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続・ペットというカテゴリーとは

実家の愛猫が旅立ちました。


以前こちらで、愛猫の彼女について、看取ることについて少し綴っているので、唐突感がある方はこちらから。

すっかりおばあさんになっていた彼女は、今年に入ってから体調が不安定であった。先天性の持病も抱えており、小さいころから心配事は尽きなかったが、それでも私の人生の半分に近づくくらいまで一緒にいた。

体調が悪くなったり、回復したりを繰り返していた彼女だったが、今度は本当にごはんも食べない、水も飲めないという状況になりつつあって、母から連絡がきた。
病院のお薬をのんでも吐いてしまい、ご飯を食べてもいないのに吐いているという。いっきに体重も落ちて、おそらく血も足りず、ついには立ち上がって歩くこともできずだったが、ほふく前進で進もうとする意志とかすかな力があった。


猫の寿命を考えると、数年前から私はこの日のことをなんとなく意識していた。
彼女に会いたくて実家に帰省するが、もしこれが最後だったら…と考えて、涙を何度も堪えながら自分の家へ戻ったものである。
想像すること自体が縁起が悪く恐ろしい。
そう思いながら恐怖をかき消すように、なんとか声を振り絞って
「またね!」とその場を去ってきた。

今回の帰省は、本当に最後かもしれない。
そう思うと、中途半端に帰るよりも看取ってあげたい、という気持ちがあった。
自分本位な考えだけれど、彼女がもう旅立つことを悟ったまま、その場を後にしなければならないことの方が、耐えがたいほどに辛かった。

🐈

家に着くまでの新幹線で、じんわり一人泣いた。
これから起こることが簡単に予想できてしまい、ただただ泣いた。
マスクの下を涙が流れて、首筋をつたって胸元が濡れた。

家に着くと、数か月前に会ったときの彼女とはまるで別猫だった。
やっとの思いで座っているようだった。目が合うも、私を見てとらえているかはあやしかったし、かろうじて呼吸をしているようだった。

そのとき、すっと、納得というか、彼女がもう人生を全うするのだということを視覚で理解することができた。
これまでは頭でわかっていても、どこか信じたくない気持ちであって、何かの奇跡を求めてすがる思いで涙が出ていたのだとわかった。

私は親族の死に何度か立ち会っていたが、彼女も人間のそれと同じようであった。
私のなかで何か幕のようなものがストンと落ちて、心が切り替わった。
私は彼女をしっかりと見送らないといけない。
そしてずっと彼女を支えてきた母のことを、支えなければならない。
現実を見ないといけない。
友であり、姉妹のように過ごした、あくまで対等であった彼女のために、今私は飼い主として、しっかりしないといけないと思った。

🐈

私が帰って一日共にし、その間一緒の空間を過ごし、彼女のお気に入りの場所に移動させてあげたり、膝にのせて家族そろって談笑できる時間もあった。

一晩一緒に寝て、次の朝、彼女は旅立った。
最期のその瞬間まで一緒にいることができた。
彼女は最後まで彼女らしく、静かにスマートに息を引き取った。
目を閉じた彼女は、元気だったころのように、可愛く安らかな寝顔を取り戻していた。

嗚呼、これで良かったんだ。彼女は病の苦しみから解放されたんだ。

🐈

事前に調べていたペット葬祭サービスに連絡した。
家の前に火葬車がきてくれるサービスだった。
お花やお気に入りのおもちゃ、チュールを一緒に持たせて見送った。
ちょっと暑くなるけど、すぐお家に戻ってこれるよ、またね。と心の中で彼女に言った。

業者さんに支持されながら火葬を進めた。
人間のそれとほぼ同じだった。
興覚めするかと思ったが、お線香をあげて手をあわせるとなんだか心がすっとした。
私って結局、日本人で日本生まれ日本育ちなんだなと、変なことを思った。
行為そのものというより、そういう習慣、見てきたものが安心をもたらすことがあるようだ。

あまってしまったキャットフードは保護猫団体に寄付した。

🐈

命の重さはみな等しい。
それが人間だとか動物だとか、植物だとか。きっと何も変わらない。
ただそれぞれ思い入れは違うのだろう。

ペットというカテゴリーとは何か。
それは人間が勝手につけたもの。
私は彼女と姉妹である。誰がなんと言おうとも。
元々は一人っ子なので、姉妹の感覚はわからないが、きっと彼女と私は姉妹なのだ。
でも看取る覚悟を決めたときは、私は飼い主になった。自らをそうした。
彼女がペットなのではなく、私が彼女を見届ける覚悟として、飼い主という言い方がしっくりきたのであった。
それって結局ペットなのでは?とも思うけど。

言葉に言い表せない。
言葉を使って表現する場なのに、うまくできない。
ただ私は、彼女と一緒にいた時間がすべて本当で、姉妹として過ごしたこと、たまに飼い主になったこと、そして彼女を愛したことも、これからも変わらず愛していることも、ゆるぎない事実と誓いとして、ここに記すのだ。



*素敵なお写真、拝借しました。ありがとうございます。

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