけ)も連想できると良いでしょう。
選択肢の皮下出血はビタミンC欠乏の壊血症でみられる症状です。
3.ビタミンC ― 末梢神経障害:×
ビタミンCは水溶性ビタミンの1種で、コラーゲンの合成や抗酸化作用があります。ビタミンCのCをCollagen (コラーゲン)のCとして覚えるようにしていました。 コラーゲンが欠乏すると血管が壊れて出血しやすくなり壊血病という病気になります。壊血病は昔船乗りに多くみられた病気で、出血性の障害が体内の各器官で生じる病気でビタミンC欠乏状態が数週間から数カ月続くと皮下・粘膜下・骨膜下など全身に出血がおこりやすくなります。下のようにワンピースでも出てきています。
4.ビタミンD ― 骨粗鬆症:○ 次のイラストからビタミンD→骨をイメージしてください。
腎臓はビタミンDを活性化ビタミンDにする事で腸からのCa吸収を増やします。ただし、ビタミンDを活性化ビタミンDにするのは近位尿細管です。
ビタミンD欠乏ではカルシウムを十分に吸収できず、骨がもろくなります。小児でビタミンDが欠乏する病気をくる病(国試未出題)といい、成人でビタミンDが欠乏する病気を骨軟化症(今回初めて出題)といいます。
以下くる病(国試未出題)の症状です。
5.ビタミンK ― 壊血病:×
ビタミンKは肝臓で凝固因子のII・VII・IX・X因子の合成に必要です。ビタミンK欠乏では凝固因子欠乏になり出血傾向になります。
(覚え方)Kから血液(Ketsueki)が固まる(Katamaru)のに必要と覚えましょう。II(2)・VII(7)・IX(9)・X(10)は、副交感神経の「III(3)・VII(7)・IX(9)・X(10)の覚え方:港区(みなとく:3・7・10・9)にひっかけて、になとく(2・8・10・9)と溺おぼえればどうでしょうか?
選択肢の壊血病はビタミンC欠乏でみられる症状です。
94.肺塞栓症で誤っているのはどれか。(58回午前94)
1.脱水が誘因となる
2.I型呼吸不全を呈する
3.Dダイマーが上昇する
4.下肢よりも上肢の術後に多い
5.深部静脈血栓症との合併が多い
【答え】4
【解説】
以下のように55回午前91にも出ています(今回は類題です)
…………………………………………………………………………
肺塞栓症について誤っているのはどれか(55回午前91)
1. 肥満が誘因となる。
2. 長期臥床が誘因となる。
3. 心電図所見は非特異的である。
4.下肢よりも上肢の手術後に多い。
5. 深部静脈血栓症との合併が多い。
答え:4
…………………………………………………………………………
肺塞栓症は主に下肢の深部静脈に生じた血栓(深部静脈血栓症; deep vein thrombosis: DVT)が、運動などを誘因として、突然血栓がはずれ、右心系の血液の流れに乗って肺動脈に塞栓を起こすものです。
この病気は、長時間飛行機に乗った際に起きることもあり 「エコノミークラス症候群」と呼ばれることあります。また長期入院中や手術後にも発生します。
症状は突然の胸痛や呼吸困難です。重症だと血圧低下からショック状態になり、意識消失から心肺停止になる事もあります。塞栓源の約90%は下肢あるいは骨盤内の静脈で形成された血栓(DVT)といわれています。
心電図では右心房に負荷がかり、肺性P波とよばれるp波の増高 (0.25mV以上)がみられますが、肺血栓塞栓症に特異的な変化ではありません。
深部静脈血栓症(DVT)は肺塞栓症と切っても切れない関係です。
深部静脈血栓症のリスク因子は以下のようなものがあります。
・脱水、ホルモン剤、がんに対する化学療法(血液が固まりやすくなる)
・肥満や長期臥床
・飛行機の中でずっと同じ姿勢で座っている
深部静脈血栓症をきたすと、下肢がむくんだり、うっ血による色調変化をきたします。
また、深部静脈血栓症の徴候としてはHomans徴候とLowenberg徴候があります。Homasn徴候は57回で問題文中に出題されました。
血栓ができているかどうかわかりやすいには超音波検査です。下の写真では血管の中がモヤモヤしています。
血液検査で重要なのはDダイマーです【重要】。
Dダイマーがなぜ深部静脈血栓症の診断について重要なのか、すこし掘り下げてみます。
