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還暦おやじのスタディアブロードWith ウクレレ㊿

作務衣おやじは世界の松下?

夕食での話題は、もっぱらウクレレの話だった。

シ:「You look great! Did you get a haircut? Shige. 」シゲ、素敵!髪切った?」

鍵:「Thank you. I got my haircut yesterday.」ありがとう。昨日床屋に行ってカットして貰ったんだ。」

玉:「It suits your hairstyle.」似合っているわ。

鍵:「I also like it.」私も気に入ってます。

ユ:「どうやって頼んだの?えーとHow do you sayどうやって頼んだのですか? in English?」

マ:「How did you order? 」

鍵:「ごめん!日本語でいいかな?気に入った髪型の写真を指さしただけだよ。床屋に行く前にジャムにレッスンして貰ったんだけど、その方法が一番伝わるって教わったから。」

マ:「それなら、僕も出来そうだ。」

シ:「そうよ。マサシ君もカットして貰ってきたら?」

鍵:「髪を染めて貰うといいよ。」

玉:「冗談がきついんじゃないかしら。」

マ:「いやぁ。みんなノリがいいな。」

鍵:「それって、立派なセクハラだな。ところで、模造紙は入手できた?」

ユ:「いろんなところ探して、やっと見つけたわよ。そして、“ふるさと”の歌詞を書いてみたわよ。どう?」

といって、見せてくれたが、ひらがなの文字が美しい。

チ:「ね、凄く上手でしょう!」

シ:「驚いたわ。」

マ:「凄いね。筆ペンも手に入れたんだね。」

鍵:「人は見かけで判断してはいけないという事だな。」

ユ:「シゲ、それって、どういう意味よ。素直に褒めないさいよ。」

鍵:「でも、ほんと、素人の域を超えているよ。」

ユ:「小学生のころから習っていて、たまに展示会にも出しているのよ。」

玉:「本当にすごいわね。どなたか先生に教わっているのかしら。」

ユ:「いいえ、20年ほどお世話になった先生が亡くなってしまってからは、誰にも教わっていないわよ。でも、紫舟ししゅうさんの書が好きだから機会があれば、教わりたいと思っているけど。」

シ:「紫舟って知らないわ。誰か知っている?」皆、首を横に振っている。

鍵:「もしかして、NHKの大河ドラマ龍馬伝の字を書いた人?」

ユ:「そうそう、良く知っているわね。」

鍵:「龍馬伝は最初から最後まで見ていて、題字のところに名前が出ていたけど、紫と舟でなんと読むんだろう位にしか思っていなかったよ。」

ユ:「彼女は展示会もやっているから、一度観てみて、独創的で素晴らしいわよ。」

鍵:「そうしてみるよ。」

そんな話をしているところに、作務衣おやじが声を掛けてきた。

作:「すみません。チョットお聞きしてもいいですか?」

シ:「はい、あら、どうなさいました?」

作:「さっきほどのイベントの話なんですけど、参加することは出来ますか?」

シ:「多分、大丈夫だと思いますわよ。あのう、お名前は?」

作:「松下です。それなら是非参加したいです。よろしくお願いいたします。」

チ:「街の電気屋さんで、松下ってピッタリですね。このチラシに、開催場所と時間が書いてありますからどうぞ。」といって、チラシを手渡した。

ユ:「世界の松井っていうアナウンサーいたよね。」

作:「私の名前も同じなので、若いころは『おい、世界の松下たばこ買ってこい』なんてからかわれていましたよ。ちなみに、子供のころは家がナショナルの電気屋さんだったので、妹とセットでナショナルキッズって呼ばれていました。」

鍵:「そうすると、賢次さんなんですか?」

作:「そうです。賢いと次でまったく一緒なのです。」

チ:「ナショナルキッズ、面白いですね。」

シ:「松下さん、あなたから教えていただいた女性に着付けをお願いすることが出来ましたわ。ありがとうございました。」

鍵:「当日はウクレレで東京音頭を演奏しますので、ご存じでしたら飛び入りで踊ってくださいね。」

作:「ありがとうございます。」

と言い残して、松下さんは上級者テーブルに移動したが、このやり取りがあってからは、夕食時は高齢者テーブルに来るようになった。

桶まんが労働規定違反

今日はウクレレのナイト練習会がないので、桶まんを呼び出して話し相手をさせることにする。

鍵:「でませい。桶まんごろう。」

桶:「へい、ご隠居、お呼びでおま。」

鍵:「例のパンダの件じゃが、何か分かりましたかな。」

桶:「へい、そのパンダに親魂が赴任したのが、10年前で任期が終わるのが10年後でござんす。ですから、10年待てば親魂はフリーになりやすから、その時はご隠居のところへ連れてまいりやす。」

といって任期の表を脳に送ってくれた。

鍵:「へぇ、こんなのがあるのですな。パンダの親魂の任期終了は2029年5月10日って10年後じゃありませんか、わしが生きているかどうかもわかりゃしませんぞ。」

桶:「いいえ、ご隠居は10年後も生きてござんす。ご隠居の親魂の任期はその先までありま。あっ。やっちゃいましたでござんす。」

といって、任務表を脳に送ってくれたがすぐに消えた。

鍵:「いや~。205〇年?という事は、わしは随分と長生きするのじゃな。助さん、どうしたのじゃ。」

桶:「あっしら魂は、魂労働基準監督局から派遣されていやす。その為に労働規定を守らなければなりやせん。その中で絶対にやってはいけないのが、任期を伝えることです。それは、寿命を教えることになるからござんす。

