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「英一蝶」サントリー美術館
2024.10.14
昨日は疲れ果てて一眠りしたら日付が変わってしまって、連続更新記録が振り出しに戻ってしまった。まあ、仕方がないよね、起きたら夜中1時の少し手前で、もういっそ、そのまま朝を迎えてしまいたかった。
ちょっとした悲しみと、ちょっとした用事を抱えて六本木へ。良い秋晴れでしたね。日差しが目に染みるぜ……
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実際に水が流れていて
うようよした水面の模様が透過している。
泣いてないもん。
メイン写真に使われている布晒舞図は後期の展示。今日(前期展示)は出ていない、後期からの作品で、あっ、この作品は今日見られないんだ、えっ、どうしよ、来週以降……うぐぐぐ……って悩んだけど、私の予定がうまくつかなそうだったのと、そんなに気になるんだったら何とかして後期「も」見に行きゃあ良いじゃねぇかっていう気持ちになった。そうね、見られるうちに見とかにゃあいけねぇって昔の私も言っていた気がする。
入館料を払うのにはクレカやQRコード決済も使える。さすが商業施設内の美術館だね。
・入口入ってすぐのイントロ壁にボコボコした関東の地図があって、プロジェクターで多賀朝湖→島一蝶→英一蝶っていう活動場所の変化をぽわっとした光を投影して示していた。俳諧もやったっていうこのあとの展示の文章の中に「もしかして京都にいたときがあったんかも?」って内容があったけど、基本的には江戸(流刑になったとしても都内)での活躍だったよう。あと、以後は英一蝶で話しちゃうけど、江戸に戻ってくるまでは多賀朝湖名乗りだったはず。もう現代の私から見たら英一蝶として一括してイメージしてしまってるので難しいところがありますね。
・雑画帖。もともとは貼りまぜだったかもしれないね、っていう話があるらしい。四角だけじゃなくって丸だとかドーム型とかにも形を変えた紙に描かれている。内容もいろいろで、一図が龍で、落款も硬めなフォントな漢画ぽい感じなんだけど、次からは大和絵っぽい猫があったり、狩野派的な山水画があったり、たらしこみ使うような水墨画もあったり、画題も身近な動植物から古典を参照した人物込みのもあったりと、かなり手広い。それぞれ落款の名前や文字の種類も変えてきてるしな。貼りまぜの屏風なんかにして一挙に見えるようにしたうえで、「これ、全部ワイが描いたやつやで〜」って言うの気持ち良いだろうな。めちゃくちゃ器用な絵師である。それでいて洒脱な感じもするから粋の体現者だな。
・イキりすぎてしまったのか幕府に目をつけられてしまったらしく、なんやかんや(諸説あり)あって島流しになったそうな。島流しになってからの2章に入る前の導入として、東京の大島〜八丈島の島嶼部の配置に寄せた解説ライトがあった。大島行ったときにそこそこ島の歴史とかについて調べてみたけど、島流しにあった人からの文化の伝播があるようで、英一蝶も(まだ多賀朝湖なんだけど)一役買っている。
・実際にはどうかっていうのか2章。ここに並んでた絵は画面の暗さ(多分汚れとか保存状態とか元々の紙質?のせいかと、画題や雰囲気が暗い絵ということではなく)に比して表装がピカピカしてて少し違和感があるほどだった。昔からお金をかけた表装裂を使ってたわけじゃないのかもしれないけれども、大切にされてきて、できる範囲での修理もやってきたんだなぁって思った。予算の都合とか道具不足とかもあっただろうけれども、小さな絵だったとしても大事な絵だったんだなって気がした。手紙も軸装してるんだもんな。
・絵馬はそこそこの大きさがあるよ。島流しになってからも絵の注文はあったらしくて、画材も送られてきただろうね。この、島の神社にある絵馬につかわれた金泥はたぶんいろいろやりくりして残しておいたのを使ったんだろうな。目以外に金泥が入っているところは見たところなさそうだから、蝋燭の光くらいの暗さの中で、馬や鬼の目だけがギラッと光るのはちょっとした神秘体験だろうな。最高の効果を生むはず。ちょっとした恐怖を添えて。
・島一蝶以後、なんだか人の動きや、特に衣の動きが格段に良くなっている気がする。それまでは器用な絵描きだなって感じの技術先行な印象だったけど、「あ、この人は生きてて、ここでくるくる立ち回ってたんだな」って気がするほどの躍動感みたいなものが出てきたと思った。
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紋切り型じゃなくって
風を感じる。
・島の人にとっても英一蝶からの文化伝播はあったと思うけど、英一蝶にとってもいい経験になってたんじゃないかな。もう江戸には戻れないって覚悟してたはずだし、その中で写生対象は島のものになるのだから。大原女のモチーフを習得したときのように、島民の生活を見ていたんじゃないかな。
・3章の、いよいよ英一蝶。集大成になってきた。さっきの画像も江戸に戻ってからのもの。風俗画卒業宣言?をするものの、必要があれば描いていたよう。仏画の、それこそ前期のみ展示らしい釈迦十六善神図の、釈迦の衣の金色と肌の色が若干異なっていて、しかも釈迦の衣に銀色で描かれた模様の細かいこと!いや〜執念を感じる。この画面はとっても精緻に作り込まれてた。
・雨宿り図屏風のMET所蔵のほうが先に描かれてて、東博所蔵のはそれよりあとらしい。MET版のほうが川の水位とかも描かれてて、どちらかといえば説明的。実際にあった風景としてはMET版のほうが近いかも。でも絵画としては東博版のほうが、みんなでぎゅうぎゅうに雨宿りっていう内容をズドンとシンプルに伝えてくる。庶民の風俗画として匂い立ってくるのは東博版だろうな。
・高尾・鞍馬図の図画の長さ、表装含めた全体の長さも違うのがちょっと気になった。中央揃えにしていたから画面のみを見ていたらそんなに気にならないかもしれないけど。どうしてなんだろ。
・ところどころに絵の一部を抜粋してひとことがあるのがめちゃくちゃ楽しい。奈良にあった遊郭ののれんに「ごめんください」してる鹿をピックアップしたり、高尾鞍馬図のかわらけ投げでも「ファーーーー!」って横に書き加えてみたり、絵に対してぐっと親近感が増す。パネルはだいたいケースの中の展示台の上なので概ね低めの位置に配置されているから、子供でも見やすい。子供用ワークシートもいつもどおり充実しておりますからなあ!サントリー美術館の子供に対する優しさ、というかサービス提供の感じ、とてもすごいと思う。
あーーーーもう!!!後期も行きたくなってきたじゃんか、もっと絵を見たいって思うじゃんか。ずるいよ英一蝶、サントリー美術館!!!
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![ささき](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152618446/profile_83070862948e4d13774ef87b2e38da6a.jpg?width=600&crop=1:1,smart)