映画「レインマン」を観て

『レインマン』

監督:Barry Levinson( バリー・レヴィンソン)
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ダスティン・ホフマンとトム・クルーズのW主演
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ダスティン・ホフマン演じるレイモンド・バビットのモデルとなった、キム・ピーク。
彼は先天性脳障害による発育障害と言われており、父親による介護を必要としていた。

しかし、驚異的な記憶力を持っており9,000冊以上の本を丸暗記していたり、生年月日を言われればその日が何曜日だったのかを即答できた。

彼と面会した作家のバリー・モローは彼の能力に驚愕し小説を書きあげ、この映画の原作となっている。

作中に出てくる、落ちた爪楊枝の数を瞬時に数えるシーンは、キムの実体験をもとにしている。

映画公開後、一躍有名になったキムだが、それまでの生活を変えることもなく、毎日図書館へ行きさまざまな書籍を読破し、すべての内容を記憶するという変わらない日課を亡くなるまで続けたという。
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今作によってアメリカ国内の自閉症に対する理解が10年は進んだとも言われているほど、症状を忠実に再現している。

この再現を可能にしたのは、まさにダスティン・ホフマンの名演技によるものだろう。

彼は元々、トム・クルーズ演じる弟チャーリーの役だったのだが、兄レイモンドの役柄を熱望した。
何度も、キムと会い彼の仕草などを研究し役作りに徹した。
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最初観客の目は、障害を持つ人々(レイモンドを含め)に集中する。
しかし、時間がたつごとに兄弟の間に少しずつ絆が生まれ、愛が生まれていく。
最後、観客が目にして感動するのは、この兄弟愛という見えないもの。
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ラストシーンは、ハグをするわけでもなく、泣き崩れるわけでもない。
レイモンドは最初から最後まである意味で"そっけない”

しかし、最初と最後のそっけなさは微妙に異なっている。
実際にはたから見たら認識できないかもしれない。

その小さな違いを作りだせた2人の関係、そしてそれを見続けた観客だけが分かる「見えない絆」

ダスティン・ホフマンの演技力もさることながら、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズの信頼しあった2人の掛け合いも素晴らしい。
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所々、コメディ要素もあり面白い。

終盤で初めてレイモンドが笑うが、そんな重要なシーンを監督はクローズアップしない。
まさに圧巻。クローズアップすれば簡単に観客の心を動かせるのに、それをしない。ゆっくりと動かしていく。

2人の関係性の構築スピードと合わせているかのように、ゆっくりと動かしていく。

優しく温かい心を持つレイモンドと、強がりで寂しがりやなチャーリーの素敵な兄弟物語

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