社史のカタチ
社史発刊スタイルの20年
社史は、紙媒体がほとんどではあるが、ごく一部に電子媒体というスタイルもある。なんというか、これは2000年代初頭にはじまるIT革命しかりのインターネットや電子媒体などがもてはやされた、流行りもの産物であった気がする。
2000年代初期は、CD・DVD-ROM形式が少し流行り、映像版や書籍版のデータを保存したりしていた。ROMのデータで再生できるようにすると考え、基本的にはhtml形式となった(一般公開はしないのが前提)。PDFだと「操作」できないじゃんという、今想うと当時の謎理屈とかもあった。そうなると、PC上の制約でOSのバージョン、ブラウザーの種類、最適な表示サイズ、アドインの有無…ちゃんと見れるにはどこまでサポートするかなど、考えなければならない要件が多くなった。
2010年代ごろからは、インターネット環境も変わり、下手にROMとかの電子媒体を介さず、web公開というスタイルも出はじめてきた。これには、企業情報の開示という意味で、一般公開したほうがいいという風潮も追い風としてあったのだろう。
この頃までは、あくまでも掲載する社史コンテンツ自体は、しっかりと作りこんだうえでの「記録」という側面が強かった。だが、公開したところで熟読してくれる人も少なく、制作するコストに比して、公開するメリットは高いとはいえなかった。
最近では、社史とは言えないが、周年記念の記念サイトで歴史に触れるようなコンテンツを制作する企業も多くなってきている。周年事業の一環でもあるので、その活動を一過性の記念サイトで公開するのは、なかなかうまいまとめ方だとは思う。
そういう意味で、webの利用はあくまでも気軽に触れる程度のものとして、閲覧者がじっくりと読む必要のがあるような社史コンテンツを掲載する場所ではないということ。ならば、原点回帰の「本」のスタイルに落ち着いてしまうことになる。
社史のカタチ
古くからある「本のカタチ」が、モノとしての存在感、パラパラと見られる手軽さが、どの年代の人にとっても、なじみ深い感覚があるからなのかもしれない。これから先、学校で習う教科書、勉強で使うノートが本のようなカタチじゃなくなったら、社史のカタチも変わっていくだろう。
ちなみに、コンテンツは適材適所。いわゆる社史コンテンツ自体は、データベースであり、あくまでも記録という側面が強い。これはこれで、整理された素材として有効活用していくのが本筋で、そのもの自体に価値があるとは言いにくい。この素材を活かし、その場にあったコンテンツとしてストーリーを仕上げる。こうした活用までのサイクルが成立してはじめて、社史コンテンツの本懐なのかなぁと。