下の図のように、凝固系が活性化されると、プロトロンビンからトロンビンが生成され、トロンビンはフィブリノーゲンを重合させ、フィブリンを作ります。フィブリンはプラスミンによって分解されますが、プラスミンはフィブリンになっていないフィブリノーゲンも分解する性質を持っています。ちなみに、プラスミンがフィブリノーゲンを分解することを一次線溶、プラスミンがフィブリンを分解する事を二次線溶といいます。
イラストのようにフィブリノーゲンはE分画にD分画が左右に結合した形になっています。ここでフィブリノーゲンがプラスミンによって分解されるとE分画かD・E分画・E-D分画しかできません。
これに対して、フィブリノーゲンが重合したフィブリンがプラスミンにより分解されると、D分画とD分画が架橋したD-D分画が生成されます。このD-D分画はフィブリン(すなわち血栓)ができた場合にしか生成されません。したがってD-D分画は血栓が生体内で実際に生じている事を示しています。D-D分画の事をD・E)が二つあるという事でDダイマーと言います。
なお、フィブリノーゲンやフィブリンが分解されてできるいろいろな分画を併せてフィブリノーゲン/フィブリン分解産物(Firinogen/Fibrin degradation products: FDP)といいます。
これらの事から、臨床的に採血でDダイマーが高値であった場合、体の中で血栓がどんどんできている(フィブリンがどんどんできている)、ひょっとしたら深部静脈血栓ができているのではないかと疑うのです。
Dダイマーについては57回午前1に出題されていましたね。
……………………………………………………………………………………
7歳の女性。抗リン脂質抗体症候群の既往がある。右変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を3日前に受けた。右大腿部から足部まで発赤を伴う腫脹を認め、Homans徴候陽性である。術後に実施した主な血液検査の結果を表に示す。術後の合併症として考えられるのはどれか。(57回午前1)
1,蜂窩織炎 2.リンパ浮腫 3.化膿性関節炎
4.うっ血性心不全 5.深部静脈血栓症
答え:5
……………………………………………………………………………………
この症例では、抗リン脂質抗体症候群という先天的に血栓ができやすい病気(初めて出題)で、Homans徴候(これも初めて出題)がみられる患者で、採血ではDダイマーが異常高値です。したがって、まず疑わなければならないのは5の深部静脈血栓症なのです。これは臨床の場にでても注意しておかなければならない点なのでよく覚えておいてください。
さて深部静脈血栓症の患者のリハビリのポイントを以下に示しました。
抗凝固薬は凝固因子を抑制するワーファリンでした。薬の効果が出て、血栓が溶けるまでは、基本的に血栓ができた下肢が動かしません。もし、動かして、血栓が飛んで、肺につまると最悪、患者が死んでしまう恐れもありますので、リハビリの進め方は主治医と慎重に協議して進める必要があります。
万が一、事故がおきれば訴えられる恐れもありますので十分注意してください。
前置きが長くなりましたが、選択肢を解説します。
肺塞栓症で誤っているのはどれか。(58回午前94)
1.脱水が誘因となる:○
血管内の水分が多いと、血液が希釈されますね。逆に、脱水だと、血液が濃縮されてドロドロになり、血液が凝固しやすくなるので肺塞栓症の誘因になります。
2.I型呼吸不全を呈する:○
I型呼吸不全とはPaO2だけ低下している(PaO2が低下し、PaCO2は正常)もので、II型呼吸不全はPaO2が低下しPaCO2が上昇しているものです。
これについては、少し説明を追加する必要があります。そもそも呼吸不全の型としては、なぜI型とII型だけなのでしょうか?(教科書ではただ上記の分類だけ書かれているだけです)。では、PaO2が正常で、PaCO2が上昇しているIII型呼吸不全はなぜないのでしょうか? 実はIII型呼吸不全は起こりえないのです。なぜでしょう?実は、肺胞でガス交換が行われる際には、肺毛細血管と肺胞の間でO2 やCO2が拡散によって移動します。この拡散のスピードはO2とCO2で異なります。ポイントはCO2はO2より約20倍拡散しやすいという点です。
したがって、軽度の呼吸不全(この場合、肺胞の毛細血管が詰まりかかっている状態)では、O2は拡散できなくてもCO2が拡散できるので、PaO2が低下して、PaCO2が正常のI型呼吸不全の状態になります。それがさらに重症になった場合は、O2もCO2も拡散できなくなり、PaO2が低下し、PaCO2が上昇するII型呼吸不全になるのです。CO2の方が拡散能が高いので、O2が拡散できて、CO2が拡散できないようなIII型呼吸不全といえるような状況がありえません。
