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第4章:女帝の庭園

愚者が次にたどり着いたのは、花々が咲き乱れる美しい庭園でした。木々は鮮やかに茂り、小川がキラキラと光を反射しながら流れています。その中心には、王座に腰掛ける女性の姿がありました。彼女は豪華な衣装に身を包み、穏やかな微笑みを浮かべています。周りには小鳥や動物たちが集まり、彼女を囲んでいます。

               「いらっしゃい、旅人さん。」

女帝は、優しい声で愚者を迎えました。「ここは私が育てた庭園。この場所は、私の創造の力で満たされているの。」

愚者は辺りを見回し、その美しさに圧倒されます。

                 「これを一人で作ったの?」

「そうよ。だけど、ただ私一人の力だけじゃないわ。自然、愛情、時間――全てがこの庭を育てるための力なの。」

愚者は庭園を歩きながら、女帝の言葉に耳を傾けました。

「創造というのは、ただ何かを作ることではないの。そこに愛情を注ぎ、育むことが必要なのよ。」

愚者はふと思い出します。旅を始めてから、ただ目の前の道を進むことばかり考え、自分が何を育てたいのか考えていなかったことに気付きます。
「でも、どうすれば何かを育てることができるの?」

女帝は一輪の花を摘み、愚者に手渡します。
「まずは、この花を大切にするところから始めてみて。」

愚者は花をじっと見つめます。それは小さく、繊細で、手のひらの中に収まるものでした。

「ただ持っているだけじゃダメよ。水をあげ、日差しに当て、そして話しかけてあげて。愛情を注ぐことで、この花は美しく咲き続けるの。」

愚者は庭園の中で、女帝に教えられた通り花を育て始めます。しかし、最初はうまくいきません。花に水を与えすぎてしまったり、日陰に置きすぎてしまったり何度も失敗を繰り返しました。

そのたびに女帝は優しく微笑みます。「失敗してもいいの。大切なのは、諦めずに続けること。愛情を注ぎ続ければ、必ず結果がついてくるわ。」

数日が経ち、愚者が育てた花がようやく美しく咲き始めます。愚者はその姿に感動し、自分が与えた愛情が形になったことを実感します。
       
         「これが創造するってことなんだね。」

女帝は頷きます。「そう。そして、この庭園のすべてがそれを表しているわ。愛情、時間、努力  それらが合わさって、この豊かさを作り出しているの。」

愚者はふと考えます。この旅もまた、自分の未来を育てるためのものなのだと。花を育てるように、自分の可能性や夢を大切にしなければならないと気付きます。

愚者は花を手に取り、再び旅に出る準備を整えました。女帝は彼を見送る際、こう言いました。

「豊かさは外にあるものではなく、あなたの心の中にあるわ。愛情を注げば、それは必ず実を結ぶ。忘れないでね。」

愚者は深く頷き、庭園を後にしました。その目の先には、高い城壁に囲まれた場所が見えます。そこには、力強い存在感を持つ「皇帝」が待っていました。

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