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第59回理学療法士国家試験 午後86−90の解説

 息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
 第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
 昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
 理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。


(86) 便秘を最も生じやすい薬剤はどれか。(59回午後86)
1.モルヒネ
2.グリセリン
3.センノシド
4.ラクツロース
5.酸化マグネシウム
 
                【答え】1

【解説】
病院で働いている医師や看護師なら常識なんですがね…。理学療法士の方は薬を色々チェックするのは難しいですしね…(^0^;)。正解以外は下剤なんです、ははは。

1.モルヒネ:○
 →モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛薬は、がん痛や慢性疼痛に対し、一般的な鎮痛薬が効かないときに用いられます。強力な鎮痛作用をもつ半面、副作用として頑固な便秘を起こしやすいのが難点です。

2.グリセリン:×
 →グリセリンは浣腸液として用いられます。グリセリンは吸水性が強いため、直腸に入ると、便を柔らかくします。 同時に腸壁に刺激が与えられることで、腸の蠕動運動が促され、便意を催します。グリセリン浣腸の事を略してグ浣と呼んだりします。

 3.センノシド:×
 →代表的な大腸刺激性下剤です。アントラキノン系誘導体で、センナという薬用植物に由来します。寝る前に2錠服用します。


4.ラクツロース:×
 →消化吸収されることなく大腸に到達し、アンモニアの産生と吸収抑制、さらには排泄促進作用を発揮します。主に肝性脳症患者のアンモニアを下げる目的として用いられ、下剤としての作用もあるという感じです。


5.酸化マグネシウム:×
 →酸化マグネシウムは、昔からある古典的な薬ですが、非刺激性の塩類下剤になります。通常、1日3回毎食後に1錠ずつ服用します。便が硬い人は便が軟らかくなります。


 
(87) 装具療法の主たる目的でないのはどれか。(59回午後87)
1.機能の補助
2.局所の免荷
3.筋力の強化
4.疼痛の軽減
5.変形の矯正
 
                【答え】3

【解説】
1.機能の補助:○
2.局所の免荷:○
3.筋力の強化:× 
 →装具を装着すると、筋肉の運動を制限する事になるので、筋力の強化というより、むしろ筋力低下をきたします。
4.疼痛の軽減:○
5.変形の矯正:○


(88) 変形性股関節症で正しいのはどれか。(59回午後88)
1.発症は遺伝の影響を受けない
2.有病率は女性より男性が高い
3.一次性の頻度は二次性より高い
4.変形性膝関節症の合併リスクは低い
5.重量物作業を伴う職業は発症のリスク要因である
 
                【答え】5

【解説】
1.発症は遺伝の影響を受けない:×
 →変形性股関節症は、日本の場合、発育性股関節形成不全が原因で長い年月のうちに変形性股関節症となるケースが90%を占めています。
 理化学研究所のチームは 4 世代にわたって発症している変形性股関節症の日本人大家系を見出し、家族性変形性股関節症の原因遺伝子がが第13番染色体の長腕に存在することを発見しています。

https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/press/2006/20060515_2/20060515_2.pdf


2.有病率は女性より男性が高い:×
 →男性は0~2.0%、女性は2.0~7.5%で、女性の方がかかりやすい傾向にあります。

3.一次性の頻度は二次性より高い:×
 →変形性股関節症は二次性が多いです。一方、変形性膝関節症は一次性が多いです。

4.変形性膝関節症の合併リスクは低い:×
 →変形性股関節症があると、膝にも負担がかかりやすいので、変形性膝関節症を合併するリスクは高くなります。

5.重量物作業を伴う職業は発症のリスク要因である:○
 →当然ですよね。

(89) 後縦靱帯骨化症で正しいのはどれか。(59回午後89)
1.日本人より欧米人に多い
2.腰椎部に最も多く発生する
3.進行すれば痙性麻痺を生じる
4.発症は遺伝の影響を受けない。
5.有病率は男性より女性が高い
 
                【答え】3

【解説】
OPLLについて詳しく出題されたのは初めてだと思います。後縦靭帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament : OPLL)は脊柱管内の後縦靭帯に骨化を生じる疾患です。

1.日本人より欧米人に多い:×
 →頸椎後縦靭帯骨化症は日本人に頻度が高い(約3%)といわれてい
ますが、アメリカ人 0.12%、ドイツ人 0.1%、イタリア人 1.8%、との報告があり、欧米よりも明らかに日本人が多い傾向にあります。

2.腰椎部に最も多く発生する;×
 →OPLLは頸椎に多く発生します。一方、黄色靱帯骨化症の好発部位は胸髄です(46回午前12で出題)。

3.進行すれば痙性麻痺を生じる:○
 →上位運動ニューロン障害となります。

4.発症は遺伝の影響を受けない。:×
 →原因は現在のところ不明ですが、家族内発症が多いことから遺伝子の関連が有力視されています。

5.有病率は男性より女性が高い:×
 →病気が発症するのは中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1と男性に多いことが知られています。

(90) 骨粗鬆症の危険因子で誤っているのはどれか。(59回午後90)
1.長期の臥床
2.ビタミンAの不足
3.エストロゲンの減少
4.原発性副甲状腺機能亢進症
5.副腎ステロイドの長期投与
 
                【答え】2

【解説】
骨粗鬆症の原因は色々なものがありますね。以下にまとめました。


1.長期の臥床:○
 →長期の臥床は廃用性に骨粗鬆症になります。

2.ビタミンAの不足:×
 →ビタミンAの過剰は骨粗鬆症の原因になる事が最近わかってきました。

3.エストロゲンの減少:○
 →女性ホルモンの減少が骨粗鬆症の原因となるため、閉経後の高齢女性が骨粗鬆症になっていきます。

4.原発性副甲状腺機能亢進症:○
 →副甲状腺ホルモン(パラソルモン)

5.副腎ステロイドの長期投与:○
 →副腎ステロイドは骨融解を来たし、骨粗鬆症の原因になります。



Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。

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