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視力以外にも基準がある!航空身体検査における視機能検査方法③

こんばんは。視力激やばパイロットです。
冬も本格的になってきて体調を崩しがちな筆者でしたが、年末年始休みで少し落ち着いてきたのでやっと続きを書く気になりました。
大変お待たせいたしました。

前回は両眼視機能まで書きましたので、今回は視野からですね。
一応①、②のリンクを貼っておきます。

早速今回の内容を見ていきましょう。

パイロットに必要な視力以外の視機能②
視野

視野はその名の通りです。下記が航空身体検査マニュアルにおける基準です。

1.身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある視野の異常がないこと。

2.不適合状態
2-1
動的量的視野検査最大イソプタ(V/4)において、正常視野から半径方向に15°以上の狭窄を認めるもの
2-2
動的量的視野検査Ⅰ/4において、暗点を示すもの
2-3
静的量的視野検査において、感度低下を示すもの

3.検査方法及び検査上の注意
3-1
検査は、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)又は周辺視野を確認することができる静的量的視野計により行うこと。
3-2
動的量的視野計(ゴールドマン視野計)により検査する場合は、V/4及びI/4のイソプタについて、少なくとも15°毎に測定を行うこと。
3-3
動的量的視野計(ゴールドマン視野計)による検査において、正常視野は、最大イソプタが次に示す範囲以上とする。
上方60°、外上方75°、外方95°、外下方80°、下方70°、
内下方60°、内方60°及び内上方60°

4.評価上の注意
4-1
動的量的視野計(ゴールドマン視野計)で視野異常が疑われる場合には、眼科医の診断を受けること。
4-2
静的量的視野計で感度低下所見が疑われた場合、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)で測定し、眼科医の診断により異常が認められなければ、適合としてよい。

5.備考
5-1
上記2.の不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)による視野検査(少なくとも5本のイソプタで測定すること。)結果、過去2年分の視野検査結果、眼圧、眼底所見、自覚症状、臨床所見等を付して申請すること。
5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

航空身体検査マニュアル参照

視野検査にはハンフリー視野計(静的量的視野計)とゴールドマン視野計(動的量的視野計)を使うものがあるようですが、私は後者しか受けたことがなく、航空大学校の二次試験で使われるものもゴールドマン視野計ですので、こちらの話をしていきます。

まず、下に参考動画を貼りますのでこれを見てください。
文字で説明するよりわかりやすいはずです(笑)

ドーム状の検査機械の中で光が外側から流れてくるので見えたらボタンを押すという単純な検査です。光は大きい光と小さい光の2種類があります。
意外とここで引っかかる人もいるちょっと厳しめの検査になっていますので、私なりのポイントをまとめさせていただきます。

視野検査のポイント

・とても長く、集中力が必要な検査なのでこまめにまばたきをすること
・規則的なリズムに合わせてボタンを押すとたまにあるフェイクに騙されるので、見えてから押すこと
・終盤にある盲点の検査では見えないところがあることを検査しているのでむやみにボタンを押さないこと
・片目づつの検査なので検査していない方の眼はガーゼなどで覆われるが、そちらの眼も開いておくこと→でないともう片方の目の検査が始まった時にチカチカして全然見えなくなる

受けたことのない人は、こいつは何を言っているんだと思っていると思います。こればっかりはイメージがわかないと思いますので、ぜひ一度どこかの医療機関で受けてみて下さい。個人的には3万円くらいかかりますが、航空身体検査自体を一度受けてみることをお勧めしているので、同時にゴールドマン視野計での視野検査も受けてみて下さい。

最後に5の備考について解説します。
ここには不適合の人が受ける大臣判定について書かれています。一見すると視野検査で不適合でものちのち適合になるから大丈夫なように思えますが、そんなに楽観的にも捉えられないでしょう。というのも、これを読んでくださっている皆さんはパイロットを目指している方々だと思っているからです。この先どの養成機関で訓練を受けるにしてもはなから航空身体検査に不適合で大臣判定を受けなければならない人を受け入れるところはまずないでしょう。まず最初の入り口に立つためにすべての検査に適合できる状態を確認する必要があります。
大臣判定は無事にパイロットになることができた後で身体状況が悪化した場合に頼るものと考えておきましょう。

パイロットに必要な視力以外の視機能③
眼球運動

またわかりにくいやつが来ました。
これはそんなに大したことはないです。

1.身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある眼球運動の異常がないこと。

2.不適合状態
2-1
複視
2-2
病的眼振
2-3
その他眼球運動に異常のあるもの。

3.検査方法及び検査上の注意
3-1
眼球運動検査は、視診により8方向(内、外、上、下、斜上内、斜上外、斜下内、斜下外)について行うこと。
3-2
上記検査法で異常が認められた場合は、下記の検査のいずれかを実施すること。
(1)複像検査
(2)注視野検査

