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白うさぎに導かれ、いにしえの神々に会いにゆく第一章 心優しい神と因幡の白兎の物語 紀行編1-3 赤猪岩神社
1-3 赤猪岩神社
時々思いがけない神社巡りをすることがある。
ホワーンと呼ばれた神社へ行く途中で、まるでおまけのように意外な神社へ参拝するのは、やはり神々に仕組まれているのだろう。
実は赤猪岩神社も全く予定に無かったのに、ひょんなことからお詣りすることになったのだった。
このときの目的は二回目の大神山神社奥宮と大山寺参拝だった。
一回目は米子から大山ループバスででかけた。
このバスは大山のいくつもの名所を文字通りぐるぐる回っていたので、とても移動しやすかった。
数年後に二回目の参拝に行く際、同じバスを利用したいと調べたら残念なことになくなっていた。
大神山神社奥宮へ行く手段を調べ、この時には米子からお安い値段で回れる観光タクシーが出ていることがわかった。
あらかじめいくつかのコースがあり、目的地が決められていた。
その中から大山寺と大神山神社奥宮へ行くコースを選んだら、赤猪岩神社が組み込まれていたのだ。
まったく知らなかった神社だったが、オオナムチノカミが殺害された岩を封じ込めた場所だと知り、これも何かのお導きだろうと立ち寄った。
米子駅から出発して15~20分くらいだったと思う。
山道を進み、広い駐車場と小さな売店があるところでタクシーは停まった。
短い階段を上がると、小さな鳥居と社が見えてくる。
なだらかな坂道を上がって鳥居をくぐり、石段を上がってゆく。
こじんまりした大社造りの社殿が見えてくる。
なだらかな山の斜面にあるため、平らな場所は広くはない。
建物自体も素朴で簡素な神社だ。
だが不思議なほどやわらかいながらも強い神気をまとっている。
人を威圧するのではない、穏やかに迎え入れてくださるような気を感じた。
お詣りしてさらに山道を登ってゆくと、オオクニヌシノミコトを殺した大岩を封じた場所に出る。
こんもりとした山の中にある大神様を殺した岩を封じた神社なのに、少しもおどろおどろしさが無い。
むしろ静かなあたたかい雰囲気を漂わせている不思議な場所だ。
ここは「死」にまつわる所ではあるが、それ以上に「再生・復活」をこの場に見えない形で記録しているようだ。
賣沼神社同様、私が大好きな神社だ。
ひょんなことから立ち寄ったのだが、ここも呼ばれたとしか思えない。
かなり交通が不便な場所にあるにも関わらず、きれいに手入れが行き届き、地元の人たちに大切にされていることをうかがわせる。
しみじみと来て良かったと思った。
お詣りを終えて駐車場に戻り、売店に立ち寄ってみた。
土日祭日のみ開くと言っていたが、今はどうなのだろう。
ここで素朴な豆せんべいとマスキングテープをお土産に買った。
おせんべいは東京に戻ってから行きつけの珈琲店のマスターと常連さんで味わってもらった。
甘くて後味がピリッとして、ついついいくつでも食べてしまう美味しさだと好評だった。
一袋しか買わなかったので、もっと買ってくればよかったなと後悔したものだ。
そしてここのマスキングテープがすごい。
あちこちでマスキングテープをお土産や自分用に買うことがあるのだが、赤猪岩神社のマステは斬新だった。
地色は赤や青やいろいろだが、模様はすべて同じ。
オオクニヌシノミコトが猪だと騙された大岩で殺され、母神が祈って降りてきた女神たちと薬を作って生き返らせるストーリーが延々とかわいいイラストで印刷されているのだ。
少なくとも私が行った範囲内で、ここまで徹底して神社の由来をマステに込めたものは見たことがない。
すごいわ、南部町!
このマステもおせんべい同様、差し上げた人たちに大好評だった。
もし機会があってまたお詣りに行き、売店でまだ扱っているなら絶対に購入してきたい思い出深いお土産だ。
売店のお姉さんに絵葉書をおまけにいただき、意外な神社さんとの出会いにしみじみしながら大山に向かったのだった。
まだ新型コロナがこの世に現れる以前のことなので、今はいろいろと事情が変わっている可能性もある。
行ってみたいなと思われるなら、念のために鳥取県南部町の観光協会に問い合わせられた方がいいだろう。
余談だがnoteに掲載している『因幡の白兎、神となり社に鎮座するまでの物語』の見出し画像は、この赤猪岩神社の伝説を基にしている。
私の小説では独自の解釈で、猪に見立てられた焼いた大岩が八十神とオオナムチノカミの神気を受けて本当に猪になってストーリーが展開する。
興味がおありなら『因幡の白兎、神となり社に鎮座するまでの物語』1でお読みいただければ、猪が泣いている理由がおわかりになるだろう。
赤猪岩神社
御祭神 大国主神
素戔嗚尊
刺國若姫命(大国主神の母神)
稲田姫命(素戔嗚尊の妻)
御神徳 蘇生 再生 復興
医療と看護発祥の地とも呼ばれる
住所 鳥取県西伯郡南部町寺内232