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アイヌ語 輪読会レポ #9

北大言語学サークル所属のもけけです。
本記事は、6月13日に行われた第9回アイヌ語輪読会の学習記です。
第9回では、第25課「時間表現(3)継続と結果」、第26課「不定人称文と受け身文」、第27課「尊敬表現」の内容を扱いました。


学習内容

第25課「時間表現(3)継続と結果」

第25課では、アイヌ語の時間表現に関して、主に進行状態を表すと考えられそうな kor an と、主に結果状態を表すと考えられそうな wa an という二つの形式の使い分けを学習しました。

輪読会では、国語学のアクチオンスアルト研究における、いわゆる「金田一の四分類」の発想を援用し、アイヌ語の動詞の語彙的アスペクトにも似たような分類を想定することができるのではないかという観点から意見が交わされました。

また、an (複: oka) の人称と数が何の要素に一致するのかという疑問についても話し合いました。

第26課「不定人称文と受け身文」

佐藤(2008: 203)によれば、包括的一人称複数接辞(a-Vt, Vi-an)は「人が」のような一般的な意味で使われる場合があり、こうした構文は「不定人称文」と呼ばれます。

さらに、佐藤(2008: 204-206)では、アイヌ語の受動文について、能動文目的語が受動文主語になるような典型的なものではなく、動作主を随意的な副詞句として主格接辞たる不定人称接辞を用いるような構文が受動文に相当することが示されます。

輪読会では、このような特徴的な受動文の構文に関して、日本語の「間接受動文」との類似などに着目しながら意見が交わされました。

第27課「尊敬表現」

第27課では、アイヌ語の尊敬表現について概観し、①二人称敬称人称接辞、②親族名詞、③指示表現について学習しました。

二人称敬称人称接辞は、前述の不定人称接辞と同様に、包括的一人称複数接辞と同形であり、輪読会では、これらの形式の記述について、しばしば「不定人称接辞」や「四人称接辞」としてまとめられるように独立の形式として設定するのか、包括的一人称複数接辞の用法の一つと考えるのかという観点からも意見が交わされました。

他にも、指示詞の体系や、指示詞における音象徴の可能性についても話し合うことができました。

まとめ

以上のように、今回の輪読会では、大きく分けてアイヌ語のアクチオンスアルトと不定人称接辞について学習しました。
輪読会の中で、日本語について今までに学んだ内容を援用して考察してみたことも、関心や理解を深める上で役立ったように思います。

文献

  • 佐藤知己(2008)『アイヌ語文法の基礎』大学書林

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