こういった事で、心肺停止をきたすような大量の血栓が肺につまらない限り、肺血栓症でみられる呼吸不全はI型呼吸不全が多いです。
3.Dダイマーが上昇する:○
肺塞栓症の塞栓源の90%を占める深部静脈血栓症では、Dダイマーが上昇しています。
4.下肢よりも上肢の術後に多い:×
肺塞栓症の塞栓源の90%を占める深部静脈血栓症は、下肢の手術後が多いです。術前からの長期臥床により、下肢に血栓を生じている事が多いです。
5.深部静脈血栓症との合併が多い:○
肺塞栓症は深部静脈血栓症との合併が多いです。
95.介護保険制度で正しいのはどれか。(58回午前95)
1.都道府県の窓口で申請する
2.特定疾病に慢性腎不全がある
3.第1号被保険者は75歳以上である
4.介護認定審査会で要介護度を判定する
5.診査結果に対する再審査請求はできない
【答え】4
【解説】
介護保険制度についての問題ですね。介護保険については頻出領域ですのでしっかり勉強しておきたいところです。
1.都道府県の窓口で申請する:×
介護保険についての申請は都道府県ではなく、市町村です。そうでないと、都道府県の業務が膨大になってしまいます。
2.特定疾病に慢性腎不全がある:×
特定疾病についてはできればすべて覚えたいところです。
40歳以上65歳未満の第2号被保険者でも、以下に示す16の特定疾病に罹患すれば介護認定を受ける事ができます。若くても、こんな病気にかかれば介護認定受けられるんですよね。
特徴的な事は、心臓や肝臓・腎臓の内臓疾患は含まれていません。透析患者が含まれないのは、身体障害者になるからだと思います。ランダムに力ずくで覚えるのは大変でしょうから、【脳】・【小脳】・・・などと分類して覚えるようにしました。国試までには、覚えておきたいところです(直前詰め込みでOK)。16疾患もあるので語呂合わせはむずかしいと思います。
内臓疾患ではCOPDや合併症をきたした糖尿病があります。
あと、認知症や脳血管疾患、パーキンソン、がんの末期が介護認定してもらえるってありがたいですね。若くてこれらの病気になれば大変ですもの。がんの末期はさすがに身体障害者になりませんしね。
3.第1号被保険者は75歳以上である
第1号被保険者は65歳以上です。
4.介護認定審査会で要介護度を判定する:○
要介護認定では以下のような流れで認定が行われます。
大きく、主治医意見書と認定調査があり、それらを併せて、市町村の介護認定審査会で要介護度を決めます。認定審査会は市町村の開業医の先生が委員になっていることが多いです。
認定調査は役場の職員が病院や自宅に訪問してきて、患者と面談調査を行います。役場の職員は医療従事者ではないので、機械的に調査が行われ、調査結果はコンピュータで判定が出る仕組みになっています。
主治医意見書は、患者のかかりつけ医が作製します。主治医といっても人間が書く意見書です。患者の希望に応じて手心を加える場合もゼロとはいえません。そのため、主治医意見書と役場の認定調査の結果を併せて、介護認定審査会で総合判定するといった仕組みが取られています。
要介護認定で得られた要介護度は原則1年に1回見直して更新する事になっています。なので、主治医は1年ごとに意見書を書かなければならず、作業が結構大変なんです。
介護保険を用いてサービスを受ける場合は原則費用の1割負担です。要介護認定では要支援1・2、要介護1〜5の7段階で判定されますが、介護度によって、1ヶ月あたりの支給限度額が異なってきますので介護度が1段階ちがっても大きな違いになってくるんですよね。なので、要介護度についてはきっちりしなければならないのです。
5.診査結果に対する再審査請求はできない:×
介護認定審査会で出された要介護度について、利用者が不服があれば、再審査請求を行う事ができます。介護認定審査会に再審査請求を出しても同じ結果になるでしょうから、別の審査会(介護保険審査会)で改めて審査されます。
Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
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