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遠距離介護予備軍の人たちへ 親が動けるうちに準備したいこと

母の頃から始まって、その死後の始末をし、今は父の世話で、気がつけば飛行機の距離で遠距離介護10年を超えていた。

私の友人は、方向は違うがやはり飛行機の距離でもっと過酷な遠距離介護をしていたから、私ごときが愚痴や泣き言を言うのはおこがましいと自戒していたものの、昨年秋にはついに爆発することになった。

それでも何とか昨年今年とやり過ごし、10月は2度、父の退院・施設入り、お役所手続きの命令で行きたくないが行き、身体も疲れたがそれ以上に精神的に疲労困憊して、まだ復活できない。

泣き言はそのうちに具体例を挙げて並べるだろうが、その前に私の轍は踏まないようにというつもりで、これから遠距離介護をしそうな予備軍の人たちに、私自身の苦い経験からいくつかまとめてみたい。

自分がどこに住んでいるか、親の居住地は、などにより事情が違うし、おまけに決して良くならず悪い方へと制度やお役所の掟がコロコロ変わっているから、必ずしもあなたにはあてはまらないかもしれない。

ただ何かの参考にはなるかもしれないし、前もって予備知識を頭に入れておいた方が、少しはましだ。

私自身、時間を遡れるなら、過去の自分に伝えておきたいことだ。

前提としては、

・当人は東京在住

・老親は飛行機の距離で地方在住

・独り身で家族はいないし、兄弟もおらず、親族はほとんど死に絶えているため、すべて一人でこなす

である。

まだ親が杖を頼りにであっても動けるうちに、またはあなたが車椅子を押して連れて行ける間に、しておきたいことをざっくりまとめてみよう。

あらかじめ準備しておけば、私のような役所の窓口で泣きわめくほどに追い詰められる事態は、いくらかは避けられるかもしれない。

真面目に、よく自殺しなかったものだと我ながら感心しているほど、強いられることは山積みだ。


1 親のマイナンバーカードと自分のマイナンバーカードを作っておく

個人的には総務省もマイナンバーを発案した人間も、「このためにどれだけ苦しめられたか、わかるのか!」と生き霊になって祟り殺したいほど憎んでいるが、現実にはこの両者が必要になる。

親が動けなくなり、様々な役所関連の気が狂いそうなほど山積みの手続きをする際に、必ず必要になる最低限の証明書が以下の三点セットだ。

「介護され、代理人として子を指名した親の写真付き身分証明書」

「代理人として窓口に来た子の写真付き身分証明書」

「両者の関係を証明する公的書類=住民票や戸籍謄本」

親の身分証明書は運転免許証があればと思うかもしれないが、いつかは運転できなくなり、期日が切れてしまう。

親が自分で返納してその証明書をもらってくれれば問題ないが、現実にはその頃には身体が上手く動かず億劫になり、「そのうちに」で気がつけば要介護になっているケースが、うちの親だけではなく周囲にも非常に多い。

ましてや最初から免許を持っていなければ、証明書はない。

パスポートは住所の証明にならず、場合によっては使えないこともあるから、マイナンバーカードが確実だ。

しかも、これの受け取りが非常にやっかいで、以前は面倒でも必要書類を揃えて代理で子が取りに行けたが、今は「必ずご本人が窓口へ来てください。顔を見て確認します」に切り替わっている。

もちろん郵送はしてくれない。

先月はるばる出かけた用事の一つが、父のマイナンバーカードの受け取りだった。

今年の1月に私が親の家に行った際に、スマホで写真を撮り申請し、ヘルパーさんに付き添いが出来るかどうかを確認した上で、父に「役所から『できました』とはがきが来たら、介護タクシーを頼み、ヘルパーさんに依頼して、この封筒の書類を持って、車椅子を押してもらって行きなさいね」と言い含め、父は「わかった」と快諾。

ところが2月にカードできあがり、ヘルパーさんが来てくれる日程を調整してというところで、家の中で歩行器が転倒して転んで骨折。

長期入院となってしまい、私が父の地元の役所へ電話で問い合わせ、マイナンバーカードは役所で保管。

その後新型コロナで動けず、ようやく10月に入り、施設入りの準備もあるため親の家へ行くことになり、ついでにマイナンバーカードも受けとろうということになった。

2月に役所に確かめた時は、代理人でも最低限の証明書がそろっていればOKだったのに、わずか8ヶ月で「本人が来なければダメ」となり、延々と電話で交渉し、マイナンバーカードができたというお知らせの葉書、保険証三種類、年金手帳、有効期限の切れた住基カードと免許証、父親の名義の預金通帳、印鑑、代理人としての私のマイナンバーカード、パスポート、印鑑、両者の関係を証明する住民票を用意して、窓口で延々と何枚も書類を書かされ、長い間待たされ、ようやく受け取れたのだった。

