モリモリメガ盛り

 B-29。ミリタリ分野にまったく興味がない人でも日本人なら誰しもが耳にしたことがあると思う。たぶん日本人の中で軍用機の中で一番知名度が高いのだろう(実際に画像が脳内に思い浮かぶかまた別として)
 銀色に輝くボディは鏡のようにきらきらしていて、問題点はいくつかあるけれど高高度での飛行を可能にする四発の力強いエンジンと、開放的なコックピットと、悠々と飛行する大きな機体は見る者を魅了する機能美があるように感じる。
 実際に空襲に遭った僕の祖母たちもB-29に対して複雑な感情はあるものの「キレイな飛行機だった」と共通する証言を残しているので、洗練されたプロダクトデザインは人を惹き付ける実用的な美があるのかもしれない。
 ただし、同じ銀色でスマートできらきらしているプロダクトデザインのP-51に対しては「いますぐ死んでほしい」的な共通証言になっているのはなかなか興味深い(たぶん機銃掃射してきて、死にものぐるいで田畑を逃げ回って、友人が死んだのが関係しているんだと思う)
 僕の地元は東京に投下しきれなかった焼夷弾を捨てていく、いわば処理場的な役割があったので、焼夷弾を残したB-29がサイパン島に帰還する前にちょっと立ち寄って、街をパチパチ燃やしていくのが日常だった。
 スナック感覚に街を焼かれたらたまったもんじゃないとは思うけれど、B-29に乗っている人たちも安全に着陸するためには、焼夷弾を投棄する必要があるわけで、無駄に海に捨てるよりも、そこそこの規模感の工業地帯がある街を焼く方が適していたのだろう。神社とかお寺があるよくわからない古都(ルメイ発言)を焼くよりもずっと戦略的に価値がある行為だし、アメリカはたくさん焼夷弾を投下してモリモリ街を焼いて、民間人が大勢亡くなった。悲しい。戦争は人が死ぬ。僕も死にそう。主に心が。
 ただ戦果とは裏腹にちょっと立ち寄る街的な意味合いが強かったからなのか、戦域管制はかなり雑だったようで、無秩序に別方向から侵入したB-29が衝突して乗組員が全員死亡したり、焼きすぎて発生した上昇気流に飲まれ別高度を飛行しているB-29にぶつかったり、操縦をミスって港町へと墜落したりして、単純なミスでB-29が何機か失われている(比較的、きちんと戦域管制して作戦実施をした東京大空襲でもミスって何機がB-29が消えているんだけど)
 一応、僕の地元にはそこそこしっかりした高射砲を装備した部隊がいて、B-29を落とそうと頑張ったみたいだけど、目に見える成果は出なかったらしい(学校の平和教育でそんな授業をやった)
 街がB-29に燃やされて、人が消し炭になって、川に飛び込んだ人間が溺死している中、軍人さんたちも「何の成果も得られませんでした」とは言いにくい空気感だったらしく、B-29が衝突して損失したときに「これ俺たちの成果。すごいでしょ」的に話を盛って残骸を公園に展示してしまったら、ご存知の通り日本は太平洋戦争に負けてしまった。
 まったく関与すらできていないクソ案件で裁判にかけられるのも、やっぱり軍人さんも民間人も嫌だったらしく、それっぽい慰霊碑を作って「本当は高射砲を直撃なんてさせられなかったんです。戦果盛りすぎました。落下した時に乗員の人たち死んでたんです」みたいなコメントを残している。現実に生きている人間は本当に味わい深いし、針を棒にしてしまう部分がある。なんかわかるなあという気持ちになったし現実の人間は面白い。
 結構、戦犯を処刑した連合国だけど、僕の地元での損失機は友軍機が衝突して無になった事件や、上昇気流に飲まれて墜落した機体や、事故って墜落した機体は、きちんと確認していたらしく(あいつら衝突して無になったよみたいなアメリカ側の報告に存在している)、日本の盛り過ぎな話はスルーされた。わりと無秩序にバンバン街を焼いていたアメリカ陸軍航空隊だけど、報告書は比較的しっかりしていた。すごいなあアメリカ。
 横の連携がぜんぜんしていなくて、検証用のPCを借りたのにいつまでたっても検証用PCが届かず「借りたことになっているでしょ。費用をチャージするからね」と言ってきた某社よりぜんぜんまともだ。アメリカの文書管理は本当にすごい。某社……僕が借りた検証用PCいつになったら届くんですか……。教えてください。

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