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自転車

 人を加害するにあたって刃物を使うことに躊躇がない人は折りたたみナイフではなく、包丁やしっかりとしたナイフを持ってくる。軍人さんのようなプロがどうなのかわからないけれど、治安の悪い地域でナイフを使い慣れている人たちはだいたいそういう傾向だった(いまはわからないが)
 高校時代の友人に深田くん(仮名)という不良がいて、彼はボクシングを一年近くやったあと、格闘技未経験者の不良をボコって無双していた。深田くんは学んだことを応用することが驚異的に上手いやつで、なんだかんだ上手いこと世の中におさまって社長をやってる。
 そんな深田くんや友人たちと昼飯を食っていると「喧嘩でナイフ使ってくる人がいたらどうする?」という話題になった。昼飯を食べている時にそういう話になる流れになった経緯はいまでもよくわからん。そもそもナイフをぶんぶんしてくる人がいたら逃げる一択なんだけど、蛮族はあまりそういうことを考えない。蛮族はパワー・オブ・ソリューションで生きている。
 深田くんはわりと慎重な性格だったので「普通に逃げるよね」と言ったあと「どうしても戦うなら自転車」と言って笑った。
 当時の僕は純朴だったので自転車?自転車どうやって使うんや?撥ねるんか?と疑問が湧いてきて質問をする前に話題が変わってしまってついに聞くことができなかった。
 それから数年して「龍が如く」が発売され、プレイ動画を見たら主人公の桐生一馬が自転車を振り回して敵を倒していた。成人してから知り合った格闘家にその話をしたら「自転車は殴打にも使えて、刺股みたいな使い方ができるから便利だよね」と言ってやっぱり笑っていた。そこが笑うところなのかわからない。自転車ってそういう用途もあったんだなあと目からうろこだった。ナイフぶんぶんしてくる人がいたら、自転車振り回してみているといいかもしれない。僕は秒で逃げる。

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