キメラ4
夕食を作っていると、夫がキッチンにやってきた。
不思議な喧しい音楽は、とりあえず聴き終えたようだ。
何を話そう。
テーブルに並んだ料理を挟んで向かい合った私達は、互いに話題を探り合ってみる。
二人で居るだけで自然と話が弾み、楽しい時間を過ごせた私達は、もうこのテーブルには存在しない。
まるで、傷口を避けて当たり障りのない会話を探す、オトナゴッコをしているようだ。
夫婦とは何だろう。
少なくとも、そう呼べた日々はかつてあったような気がする。
今は、崩れかけた砂の城…。
避難もできない住人は、自身が砂に埋もれていくのを、静かに傍観している。
周囲の人々は、私達を、理想の夫婦とまではいかなくても、仲の良い普通の夫婦と見ているだろう。
でも、普通の夫婦って?
ケンカをしなければ仲良し?
離婚しなければ普通?
わからない。
一つわかるのは、もう私達は戻れないんだろうなという、悲しい、虚しい、静かな予感だけ。
離れ方もわからない二人。
いや、私はそれでも寂しのだろう。
私を一度は受け入れてくれた人が去っていくのが。
夫は何を思うのだろう。
私を手放すとき。