4.評価上の注意
4-1
3-2の結果複視が認められず、かつ、視認可能範囲について、各方向(8方向)が45°以上ある場合は、適合とする。
4-2
眼振が疑われる場合は、11.耳鼻咽喉11-2平衡機能を参照すること。

5.備考
5-1
上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、視機能検査結果及び複像検査等の成績(ヘスチャート等)を付して申請すること。
5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

航空身体検査マニュアル参照

眼球運動の検査方法

大きく分けて二つの検査があります。
一つ目はペンを上下左右に振られ、片眼と両眼でそれを追って見るという単純な検査
二つ目はあまりよく見えないゴーグルをかけて頭を振られる検査
です。

眼球運動の不適合状態①
複視

複視は物が二重に見える状態のことです。
一つ目の検査で見られているようです。

眼球運動の不適合状態②
病的眼振

眼振とは、眼球が自分の意志とは関係なく、規則的に往復運動することです。これには生理的なものと病的なものがあり、病的なものと判断されると不適合になります。

これは二つ目の検査で見ています。まず、頭を振ることで強制的に眼振を起こします。その後焦点の定まらない状態で(ゴーグルの中はぼやけて何も見えません)その眼振の収まり方を見られています。眼振の収まり方は体調によっても左右されるようで、当日は万全の体調で臨むことが大事なようです。

3-2の複像検査・注視野検査は受けたことがなく、受けたことがある人が周りにもいなかったので詳しくはわかりませんでした。わかり次第更新します。

ただ4-2にあるように厳密には眼振は耳鼻咽喉科の項目ですので、ここで異常があった場合は耳鼻咽喉科で診られることになります。

3つ目のその他眼球運動に異常とは具体的な記述はありませんが、検査の中で何か違和感が見つかった場合はこれに当たるのでしょう。

パイロットに必要な視力以外の視機能④
色覚

やっと最後の項目まで来ました。
気になっている人が多いかもしれない色覚についてです。

1.身体検査基準
航空業務に支障を来すおそれのある色覚の異常がないこと。

2.不適合状態 
石原色覚検査表で正常範囲と認められないもの

3.検査方法及び検査上の注意
3-1
色覚検査は、石原色覚検査表(学校用色覚異常検査表を除く。)を用い、原則として初回の航空身体検査時に行うこと。
3-2
色覚検査表は、変色又は褪色していないものを用いること。
3-3
検査時の照明は、自然光又はそれに準じた人工光線を用いること。
3-4
後天色覚異常の有無に注意すること。

4.評価上の注意
上記2.不適合状態の者が、パネルD-15検査結果においてパス判定の場合は、適合とする。この場合において、眼科専門医の診断により確認を行うこと。

備考
5-1
上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、パネルD-15検査結果を付して申請すること。
5-2
上記5-1の者のうち、航空業務に支障を来すおそれがなく、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

航空身体検査マニュアル参照

色覚の検査方法①
石原式

何か所か記載があるように色覚検査は石原色覚検査表を用いて行われます。
これに関しては次の動画をご覧ください。

動画でも述べているように色覚異常はそこまで珍しい病気ではありません。
しかしながらパイロットにとって色の識別は重要であるため、検査を行っています。
これに関しては数字を読むだけなのでポイント等はなくごまかしなども効かない検査だと思います。
強いて言うなら数字が何も書いていないダミーがあることくらいです。

色覚の検査方法②
パネルD-15

4にあるように石原色覚検査表で異常が認められた場合はパネルD-15というものを使って検査します。

パネルD-15 参天製薬参照

このように色がだんだんに異なっている色票を用います。基準色が一色だけ置いてある状態がスタートで、そこから受験者が最も近い色を順番に置いていくという検査です。
ちなみに裏に番号が書いてあってその順番が答えになってます。

最近は下のようにアプリでできるものもあるようなので気になる人は試してみてはどうでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました。
そしてだいぶローペースでの投稿になってしまい大変申し訳ありません、、。だれも待っている人はいないのかもしれませんが(笑)

今回で視機能の項目は一通り終わったことになります。
かなりきりの悪いところで記事が分かれているのはいつの日か修正します。

また、次回は航空身体検査マニュアルに沿うというよりも、ここまでで触れていないパイロットの眼や視力に関することを深堀っていこうと思っています。ぜひ楽しみにお待ちください。
それではまたいつか。

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