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楽器は「楽」しいが詰まった「器」

 六十二歳の誕生日に、母が白い封筒を手渡してくれたのは八年前だ。
表書きには「繁樹へ」とあり、手紙と1万円札が同封されていた。手紙には、お祝の言葉や健康を気遣う言葉の他に「このお金で人生を豊かにする物を買ってください」と書いてあった。
 
さて、何を買う? 最初に頭に浮かんだのは、自己啓発本、初心者水泳セット、囲碁入門セットだった。一週間ほど悩んだ末に「初心者セットが1万円」というキャッチに誘われてウクレレを購入したのだった。
なぜ、おたまじゃくしアレルギーのある私が、この言葉に反応してしまったのか? それは、テレビで楽器演奏はボケ防止や仲間づくりに最適という話を聴いたからだった。
 
テレビで紹介されていたメンバーは、全員が高齢者であり、ウクレレの演奏だけでなくフラダンスを踊れる人もいた。皆で毎月2回練習をしていて、高齢者施設へのボランティアも行っているという内容だった。
私も「楽器が演奏できる老人になりたい!」という思いからウクレレを購入したのだった。
そして「簡単ウクレレ教室」という無料動画を観ながら練習したら、直ぐに何曲か弾けるようになった。そうなると仲間が欲しくなって、ウクレレクラブを立ち上げた。
皆で練習を積んで母がお世話になっているデイサービスへの慰問や、公民館での初心者レッスン会も開催した。Facebookでウクレレ愛好家の外国人と知り合うことも出来、オンラインで演奏会をして親交を深めた。
その内の1人であるオーストラリアのテリーは、息子のティムと来日した時に自宅に招待して食事や演奏を楽しんだ。彼は、日本語学習者であり、江戸文化にも造詣の深い面白いおやじで、母や孫娘とも気楽に話をしてくれた。
 
今月、カフェや公民館等三か所で、オリジナル等を演奏する予定だ。「母へ」今夏、テリー親子が再来日します。我が家で又、ウクレレパーティをする予定。彼らと「上を向いてあるこう」を演奏しますので、天国で一緒に歌ってくださいね。今、あなたのプレゼントのお陰で、人生を豊かに生きています。お母さんありがとう!

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