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還暦おやじのスタディアブローWith ウクレレ52 代官が転職???

代官が転職して、高齢者施設に入所する?

 マーガリンのレッスン後にlineを見るとスクールグループも代官からも着信が溜まっていた。

 スクールグループlineの書き込みは、取るに足らない内容なのでスルーした。

代官からの着信も相変わらず猫の写真や文章にも “にゃー”だらけなので適当にチェックして送信しようとしたが、一つだけまじめなものが混じっていた。

 内容を整理してみると代官はマニラでアクティブシニア施設を探しているので、日曜日の見学を楽しみにしている。

彼が希望している内容としては。

① アクティブシニアの日本人が多く入所している。

② 独身の入所者が多い。

③ 日本食がおいしい。

④ 猫と一緒に住める。

⑤ バスタブがある。

といったところだった。

そして、施設を探している理由についても触れてあった。

 彼は本社勤務になることは避けたいと思ってきたが、どうも新年度はそうなりそうだというのだ。

仕事で頻繁に海外に行けなくなることは寂しいけれど、それは良いとしても自宅から通勤するというのは受け入れがたい。

妻からも帰国してこちらで常時働くのなら、別々に暮らしましょうと提案された。

それでいっそのこと早期退職してマニラの取引先に転職しようと考えていると話をしたら、あなたのブランド価値がなくなるなら、お互いに別々の道を歩きましょうと、離婚を突き付けられたらしい。

代官曰く、妻は夫が一流企業の役員というのが自分のブランド価値を高めていると思っているらしい。

覚悟していたことだが熟年離婚は避けられそうになく、自業自得だがやっぱり複雑な思いなのだろう。

それでフィリピーナの彼女に一緒に暮らそうと話をしてみたら、一緒に暮らすよりも必要な時だけ会うようにしたいと云われたそうだ。

合わせてあなたを介護する気持ちはないと念押しされたとlineに書いてあった。

 といったことの様だが、短い付き合いの私にそんな重要な話をするという事に驚かされた。

ゲイのビーナスとオナベのジャスミンがトラブル??

 私が食堂に着いた時はすでに高齢者席にはlineのスクールメンバーは、勢ぞろいしていた。

 そこに世界の松下も加わって日本語でチャイナタウンでのウクレレ練習会の話で盛り上がっていた。

 マサシの話だと参加者としては初心者が料理店の店主家族他2名、そしてレッスンする側がショウコとマサシとビーナスでスクールのジャスミン先生とチャックがタガログの通訳として参加したのだという。

シ:「それにしても驚いたわね。ビーナスとジャスミン。」

C:「あ~たの言う通り、ホントにビックリだったわ。」

マ:「正直どうしようかと思いましたよ。」

私はとっさに、ゲイのビーナスとオナベのジャスミンがトラブルを起こしたのだと思い質問をした。

鍵:「二人のせいでトラブルになったの?」

C:「そーよ、あ~た、大変だったわよ。」

鍵:「誰か説明してよ。」

マ:「初心者レッスンの最後に、ビーナスがホールニューワールドの弾き語りをしたんですよ。」

松:「ディズニーのアラジンですな。」

鍵:「それで?」

ユ:「まどろっこしいわね。」

マ:「ビーナスは声も良くて凄く歌がうまいんだ、そこにジャスミンが加わったらもう映画のワンシーンのように素敵で最高に盛り上がったんだ。」

C:「中華街を歩いている人たちも足を止めて聞いているし、何人かの子供たちはドアから店内に入ってきたのよ。ジャスミンの声がしびれるほどすてきなの。あ~た、あたしも興奮しちゃったわよ、アンコールもあったのよ。」

松:「ジャスミンはクラブで歌っていて、僕も観に行きましたが音域が広くて素晴らしいです。彼女の高音は聞いていて気持ちがいいですよ。その日はファンも随分いましたよ。」

ユ:「えっ、プロなの?聴いてみたいなぁ~。」

松:「素晴らしいですよ。でも、彼女は自分の声が嫌いなんだそうですよ。」

C:「どうして?」

松:「彼女は『僕はトランスジェンダーなんだ。』と何時も話しています。」

ユ:「トランスジェンダーって何?彼女はオナベって聞いていたけど。」

松:「トランスジェンダーとは、身体の性別と心の性別が一致しない人のこと。女性の身体で、男性の心を持つ人を『TM-Female to Male.』女性から男性へと言います。そういう人達の多くは手術をして男性の身体になることを望むのです。それでもジャスミンの話だと恋愛対象が女性とは限らないらしい。」

C:「FTMは聞いたことがあるわね。そして、「『MTF-Male to Female.』という男性の身体を持って心は女性という人もいるわよね。」

ユ:「そうすると、ビーナスはMTFってことになるのかなぁ。」

C:「彼は、自分が男性であることに違和感はなくただ恋愛対象が男性という事らしいわ。だから、手術をして女性の身体になりたいとは思っていないといっていたわよ。だからゲイなんですって。フィリピンにはゲイは多いのよね。それにしてもマッキは詳しいのね。」

