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Micro-NIKKOR-P.C Auto 55mm F3.5
もの心つく頃からこのレンズが身近にあった。
後々調べてみたら、
このレンズは私と同じ年齢のようだ。
もう写真屋をたたんで久しいのだが、
なぜかこのレンズだけは持っていた。
理由はよくわからないのだが。
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銀塩写真と暗室
銀塩写真の時代。
デジタルカメラもパソコンも無く、
写真やカメラについてのことは、
一般的には写真屋さんに頼んでいた時代だ。
写真店を営む父は、
弔事など急に必要となる写真の依頼があると、
このレンズと機械式のニコンで、
HANZAかなにかの複写台を使ってよく複写を撮っていた。
まだ幼かった私は、
面白半分でよくその姿を見ていたし、
暗室にもよくくっついて入っていた。
何も見えず音だけが聞こえる。
「父の働く音」が、
なにか厳かな儀式を執り行っているようで、
幼いながら黙ってジッと耳を澄ませていたことと、
そして、酸っぱい匂いだけをよく覚えている。
レンズも自分も復活。オールドレンズ?
1990年代当時、
自家就職したものの放蕩息子だった私は、
ここ数年、趣味としての写真を再開した。
アダプターを介してどのレンズでも使える現代は、
私にとっては浦島太郎的な驚きと同時に、
このレンズを使ってみようと思わせてくれる後押しになった。
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程よくカリッと程よくパキッとした描写はデジタルでも健在で、
並みのレンズではないことを再認識させてくれる。
そもそもマイクロニッコールの由来や歴史からみても、
いわゆるオールドレンズ的な期待をしてしまうと、
いい意味で裏切られる。
▽
ニッコール千夜一夜物語 - 第二十五夜 | Enjoyニコン | ニコンイメージング (nikon-image.com)
カニ爪の話題でもなく、
マクロなのかマイクロなのかという話題でもなく、
ただただ、
ニコンがある暮らしと、
我が家の歴史にお付き合いありがとうございました(笑)。
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