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第59回理学療法士国家試験 午後81−85の解説

 息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
 第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
 昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
 理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。


(81) 日常生活場面で必要とされる記憶障害を検出するのに最も適切な検査はどれか。(59回午後81)
1.HDS-R
2.MMSE
3.RAVLT
4.RBMT
5.WMS-R
 
                    【答え】4

【解説】
1.HDS-R:×
 →HDS-R (Hasegawa Dementia Scale - revised:改訂長谷川知能評価スケール)は以下のように簡易的に認知症を評価するテストです。日常生活場面で必要とされる記憶障害についてのテストはありません。

クエスチョンバンクより引用

2.MMSE:×
 →MMSE: mini mental scale evaluationはHDS-Rと並んで臨床の現場で良く使用される認知症の評価法です。構成課題を含む事がHDS-Rと違って特徴的な点です。MMSEも日常生活場面で必要とされる記憶障害についてのテストはありません。

クエスチョンバンクより引用

3.RAVLT:×
 →RAVLT (Rey Auditory Verbal Learning Test:レイ聴覚性言語学習検査)とは15語よりなる文章を読み上げて、その直後にその文章を再生させる音声による記銘力検査です。AVからオーディオビジュアルを連想してオーディオ=聴覚や音声の記憶検査と覚えましょう。

クエスチョンバンクより引用

4.RBMT:○
 →RBMT (Rivermead Behavioral Memory Test: リバーミード行動記憶検査)
はイギリス・オックスフォード大学のリバーミードリハビリテーションセンターで開発された記銘力検査です。RBMTは単に単語を覚えるのではなく、日常の生活に必要な事がら (behavier:習慣)について記憶できるか(記銘)を検査する方法です。RAVLTとRBMT、2つのRのつく検査は合わせて覚えましょう。

クエスチョンバンクより引用

あと、Rのつく検査はもう一つ、があります。Rey-Osterrieth complex figure test(レイオステオリートの複雑図形課題)。これは下図のような複雑な図形を(見ながら)模写させた後、図を取り去った直後、20分後に模写させる検査法です。図形の外枠をR 、中にある円形をOと覚えましょう。

5.WMS-R:×
 →WMS-R (Wecheler Memory Scale-Reviced:改訂版ウエクスラー記憶検査法)は国際的に最もよく使用されている総合的な記憶検査らしいです。13の下位検査から5つの指標について評価する事ができます。


 
(82) フレイルの高齢者の特徴で正しいのはどれか。(59回午後82)
1.筋量が増加する
2.TUG時間が短くなる
3.長座位前屈距離が短くなる
4.運動負荷時のBorg指数が低値になる
5.FBS (Functional balance scale)が低値になる

                    【答え】5

【解説】
 最近フレイル・サルコペニアは国家試験で頻出問題となっています。
 フレイルとは frailty(フレイルティー)の日本語訳で、病気ではない けれど、年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になり やすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のことです。

 以下のFriedの診断基準で5項目中3項目該当でフレイルと診断されます。

 1.体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
 2.主観的な活力低下:何をするのも面倒、何かを始める事ができない、と週3〜4日以上感じる
 3.握力低下:標準より20%以上の低下
 4.歩行速度低下:標準より20%以上の低下
 5.活動度低下:1週間の活動量が男性353kcal未満、女性270kcal未満

選択肢を見て行きます。

1.筋量が増加する:×
 →フレイルでは筋力の低下がみられます。その結果、上肢では握力の低下、下肢では歩行速度の低下が見られます。

2.TUG時間が短くなる:×
 →フレイル患者では筋力の低下によってバランス機能が低下するため、TUGが長くなります。

3.長座位前屈距離が短くなる:×
 →体の柔軟性が低下すると長座位前屈距離は短くなりますが、フレイルでは筋力の低下はあるものの、体の柔軟性は低下していません(この選択肢は過去にも出題されているひっかけ選択肢です)。

4.運動負荷時のBorg指数が低値になる:×
 →フレイルでは主観的な活動低下がみられるため、運動負荷時には低負荷でもつかれを感じるため、Borg指数が高くなります。

5.FBS (Functional balance scale)が低値になる:○
 →フレイルでは筋力の低下によってバランス機能が低下するため、FBSが低値になります。


(83) 不動による廃用症候群で生じやすい病態はどれか。(59回午後83)
1.安静時心拍数の低下
2.間質性肺疾患
3.自律神経過反射
4.深部静脈血栓
5.低カルシウム血症
 
                    【答え】4

【解説】
1.安静時心拍数の低下:×
 →廃用症候群では循環血液量の低下から心拍出量が低下しやすく、代償的に心拍数は増加します。

2.間質性肺疾患:×
 →廃用症候群では誤嚥による細菌性肺炎を起こしやすいですが、間質性肺炎とは関連ありません。

3.自律神経過反射:×
 →自律神経過反射は脊髄損傷患者に見られる反応です。

4.深部静脈血栓:○
 →廃用症候群では下肢の不動により下肢の深部静脈血栓症を生じやすいです。

5.低カルシウム血症:×
 →廃用症候群では活動量が低下する事によって骨量が低下し、骨に負荷がかからない状況が続く事で骨吸収が亢進します。その結果、血中にカルシウムが溶け出し高カルシウム血症となります。また尿中へのカルシウム排泄が増加し、尿管結石にもなりやすくなります。



(84) 抗てんかん薬の副作用で最も頻度の低いのはどれか。(59回午後84)
1.傾眠
2.複視
3.めまい
4.肝機能障害
5.末梢神経障害

             【答え】5

【解説】
1.傾眠:○
 →抗てんかん薬は中枢神経を抑制するため、眠気・めまい。ふらつきの副作用が飲み始めによく見られます。

2.複視:○
 →抗てんかん薬の服用量が多いときには視界がぼやける・複視などの副作用が見られる事があります。

3.めまい:○
 →抗てんかん薬は中枢神経を抑制するため、眠気・めまい。ふらつきの副作用が飲み始めによく見られます。

4.肝機能障害:○
 →肝機能障害はすべての薬剤で副作用としてみられる場合があります。

5.末梢神経障害:×
 →抗てんかん薬は中枢神経に作用する薬剤で、末梢神経障害が出現する頻度は少ないです。
 
  
(85) Guillain-Barre症候群の診断で有用なのはどれか。(59回午後85)
1.CT
2.MRI
3.髄液検査
4.脳波検査
5.血液培養検査
 
                    【答え】3

【解説】
 Guillain-Barre症候群はウイルス感染(?)によりできたウイルスに対する抗体が、神経線維の髄鞘に対する抗体として作用してしまい、髄鞘に障害をもたらす(末梢神経障害;ニューロパチー)疾患です。
 先行感染の後、手足の筋力低下(下肢→上肢、遠位→近位)をきたします。
 診断は比較的難しいです。
(1) 髄液検査を行うと、タンパク細胞解離があります。蛋白細胞解離というのは、蛋白(抗体)が髄液内に増えていますが、白血球などの炎症細胞は少ない事を意味します。


(2) 神経伝導検査でM波の振幅が減少したり、潜時が延長したりします。

1.CT:×
2.MRI:×
3.髄液検査:○
4.脳波検査:×
5.血液培養検査:×



Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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