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『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』を観て

先週の土曜、下高井戸シネマで友人と映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』を観た。

すでに夏に一回観ていた映画で、その時点で自分の中で今年No.1だなと確信したくらいブッ刺さった映画で、フォロワーさん経由でクリスマスシーズンにもう一度上映すると知り、たまらず再視聴したのです。

内容は、クリスマスシーズンに寄宿学校に居残ることとなった教師、生徒、料理長の3人が、お互いの欠けている部分を露呈しながら徐々に絆を深めていく話。舞台は1970年のボストン近郊にあるバートン校で、映画は比較的ゆったりと進み、大きなアクションこそ起こらないものの、人間ドラマを丁寧にしっかり描いた作品だ。

いやー、またラスト20分でやられました。正直一度観ているのもあって、途中までは「あれ、こんなに単調だったっけ……」と思いながら観ていた。でもハナムがアンガスの薬の正体を知っていたことがわかるシーンでカチッと心のスイッチが切り替わる音がして、大晦日にキッチンでハナムが爆竹をぶっ放してアンガスとハイタッチするシーンで破顔し、最後にハナムがアンガスを救って最高のヒーローになるシーンで目から塩水が出た。そうだった、このシーンに俺は芯から撃たれたのだった。

やっぱり最高の映画だった。このシーズンに観てよかった。おかげでこの映画をより強く胸に刻みつけられた気がしたから。クリスマスは毎年『素晴らしき哉、人生!』を観るって決めているけど、ホールドオーバーズと交互に観ることにしようかな。とりあえず明後日『素晴らしき哉、人生!』観るけど。

この時期にもう一回上映することを教えてくれたフォロワーさんに感謝です。

以下、1回目に観た時の感情が昂ったまま綴った感想を投下しておさらばします~👋

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◾️感想

はい、間違いなくこれは今年No.1です。最高の映画でした。えずくほど泣いたよ。いや、もう泣かせてくれって感じだった。

特に最後のハナムとアンガスの別れのシーン、ハナムがアンガスに「君は大丈夫」「頑張れ」と伝えたシーンで涙大放出。その言葉がどれだけこれからアンガスを支えるか。その言葉が欲しくて、でももらえない子どもがきっとたくさんいるはずだ。大人に「大丈夫」と言ってもらえること、これは本当に素敵なことで、価値あることだと思う。ハナムにありがとうと心の中で叫んだよ。アンガスのために力強い言葉を残してくれてありがとうって。そしてあんたもこれから頑張れよって。全てだったバートン校を離れて、また再スタートするんだよな。大変かもしれない。でもあんたが言った通りじゃないか。「過去が人生の方向を決めたりしない」これから気張って新たな人生を歩んでくれ。

この映画を観ていて、確信したことが何個かあった。

◾️みんなそれぞれ何かを抱えている

ハナムはトリメチルアミン尿症という病気を患っていて、魚臭い体臭を無くすことができない。そんなことみんな知らないから、自然に煙たがられている。

アンガスは家庭環境が劣悪だ。あんなに大好きだった父親は統合失調症となって施設に入れられ、離婚した母親は自分を置いて新婚相手と旅行に行ってしまう。それゆえアンガスはひねくれた性格になってしまい、自分でもそれを自覚している。

メアリーは愛する息子を戦争で亡くした。夫も25歳になる前に亡くなっている。他人にはわからない、深い悲しみを背負っている。

この映画の主要な登場人物3人はみな人には言えない何かを抱えていて、それでいながらもお互いを傷つけてしまう。人間って難しい。だけど、傷つけ合った後に理解し合い、絆が生まれる。なんて素晴らしい経過だろうか。

俺自身難病を患ってしまったけど(いまだに信じられない!)、きっとみんなそれぞれ同様に何かしら抱えているんだ。逆に言えば、何にも抱えてない人なんてこの世に一人もいない。このことは心のどこかでずっとフワッと感じていて、今回それがくっきりと形になった感じだ。「みんな何かを抱えている」、そう思って生きるのと生きないのじゃ大違いだ。優しくなりたいから、そのマインドをずっと心の一箇所に留めておいて、生きていきたいと思う。前提として、それを踏まえて人と接する。

◾️自己犠牲を伴い誰かを助ける話が好き

今回ハナムの嘘で俺は泣いた。ハナムはアンガスのために、「自分が実の父親に会いに行かせたんだ」とアンガスの両親(母と継父)に嘘をつく。そのためにハナムはバートン校を辞めされられたけど、代わりアンガスの転校を防いだ。なんてかっこいい大人なんだ。生徒のために、未来ある子どものために自分を犠牲にしたハナムの行動こそ、英雄的行動と呼べるのではなかろうか。俺ももし同じ状況になった時に、迷わず自分を犠牲にして弱き者を救う選択ができる大人になりたい。圧倒的な利他は、圧倒的な優しさに他ならない。心が痺れました。素敵なシーンをありがとうございました。

そしてメタに飛翔すれば、こういったシーンが俺は大好きなんだと再確認した。グラントリノしかり。卑怯で保身的な奴には死んでもなりたくない。俺の思うかっこいい映画のヒーローたちみたいになりたい。

◾️ルールや規範を壊す瞬間に心がときめく

あんなにルール人間だったハナムが、アンガス、メアリーと過ごしていくうちに徐々に絆されていき、規制が緩くなっていく。彼らがルールや社会的規範、常識とされるものを破る時、俺の心はドクン!と高鳴る。守らなければいけないものはそりゃ守るのが当然だけど、世の中フワッとしている概念もたくさんある。なんでそうなっているのかわからないまま、「みんながそうしてるから」みたいな"理由になってない理由"で他者を縛りつけ、押しつける人がいる。あー、やだやだ! 俺はどこまでいってもモラルが欠如してるので、わからないものにはわからないと言いたいし、納得・理解してないものには首を縦に振りたくない。どうどうと「なんで?」って言いたい。

そういうパーソナリティだから、ルールや規範を破るシーンが大好きなんだろうな。そして世の中突き抜けるのは、きっとそういう人種だと信じてる痛い奴なのです。俺も大晦日にキッチンで爆竹をぶっ放したい。

◾️税金払って死ぬだけの人生だ

今回もしかしたら一番刺さったかもしれないセリフ。クリスマスパーティーにて、掃除婦のダニーが料理長のメアリーにプレゼントを渡しながら言ったセリフだ。なんて洒脱、おしゃれ、かっこいいんだ! こんなセリフどうやって思いついたんだろ。確かに俺もそういう人生かもしれないと思ったのが一つと、単純に誰か好きな人に向けていうセリフにしては、あまりにさっぱりしていてかっこいいのだ。ベタベタしてない感。サラッと感。俺もこんなこと言って誰かに贈り物とか渡したいけど、人生経験をしっかり積んだ掃除婦のダニーだからしっくりくるのであって、まだまだ酸いも甘いも知らない若造の俺が言ったらクサイだけだ。もっと苦労してからだな、言うとしたら。にしてもかっこいい。

てことで、神映画でした。佐久間さんがラジオでおすすめしてた時、ピンと来たんだよな。「これは絶対に俺好きなやつだ!」って。てかあんなに俺と波が合う(と勝手に思ってる)佐久間さんが絶賛していたのだから、そりゃ俺にとっておもしろいに決まってる。観てよかった……ラジオ聴いてなかったらたぶん観てなかった。

アレクサンダー・ペイン監督の作品、観てみようと思います。

本当に本当に、ありがとうございました!!

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