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第59回理学療法士国家試験 午後21−25の解説
息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。
(21) 生活習慣病の発症・重症化予防の推進が規定された法律はどれか。(59回午後21)
1.医療法
2.介護保険法
3.健康増進法
4.社会福祉法
5.地域保健法
【答え】3
【解説】
ぱっと見て、医療や介護・地域の話ではないですね。3か4で迷ったかもしれませんが、社会福祉というよりも個人の健康の話ですね
1.医療法:×
→医療法は、病院、診療所、助産所の開設、管理、整備の方法など医療に関する事を定める法律です。
2.介護保険法:×
→介護保険法は要介護者等について、介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定めることを目的とする法律です。
3.健康増進法:○
→健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律です。
4.社会福祉法:×
→社会福祉法は社会福祉について規定している日本の法律です。生活保護法・児童福祉法・身体障害者福祉法・老人福祉法・知的障害者福祉法・母子および父子並びに寡婦福祉法などからなります。
5.地域保健法:×
→地域保健法は地域住民の健康の保持および増進に寄与することを目的として制定された法律です。
(22) 予防医学に関する組合せで正しいのはどれか。(59回午後22)
1.一次予防――――褥瘡対策
2.二次予防――――人間ドック
3.二次予防――――ワクチン接種
4.三次予防――――肺がん検診
5.三次予防――――透析患者の運動療法
【答え】2
【解説】
59回午前22でも二次予防について出題されています。
・一次予防とは生活習慣の改善、健康教育、予防接種などの病気にかからないように事前に施す処置や指導のこと
・二次予防は病気の早期発見・早期治療
・三次予防は再発予防やリハビリテーション
二次予防を早期発見・早期治療とだけ覚えれば、一次予防・三次予防もわかると思います。
1.一次予防―褥瘡対策:×
→褥瘡対策は早期発見・早期治療なので二次予防です。
2.二次予防―人間ドック:○
→人間ドックは早期発見・早期治療なので二次予防です。
3.二次予防―ワクチン接種:×
→予防接種は一次予防です。
4.三次予防―肺がん検診:×
→検診は早期発見・早期治療なので二次予防です。
5.三次予防―透析患者の運動療法:×
→5は迷うかもしれません(ひっかけポイントです)。58回午後25では糖
尿病の場合は運動療法が二次予防(早期発見・早期治療)となっていま
す。糖尿病の場合、運動療法を行う事によって、インスリン抵抗性が改 善するので早期治療になります。
一方、腎不全では運動療法を行う事によって腎不全がよくなる事はない
ので早期治療になりません。あくまで、リハビリテーションになるので
しょう(再発予防にはなりません)。したがって、腎不全では三次予防に
なるのですね。
糖尿病に対する運動療法=二次予防
腎不全に対する運動療法=三次予防
として要暗記です。
(23) 運動制御における内部モデル形成で重要な役割をもつ中枢神経系はどれか。(59回午後23)
1.小脳
2.中脳
3.視床下部
4.大脳皮質
5.大脳辺縁系
【答え】1
【解説】
内部モデル形成….。勉強不足で初めてその言葉を知りました。ただ運動を記憶するのは小脳なので、内部モデル形成を知らなくても小脳を選ぶ事は可能だったかもしれません。
一般的に、運動に関する手続き記憶は大脳基底核と小脳に記憶されると言われています。またエピソード記憶や意味記憶といった陳述記憶は大脳皮質と海馬に、ワーキングメモリーは前頭連合野に記憶されます。
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https://www.scj.go.jp/omoshiro/kioku3/kioku3_2.html
勉強のために内部形成モデルについて調べてみました。
内部モデルとは運動の雛形のようなもので、実際に運動しなくてもこうすればこうなるだろうなとわかっているような、そんな情報のことのようです。例えばこのテニスラケットを振ればこういうふうに感じるだろうなだとか、あるいはこれくらいの重さの患者さんを車いすに移すにはこれくらいの力がかかりそうだなとか、実際に運動する前からなんとなくわかっているような、そんな感じ、そんな運動感覚を内部モデルと言うそうです。
とはいえこの内部モデルというのはどうやって作られるのでしょうか。
これは運動の当たり外れで作られるそうです。まず何か運動するにあたって、こんなふうに感じるだろうなという内部モデルが小脳から頭頂葉に送られるようです。さらに頭頂葉には別ルートで実際の運動感覚が送られてくるのですが、これと予想的感覚が比較照合され、どれだけ予想と違っていたかが比べられる。こうやって運動が制御されているという事のようです。
詳しくは以下を参照ください。
1.小脳:○
2.中脳:×
3.視床下部:×
4.大脳皮質:×
5.大脳辺縁系:×
(24) 軽度の片麻痺患者が車椅子から床へ移乗する手順で誤っているのはどれか。(59回午後24)
1.車椅子のブレーキを確認する
2.殿部を座面の前方に移動する
3.非麻痺側の足部を十分後方に引く
4.上体を前傾させて麻痺側の膝を床につく
5.床に膝をついた側の殿部を接地ささえて回転するように着座する
【答え】4
【解説】
脳卒中片麻痺患者での車椅子から床への移乗動作についての問題です。基本的に脳卒中片麻痺患者の立位から床への移乗動作を考えれば良いです。
以下の動画がわかりやすいです。車椅子からの移乗の動画がみつかりませんでしたので以下の動画で代用します。
この中でポイントは、床に座り込む場合は、非麻痺側の手と膝をついて、麻痺側の足とで3角形をつくり、非麻痺側の膝を曲げて膝立ち位を作るという点です。
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1.車椅子のブレーキを確認する:○
2.殿部を座面の前方に移動する:○
3.非麻痺側の足部を十分後方に引く:○
4.上体を前傾させて麻痺側の膝を床につく:×
→非麻痺側の手を先につき、非麻痺側の膝を曲げて床につき、膝立ち位になります。
5.床に膝をついた側の殿部を接地ささえて回転するように着座する:○
(25) LawsonのIADLスケールに含まれるのはどれか。2つ選べ。(59回午後25)
1.意志疎通
2.階段昇降
3.家屋維持
4.家計管理
5.排便コントロール
【答え】3・4
【解説】
IADLとはinstrumental Activities of Daily Livingの略で、手段的日常生活動作(手段的ADL)といわれます。 ADLよりも複雑な日常生活動作のことを指します。
IADLは道具を使ったものと捉えると簡単ですが、道具を使わなくても電話応対や買い物などの判断力が求められる動作まで包括している事に注意しなければなりません【道具だと簡単なので、そのあたりが国試で問われます】。
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https://www.cocofump.co.jp/articles/kaigo/109/
1.意志疎通:×
2.階段昇降:×
3.家屋維持:○
4.家計管理:○
5.排便コントロール:×
Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。