目の前が真っ赤になった朝
前回から3ヶ月ほど間が空いてしまったものの、私は元気に過ごしている。
いや、正確にいえば、つい最近「元どおり元気」になった。
最後に記事を更新した6月から、採卵を経て、移植までなんとか漕ぎ着けた。
長いようで、短かった。やっとここまで来れたと安堵した。
でも
1回目の結果は陰性。そう上手く事は運ばないよね・・・と思いつつ
2回目の移植に向けて歩み始めた。
そんな中、事件が起きた。
子宮内膜が元々厚くなりにくい私は、移植周期がスタートすると同時に
慣れない運動を始めた。
運動といっても、一日15分程度の無理なく続けられる運動である。
Nintendo Switchのリングフィットというフィットネスができるゲームを使って
毎日スクワットやら腹筋やらをして1週間が経った。
その結果、これまで排卵日までに6mmにすら届かなかった私の内膜は、
なんとD9で6mmにまで育った。
平均よりは薄いものの、私にとってはすごく嬉しいことだった。
運動は面倒だったけど、努力してみるもんだなと感じたのも束の間。
ある朝、1歩も動けなくなった。
立つことも座ることも苦痛なくらい、腰に電気が走り続けるような痛みが襲ってきたのだ。
迷ったが、救急車を呼んだ。担架で運ばれながら、痛みで意識を失いそうになりながらなんとか耐え、気がつくとMRIの中にいた。
「腰椎間板ヘルニアと靭帯損傷ですね。3週間くらい入院できますか?」
そう医師から言われた。
(え?移植まであと5日しかないよどうすんの)
(3週間も入院なんて費用どれだけかかるのさ)
そんなことで頭がいっぱい。でも痛すぎてもう思考する力もない。
とりあえず夫を呼んだ。仕事を早退して来てくれた。
結果、移植は予定通り行う前提で入院することになった。
とはいえ、痛みで立ち上がるのも苦痛、なんとか車いすに移動できても、
1人では移動ができない。トイレにも行けない。
トイレに連れて行ってもらったら、ズボンも自分じゃ下ろせない。
用を足した後拭くことすらままならない。
(こんなんじゃ移植は無理だ)
頭の中の冷静な私はそう思っていた。
思いつつ、諦めきれなくて、自分では入れられない膣錠を看護師さんに入れてもらった。
そんなこんなで移植3日前。
通っている婦人科に電話で相談をした。移植は延期になった。
神様なんて絶対いないと思った。
こんなに努力して、痛い思いも、精神的に辛い思いをして、
でも頑張って前を向いて生きてきた人間にこの仕打ち。
悔しくて、悔しくて、病室で啜り泣いた。
2人部屋だったのだが、隣の優しい入院患者さんが話しかけてくれた。
ありがとう。ごめんなさい。
当然お風呂も1人では行けない。どうするんだ?と思っていたら、
「寝ながら入れます」とのこと。
え?寝ながら?どういうこと?と思っている間に担架が運ばれてきて、
あれよあれよという間に浴場に到着した。
寝たままMRIのような機械の中に首から下が入れられ、ミストシャワーを浴びた。
車になった気分だった。
その間に頭が洗われ、全身を洗われ、拭かれ、乾かされていく。
看護師さん、介護士さん、
患者としてお世話になったのは初めてだったけど、かっこいいなぁ。
すごく輝いて見えた。
病室では特にすることもなく暇だったため、
夫に持ってきてもらったゲームをしたり、読書をしたり、Netflixを見て過ごした。
1人で過ごすのが苦にならない性格で本当に良かったと思った。
総合病院なので、頻繁に救急車で病人が運ばれてくる。
ベットは窓際に位置していたため、カーテン越しでもサイレンの赤い色で病室全体が染まる。
赤い稲妻みたいだなあと思った。恐怖を感じた。
あの日、自分のために鳴らされたサイレンの音、赤い色。
意識は朦朧としていたけど、目に焼きついている。
しばらく聞きたくもないし、見たくもない。
1週間後、私は退院した。夫に支えられながら、タクシーに乗る。
住んでいるマンションにエレベーターがないため、
3階まで千と千尋の釜爺の如く這いつくばって階段を上がった。
これを書いている今はなんとか1人で歩けるようになったが、
まだ腰に違和感はある。
元気になったらまた移植周期に移ろうと思っているし、
もう病院まで歩けるくらいには回復しているのだが、なんだか疲れてしまった。
ただでさえ疲れる不妊治療。それに加えて今回のこの騒動。
1ヶ月くらいお休みしようかなという気持ち。焦って卵を無駄にしたくないしね。
正直、この年齢なら1回目で授かれるかなと思っていた。甘かった。
何か原因があるのか、ないのかわからない。
着床不全の検査も視野に入れつつ治療をしていかないとなと思うけど、
いかんせん疲れた。ここまで頑張ってきたし、少しくらい休んでもいいよね。
時は待ってくれないけど、病気なわけではない。
正直、子供が欲しいのにできないなんて贅沢な悩みだとも思う。
入院中、いろんな病気やケガで苦しんでいる人を目にして、そう思った。
健康で生きているこの今の自分の体に感謝しながら生きよう。
いつか、心から頑張って良かったと思える日が来ますように。
see ya
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