#4 Hueco Tanks
Hueco Tanks
Hueco(フエコ)とは、スペイン語で「隙間、空洞、くぼみ」を意味する。アメリカの外岩のトポを見ると、よくHuecoという言葉を目にする。例えば「岩下部の”Hueco”がスタート」といったような記載だ。要は窪みからスタートせよということだ。
日本のクライマーにとってアメリカの岩場といえば、ヨセミテ、ビショップ、レッドロックといったところが有名で実際に行ったことのある人は多いだろう。Hueco Tanksについては名前は聞いたことがあっても実際に訪れたことがある人は少ないのではないか。
その大きな理由が「フエコで登るにはガイドが必要」と言われていることだと思っている。僕も昔はそんな噂を聞いたことがあって、「へぇ、そうなんだぁ」と思っていた。
Hueco Tanksはテキサス州の最西端に位置する州立公園(State Park)である。広大な荒野の中に突如として大量の超巨岩が現れる。そこがHueco Tanksである。
園内に入って、岩場を歩くと大小様々な窪みーHuecoをそこらじゅうに見かける。これらの窪みがタンクのような役割を果たし雨水を貯めてくれたため、周りは砂漠のような荒野でありながら、太古から人間を含めた生物に生活環境を提供してくれていたようだ。だからこそHueco Tanksは歴史的な自然区域ということで入場には規制がかかっているようだ。
Hueco遠征
アメリカに来た以上、そして僕が住んでるテキサス州にフエコがある以上、一度は行かねばならない。これは天命だと思っていた。
2024/2/23-25。テキサスというよりも、もはやメキシコなEl Pasoに前泊含め2泊3日で赴いた。
フエコは僕の居住地ダラスからは10時間超のドライブを要する、もはや日本横断レベルの距離感(地図上の青丸がダラス。見た目遠くないけどめちゃくちゃ遠い)。
運転が嫌なもんで金曜夜に飛行機でEl Paso入り。ホテルは空港近くの古びたヒルトンガーデンイン。税抜価格一泊117ドルだが税込2泊で270ドル近く、、、高い。
Day1
早朝レンタカーを借りる。空港のレンタカーの受付に行ったら人が誰もいない。一体なんぞやと思い、そのままレンタカーが並ぶカープールに行くと、窓口の手続きなく借りれた。謎(笑)
いざ出発。まずは腹ごしらえに朝食にメキシカンのタコスをドライブスルーでゲット。ついでにウォルマートに寄っておトイレ&昼飯をゲット。道中、サークルKなんかがあったが、アメリカのコンビニはあまり品揃えがよくない印象なんで、岩場に行く時はスーパーで用をすませるようにしている。
第一核心:入園
朝9時20分ごろ、岩場付近に到着した。
ここは駐車場ではない。フエコタンクスに入るための渋滞待ちの車である。先に述べた通り、歴史遺産的な場所であるがゆえにHuecoはパークレンジャーが厳しく入場を取り締まっている。ただ、ガイドを雇わなければ入園できないというわけではない。システムを少し細かく記しておこう。
Hueco Tanksはエリアが写真のように分かれている。North Mountain、East Mountain、East Spur、West Mountainの4つだ。
このうちNorth Mountainはガイドなしで入園できる。それ以外はガイドを雇わなければならない。
ガイドなしで入れるNorth Mountainでも、そう簡単に入園できるわけではない。これがHueco Tanksの最もめんどくさいところで、予約をしておけば必ず入園できるが、予約がないと何時に入れるかが「運ゲー」になってしまう。
具体的にいうと、公園内に滞在できる人数はトータルで70人だと言われており、予約者は8〜10時の間に入園できる。10時を過ぎると予約はなかったことになる。
シーズン中は常に予約は満杯になるとのこと。なので予約していない者は、10時になるまで予約者がドタキャンするのを待ち続けることになるらしい。
ただ、謎なことに朝8時の開園時点で、先着10名までは予約無しでも入園を許されるとのこと(この先着順を勝ち取るためには朝6時半には並んだ方がセーフティだと、ローカルクライマーからアドバイスされた。)
こんな仕組みがトポに書いてあった情報である。が、実際にはどうやって運用されているのかはよく分からない。ちなみに予約は電話でしかできず、すぐに満杯になるらしい。実際、予約なしで待機する人もまぁまぁいる。
この日は特に人が多いらしく、何時間待つか分からないとレンジャーから伝えられる。中には列から離脱して帰宅するものも現れる。果たして今日はまともに登れるのか。。。不安がだいぶ募った。が待つこと1時間半弱。レンジャーからゴーサインをいただきようやく入園。ひゃっほー!!
入園後はまずは公園の管理棟へ。ここで必要なフォームに名前等、諸々の情報を記入して7ドルをお支払い。その後、オリエンテーションを受ける建屋が別にあり、そこでビデオを見て、メンバーカードを受け取る。これで入園手続きが全て完了。
Free Willy
ようやく入園して岩場を巡る。想像以上にでかい岩が死ぬほどある。まじで岩天国。アプローチも基本的に岩肌なので歩きやすくて悪くない。
この日のお目当てはFree Willy, V10。130-140度ぐらいの強傾斜に序盤はガバカチが続く。オブザベした感じは完全に得意系だと思ったが、いざやってみると最後のリップ取りが何度トライしてもできなかった。あっさり敗退。まぁ、登りに来れただけでもラッキーだし、気持ちいいロケーションなので登れなくてもどうだって良い気分ではある(本当はめちゃくちゃ悔しい)
Free Willyを触った後は、近くを散策して適当に課題を触って、この日は終了。
Day2
朝はメキシカンの朝食をいただき、ウォルマートを中継し岩場へ。
9:10頃到着。1時間半ぐらいのウェイティングを覚悟して、ウォームアップ用のマッサージボールを完備してやってきた。ところがどっこい、この日は9:40頃に入園を許される。超ラッキー!ヒャッホー!!
Dark Age
昨日の疲れもあったのでV7ぐらいを楽しめれば良いかなと思い、岩を探していたところ出会ったのがこやつ。
Dark Age、V10。めちゃくちゃ存在感が半端なく、カッコ良い課題。厨二病感を感じさせる課題名も良い。これはやりたくなる。
とりあえず記念受験がてらトライ。下部はヒールやトゥを駆使しながら抜け出し、中間部からカチが続くフェースに移行する。ムーブが多彩でめちゃくちゃおもろい。
2日目のヨレという言い訳があったので、深追いせず敗退したが、これはいつか登りたい一本。次はいつ来れることやら。
Baby Face
Dark Ageの後は、さらに岩場を散策して、Baby Faceという名前の課題に辿り着く。純粋にカッコ良い岩を直上していく、まさにボルダリーな課題。スタートがリーチーで苦戦たがなんとか完投。マントル返した時の爽快感がまじでハンパない。
最後にDaily Dick Doseという本当にしょうもない名前の素晴らしきルーフ課題を触る。日本語で言ったら「ポコ⚫︎ン大魔王」的な課題名だ。
ムーブはバラせたがつなげることができず無念の敗退。結局、2日で登れたのは2本だけ。しかし、圧倒的な景色と課題、暑くても乾いた風が透き通るこのフエコに心は魅了された。レッドロックに続きめちゃくちゃいいロケーション(アクセス問題を除く)。クライミング人生、一回じゃマジで物足りない。