Angels Don't Pray --layer001
PRESENT DAY PRESENT TIME…
現代日本で本当にあったはなし…
綺麗な紅茶色の海。白色の野原。いつもどおりの光景が広がってる。そう。ここは天国。私の大好きな場所。
わたし?わたしはコノハ。一応….天使ってことになるのかな?
天使っていってもお仕事なんてない。友達と遊ぶだけ。毎日楽しいよ。ふとした時、生きてる意味とか考えて悩んじゃうぐらいには単調で退屈だけど。例えば最近だとミカと橙大樹林に行ってオレンジの魚を釣ってきたんだ。家で水煮にしたんだけど、甘くておいしかった。
そんなこと思い出してる場合じゃなかった。明日も早いんだ。もう寝よう。
おやすみなさい。
コノハは翼を体に被せて眠りについた。
そして彼女は夢を見た。顔の輪郭のない不気味な天使が大空に羽ばたく夢だった。
なんの面白みもない暮らしを抜けて、今日も楽しく眠りについた。
今日もまた太陽と時計が回る。
コノハはアラームを浴びせられた後、髪も整えずに部屋を出た。リエはまだ起きてないみたいだ。起きてたら連れて行ってやろうと思ったのに。
町を抜ける。抜ける。抜ける。
切符を買って電車に乗り込む。乗り込む。乗り込む。
お、ミカからメールだ。「そろそろ着くよ〜。:]そっちどこにいる?」
少し考えて返信する。「こっちもあとちょっと〜。いつもの場所で〜」
送信ボタンを押してあたりを見渡す。雇われてる天使だらけだ。どいつも一様に生気を感じさせない目を無理やりギラギラさせて空気を睨んでる。
そもそも私達は何も食べなくても死なないし、好きなものを好きなだけ自分の力で創造できるから働く必要なんてないんだけど、なぜかあいつらは働く。生きる意味とやらを探してるんだろうか。そんなものはないのに。なんの前振れもなくこの天使世界が作られてからもう3年が経つ。この世界が始まった時、誰も記憶を持っていなくて訳がわからない状態だったから、この世界は大混乱。みんな頭おかしくなっちゃって、集団自殺が流行ったんだ。でもそこで死ねないことに気づいて、もっと頭がおかしくなっちゃった。死が無いなら頑張って生きる意味なんてないもんね。
もう完全にみんなイカれてる。まぁそりゃそうだよね。自分で何でも生み出せるから、支配欲とか完全に消え失せちゃったんだもん。
んで本当に頭のおかしい廃人以外の中途半端なイカレポンチは人間に擬態して現実から眼を逸らすために働いたり寝たりするってわけ。私は働くのは馬鹿らしいからやらないけどね。遊んで気を紛らわすこともできるのになんで働くのか…理解ができないよ。
前世とやらがあるのか、ここはどこなのか、私達は何者なのか、なんで死なないのか、全て分からないんだ。そりゃ狂うでしょ?
翼を持っているという理由だけで、みんなここを天国と呼んでる。誰かが皮肉で言い出したんだけど、なんか定着しちゃったらしい。言葉って怖いね。
あ、くだらないことを思い出してたらついた。見慣れた風景だ。窓を介して見える狭くてちっぽけな二分割された世界。ドアが開いて分割が弾けると、「こっち側」「向こう側」の境界が無くなってどちらにも干渉できるようになる。
この雨黒駅で降りるやつは雇われじゃない。雇われの連中と同じように目は死んでるけど、あいつらと違うのは享楽的というか冷笑的というか、「生きる価値など無い」と確信している奴らばっかりってことだ。ようはこの駅で降りるのはヤケクソになってる連中ばっかなんだ。私もそのうちの一人だから偉そうなことは言えないけど。
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