松:「マッキって僕のことですか?いや~、そうやって言われたことないけど呼ばれるとうれしいなぁ。」

Ⅽ:「あらそう、私の友達で松木というのがいて、皆からマッキと呼ばれてたわよ。」

シ:「こちらは、松下さんよ。松木ではないわ。」

Ⅽ:「あ~ら、でもいいじゃない。下と木は棒が二本違うだけなんだから、それに本人も気に入っているみたいだし。」

シ:「ではそうしましょう。マッキはどうしてLGBTについて詳しいのかしら?」

松:「実は娘がそうだったので、妻と今でもそのことで喧嘩しているんですよ。」

Ⅽ:「あら、娘さんが?」

松:「そうなんです。娘に”Come out”されたときは正直ショックでしたですわ。初めはレズかと思っていたら娘はトランスジェンダーと云うので、妻と調べたのでそれがどういう事なのか分かりました。」

シ:「それでマッキは受け入れられました?」

松:「まるっきり受け入れられませんでしたよ。世間体もあるでしょう。娘には普通に結婚をして子供を産んでお母さんになって欲しいと考えていますから。こうなったのは妻の育て方に問題があったのではないかなどと言い争いましたよ。」

シ:「それでどうしたんですか?」

松:「どうにもなりませんよ。妻は世間体なんかより娘が幸せになることが一番大事、娘が望むなら手術代もだしてあげたいと言っていましたが、私はそんな風には思いませんわ。」

Ⅽ:「それで、どうしたんですか?」

松:「どうにもなりませんでした。本人も親も悩みましたよ。それで妻とは喧嘩したまま私はマニラに来てしまいました。でも、ジャスミンと話をしてみるとそんなこともあるのかと少しだけ考えられるようになりましたよ。日本に帰ったら娘と妻と向き合ってみなければと思っているのですが、はてさて、どうしたものやら。」

ユ:「そうなのかぁ。親や本人の事を考えると、簡単にゲイとかオナベとか言う言葉は使っちゃいけないんだわね。」

チ:「今まで知りませんでしたけど、これからは気を付けないといけないですわ。」

鍵:「今度皆でジャスミンの歌声を聴きに行きましょう。」

と言い残して、部屋に戻った。

フルーツの旦那は会ってからのお楽しみ!

 昨夜は早めに寝たので朝から元気だ。それに今日と明日は、レッスンを入れていないので、朝起きてルーティンをやってのんびりしている。

午前中の予定といえばマンゴウが部屋の掃除に来てくれるぐらいだが、今日で3回目だしもう日常だ。チップもちゃんと用意してある。

午後はフルーツの家で日曜日のイベントのリハーサルなので、楽譜の点検と東京音頭のウクレレの弾き語り動画を観ながらイントロ部分が難しいので何度も練習した。

今日はフルーツの旦那にあう予定だが、ユリとチエにどんな人って尋ねた時の彼女らの “ふふふ、会ってからのお楽しみ” っていう言葉がふと頭をよぎった。

そう考えるとフルーツのような女性を妻に出来る果報者はどんな男なのか?とても気になる。     

ファン心理としては、芸能人同士の結婚がそうであるように、こいつならしょうがないと思える奴であって欲しい。

ビジネスマン

ハンサムでスタイルが良くて一流ブランドのスーツを着こなすバリバリの日本人青年実業家で、英語も流ちょうに使いこなすといったイメージが勝手に膨らんでいた。

今日のランチはフルーツの家での料理教室でユリとチエが作くる予定のフィリピンの定番家庭料理と聞いているので楽しみだ。

考えてみるとマニラに来て2週間ほどになるがいまだにフィリピン料理は食べていない。

チャックにご馳走になったのも中華料理だったから、今日のランチが初めて食べるフィリピン料理ということになるので楽しみだ。

朝食の時間はいつものように会話はlineなので高齢者テーブルは静かだ。しかし、その分lineの書き込みは頻繁でいつの間にかアンケートまで始まっていた。

内容は“ジャスミンが歌っているクラブツアーに参加したい方は、都合の良い日時をチェックしてください”というものだった。

そこにはすでに何人かチェックされていたので私もいつでもOKにチェックをした。

チエもlineの使い方に慣れてきたようで、絵文字スタンプを多用していた。

今日の料理教室での料理について尋ねてみると、シシグという書き込みが、ユリからあった。

シシグ


チエからはすかさずYESというパンダの絵文字スタンプがポストされた。

どんな料理?と書き込みをすると、チャックから“シシグは細かく刻んだ豚肉の耳を醤油、ビネガー、ニンニク、唐辛子などで炒めたフィリピンの定番家庭料理よ”という書き込みがあった。

ショウコから “あら、あなた料理したかしら?”に対して、“私は料理をしないけどそれぐらいは知ってるわ。”とチャックから書き込みがあった。

今度はマサシから“さすがという絵文字スタンプ”がポストされ、チエからもGOODという絵文字スタンプがポストされた。

ユリから “チャックも私たちが作った料理を食べる?”って書き込みしたら、“誘ってくれてありがたいけど、家に帰ればフィリピン料理ばかりになるので、ここにいるあいだは日本食を食べたいからスクールの食堂で食べるわ。”とチャックが書き込みした。

チエとマサシはすかさず絵文字スタンプをポストした。こう見てみると、普段からおしゃべりでない人ほど絵文字スタンプを有効に使う傾向があるようだ。

ユリが “ショウコ、あなたも料理教室に参加しない?楽しいわよ” に対して、ショウコは“私はこちらの施設に入所するのでこれからは食事を作らないからパス”と書き込んだ。

マサシは、“You betだよね”という絵文字スタンプをポストした。


 

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