その写真は、もう無い。
君と離れて何度目の冬だろう。
今年は暖冬だとか、今年は厳冬だとか、
そんなどうでもいいことを何度か繰り返してきて、
そして何度目かの、また冬。
恋は続いている限り永遠で、
君と僕には、何かの繋がりが、
決して切れない何かがあるのだと、
ありがちにあの頃信じていた。
淡い思い出?
そんなふうに色褪せることさえなく、
時間だけは過ぎていく。
僕が何歳か歳を重ねたように、
あれから会ってさえいない君も、
やはり歳を重ねているのだろう。
繊細な貴女。
春の木漏れ日のように、
柔和に微笑んでいたことが、
昨日のことのように頭から離れない。
ありがちな失恋話。
僕は貴女の柔らかい胸の中に、
生きる意味や、
ここに存在してていい価値や、
悲しみの中でしか生まれない言葉の変換を、
きっと探そうとしていたのだろう。
貴女はそれまでの人生で、
そのシルクの心を
充分過ぎるくらい傷付けてきて、
ありがちな僕は、恋をした貴女の、
その傷を少しでも癒やして、
貴女の安らぎでありたかった。
しかしながら、勝手に生きてきた僕に、
信じてもない神様はそれ以上の勝手を
許す筈もなく、
君との温かな季節は、
終わりを迎えてしまった。
理由は、そうだな、まぁどうでもいい。
ありがちだと思うならそれでどうぞ。
君と僕には切れない繋がりという
幻想があったんだ。
恋とは容易に引き裂かれる。
貴女は幸せを畏れている。
きっとその口唇さえも、
貴女にとっては確認する道具にすら
ならなかったのだ。
僕はひたすら君を離したくなく、
君にとっては僕を通して
幸せを見通せなかったのだろう。
貴女が恋しい。
それでも貴女が恋しい。
今でも貴女が恋しい。