モコモコ全盛期の羊に会うため極寒の北海道へ
とある冬の週末
羊飼いの友人がいる。
勤めていた東京の会社を辞めて、北海道出身の奥さんの夢を一緒に実現するため、数年前から牧場主として夫婦で日々奮闘している。
実を言うと彼は友人の友人の友人で、北海道で会うまで顔も知らなかったのだが、どうしても生まれたての羊を見てみたくて紹介してもらった。飛行機を取ってLINEのメッセージだけを頼りに北海道へ発った。
とりあえずジンギスカン
夕方、凍つく2月の旭川駅で待っていると、「おーい」と車の中からもこもこと着込んだシルエットの人が出てきて手を振ってくれた。のってのってと荷物ごと車に乗り込む。全員はじめましてなので興奮気味のわたし。
同乗者たちの興味はジンギスカンにあるらしく、とりあえず町でうまいと評判のジンギスカン屋へ向かう。早速羊を見せてくれるなんてやさしいな。
羊飼いの友人
ジンギスカンを焼きながらざっくり互いの身の上話をする。夫婦加えて、もうひとり同行者がいた。別の便で東京から来ていた羊飼いの友人はまったく食に興味がなく、どこに行ってもマクドナルドでいいそうだ。仕事が終わった金曜日の夜に東京を出てふらっと遊びに来たらいしく、荷物もほとんどない。
人見知りしないのか最初から変わらないテンションで、ただただ自然体で、つくづく素敵な人たちである。
お店に貼ってあったタングロンポスター。
厳しい自然と羊との出会い
羊飼いの朝は早い。北海道の冬は厳しいので、生まれたての羊はそのままでいると凍死してしまうそうだ。そのため、夫婦は数時間おきに交代で様子を見にいく。ひっきりなしに羊が生まれるこの季節、安心して熟睡できる時間はないそう。
朝ご飯は、木でできたお碗にお味噌汁をよそってくれて、これまた分厚い木でできたお皿に乗った香ばしいコーンパンやサラダやフルーツをいただいく。
私とほぼ歳の変わらない夫妻は、口数が多いわけじゃないが、一挙一堂があたたかくて優しい。体も心もあたたまったら農場へ。
生まれて間もない毛のない羊はやぎみたいで、ミルクを飲ませてやる必要がある。小さくて頼りなくてつぶらな瞳で、こっちを見てくる。よろよろ歩いている姿は本当に愛くるしすぎてつらい。
カメラ目線だ!
毛刈り前の真冬だからモコモコがピーク。
腰が引ける餌やりタイム
一連の作業を遠目から見守っていると、「羊に餌やる?」と声をかけてくれた。温厚な羊もえさを前にすると突進してくるのでとてもこわい。私以上に大きい体で地響きを鳴らして突進してくるし、ぐいぐい押してくるので本当にこわい。
牧場はとても寒く、最初は浮かれていたわたしも、数時間たつと事務所のストーブの前で真っ赤になった指先を合わせてがたがた震えていた。この文章を書いているだけでも鳥肌が立ってくる寒さだった。
近くの道路には、雪かきで除けられた雪が数メートルにわたり積み上がっていて、交差点は本当に何も見えない。1日や2日じゃ見えない大変さがまだまだたくさんあるのだろう。
寒さと引き換えに
そんな中連れて行ってくれた近くの露天風呂はとても寒かったけど、奥さんと肩を並べて星を眺めながら、ぬるぬる硫黄系のお湯で体の芯まで温まった。日本に生まれてよかった。あたたかく迎えてくれた夫妻と友人に大感謝。(なんだかきれいにまとまってしまった)
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