その過ちを犯した場合は10年間拘束されやす。もうすぐ、あっしと入れ替わりに、シビルの奴が赴任しやす。

ご隠居とはしばらく会えやせんが、10年後にお会いしやしょう。一つだけ言っときやすが、シビルの奴がまんごろうの担当になると、あっしのように性欲を制御しやせんので、ご隠居のまんごろうは制御不能になりやす。変な女に引っ掛からない様に充分気を付けておくんなせいやし、それでは失礼しやす。Enjoy your life. See you. 」

といって、桶まんの姿は消えてしまった。

何が起こったか訳が分からないまま、宿題をしてベッドで横になってそのまま気がついたら朝になっていた。

Lineで、てんやわんや

 朝起きてルーティンをしてから、桶まんを呼び出したが反応がなかった。本当に彼とは10年間会えないんだと考えると寂しい。

スマホに天気を尋ねたりしながら、Lineの着信を確認してみるとイベントについてのやり取りと代官からいつも通り猫の写真が沢山届いていた。

私はウクレレグループlineメンバーのやり取りは見るだけなので気楽なものだ。

それと言うのもフィリピンのメンバーから英語でポストされたものは、マサシが日本語に訳してくれてこちらが日本語でポストしたものは、英語に翻訳してくれているからだ。

しかし代官から大量に来るlineには、 “分かりました”や“ありがとう”承知しました“可愛いね”など、のコメントをいちいちつける必要があるので、このところ面倒だと感じている。

それに私はlineの着信音をミュートにしているから良いが、もしミュートを解除していていたらストレスになってしまうだろう。

そんな風に思っていたらトラブルが起きた。

 それは、朝食から始まった。

今朝の食堂での会話は例によって筆談なのでいちいち面倒だ、それに少し離れていると会話に参加できない。それでlineで会話することを思いついて、ウクレレグループlineにポストしたら一気に会話に花が咲いた。

そうしたら今度はlineの着信音が食堂内に響き渡ってしまって、マサシが慌ててみなのスマホのline設定をミュートに変更してくれた。

 それにしても良い年下した大人達が隣り合った人とSNSで話をしている光景が子供たちの姿と重なっておかしくなった。

 しかしいつも会話の中心にいるチャックはメンバーではないので、会話に加われないことにいら立っているようだった。

マサシがチャックに声を掛けてグループlineに招待し、彼女もメンバーに加わったからさあ大変。

今日のウクレレの練習会の後の昼ご飯はどこで食べる?というような日常会話でグループlineはあふれてしまった。

それに対して、 “日本食が食べたい” とか“飲茶がいいよね”といった内容や、フィリピンの先生との食事はどうするのといったイベントとは全く関係のない会話がどんどんポストされた。

食堂の隣の事務所内からひっきりなしにジャンジャンとlineの着信音が聞こえてくる。どうやらフルーツは、ミュートにしていないらしい。

もしそうだとしたらたまったものではないだろう。

彼女が慌てて事務所から飛びだしてきたので、チエが事務所内で状況を説明する破目になってしまった。

今度は日本語での会話をマサシが英訳したことで、フィリピン人メンバーから今日はウクレレの練習があるのですか?場所と時間を教えてくださいという内容がポストされた。

フィリピンメンバーは、朝からジャンジャン着信音が鳴りやまずにたまったのではないだろうに、内容をチェックして問い合わせてきたのだった。

マサシは、今日のチャイナタウンでの練習会はイベントの為の練習ではなく、初心者レッスンという事を英語でポストした。

それでもフィリピン人メンバーから “今日はランチを持参します”とか“今日は同僚と一緒に食べに行く予定です”といったポストが続いて収拾がつかなくなってしまった。

そして、フルーツから残念ですが私は妊娠しているのでマッサージには一緒に行けませんというポストまであった。

これはチャックが今夜マッサージに行ける?というポストに対しての返事だった。

最終的にはフィリピン人メンバーにマサシが丁寧に説明してくれたので、誤解を解くことが出来た。この時のマサシは凄く頼もしかった。後日、ショウコから、マサシはTOICEで高スコアーを持っていると聞いて、私も少しだけ英語検定に興味がわいた。

マサシの丁寧な説明にもかかわらず、流石に彼らはグループlineへの無意味な書き込みの多さに閉口したようで、途中でグループから一時的に脱退者するフィリピンメンバーも出てしまった。

その人にフルーツが説明をしてくれて、再度メンバーに加わってくれたが、二度と迷惑を掛けぬようにしたいものだと、マサシがスクールグループlineを新たに立ち上げてくれたのでそちらに、会話の場を移したが、普段おしゃべりな人はSNSでもおしゃべりという事を再認識した。

 それというのもlineグループで積極的に書き込みしているのは、ほとんどチャックとショウコとユリだった。

私は今日のチャイナタウンでのウクレレ練習会に同行する先生がオナベのジャスミンという部分に反応して、オナベって何?と書き込みしただけだったし、チエもそれに対して私も良く知らないという書き込みだけだった。

 朝食後は、マサシとショウコは東京音頭の楽譜をチエから受け取って、チャックと一緒にチャイナタウンの料理店に向かった。

タクシーは予定の時刻に食堂の前にきて、lineで話していた通り3人とチョット大柄なオナベのジャスミンを乗せて出発した。

 私はlineスクールメンバーと共に手を振って見送りをした、ひょんなことからゲイのビーナスも練習に加わることになったようだが、ジャスミンとどういう会話になるのかがとても気になった。



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