それでもこの先、どんな手続きで父のマイナンバーカードが必要になるかわからないので、何とか入手した。

親自身が動けるうちに、必ずマイナンバーカードは作らせておくことを強くお勧めする。

また自分のマイナンバーカードも、遠距離介護の必需品だ。

私も、周囲で遠距離介護をしている知人友人も、遠距離にいつお亡くなりになっても不思議ではない高齢の家族がいる人も、早い時期にマイナンバーカードを作ってある。

これがあれば、行った先のコンビニで自分の住民票や印鑑証明が取れるからだ。

その自治体によっては、戸籍謄本にも対応している。

夜中に連絡が来て、早朝に駅や空港へ急ぐことなど珍しくない。

危篤は土日にでもなる。

しかも、あらかじめ住民票などを取得していても、「発行から三ヶ月以内」でなければ証明書として認められない。

忌々しいが、マイナンバーカードが必要なのは、こういう事情だ。

ちなみに、今回父のマイナンバーカードを取りに行ったとき、私の写真付き身分証明書をマイナンバーカードに加えてもう一つ要求されたのには驚いた。

運転免許は持っていない。

幸いパスポートがあったので二通目の写真付き証明書になったが、もし期限切れになっていたらと思うとぞっとする。

以前にはこんなことはなかったが、今年に入ってから証明書関連がやたらに厳しくなっている。

最低限、親・自分のマイナンバーカードは自衛のために作っておくことをお勧めする。


2 親の年金、保険証を確認する

高齢になると保険証の種類が変わってくる。

これは人によって違うから、必ず確認しておくこと。

年金がいくら入っているのかも訊いておく。

年金額によっては、同じ保険証でも1割負担、2割負担、3割負担など、受けられる介護サービスは同じなのに負担金が変わってくる。

これもしっかり押さえておかないと、将来施設に入居するときや介護度が上がってサービスが変わるときに、予算が大幅に狂うことになりかねない。

そして、介護は親の年金と預貯金の枠内でするように心がけよう。

特に最初のうちは、いくら公的に補助があっても家のリフォームなどで持ち出しが多くなりがちだ。

その後はできるだけ節約を心がけたい。

介護の厄介な点は、「いつ終わるかわからない」ことだ。

最初にあれもこれもと出費がかさむと、後々介護費用が足りなくなって子が被ることになりかねない。

「月二千円くらいなら、負担するわ~」などという考えは禁物だ。

親はこれからますます年を取り、同時に医療費、入院費、介護費が膨らんでいく。

最初は二千円の負担が、後々には五千円、一万円、十万円と増えることはあっても減ることはない。

必要なリフォームや歩行器などの必要なものは揃えなければ日常生活が危険だが、まず月々の予算を組み、その中におさまるように考えないと経済破綻が押し寄せてくるから、よく考えよう。


3 親の病歴、現在かかっている持病と病院を知っておく

遠方にいると知らないうちに持病が増えていたり、通院回数が変わっていることがある。

病名とかかりつけの病院(一つとはかぎらず複数の場合も多い)、薬局は知っておかないと、例えば難病認定が受けられて医療費が安くなる可能性も出てくるので、把握しておきたい。

また、これは実際に経験したことだが、それまでかかっていた病院がとんでもないところだとわかり、どさくさ紛れに転院する場合、変える病院、そのまま継続する病院の判断を即座にするためにも、病気や怪我については理解しておこう。


4 親の住む地域のバス・電車などの交通網、タクシーの電話番号、役所関連の位置を調べておく

東京は便利だ。いくら遠いと言っても、公共交通で頻繁に移動できる。

だが、地方はそうはいかない。

市・区役所、保健所、福祉の相談場所は必ず、できれば年金事務所、税務署などの所在地もあらかじめ調べておき、どのようなルートで行くのかは知っておこう。

運転免許を持っていて、親の家に自由に使える車があるなら別だが、地方の公共交通はかなり不便だ。

しかも遠距離介護の場合、買い物を含めて、短期の制限期間のうちに役所から「何の意味があるのか?」とキレそうなムダな書類をあれもこれも押しつけられるのがお約束だ。

だが、バスが一時間、もしくは二時間に一本しかない場合、限られた滞在期間のうちにお役所が要求する大量の書類整理や、親に頼まれる日常品の買い物などをこなすためには、足が必要になる。

節約は大事だが、この移動に関してはタクシー代などを惜しまずに動いた方がよい。

バスの時間に間に合えば使い、そうでなければあらかじめ地元でできるだけ評判の良いタクシー会社を親に訊いておき、スマホなどに電話番号を登録しておき活用しよう。

もし近所で乗せてくれる人がいたら、有り難くお願いしよう。

もちろんガソリン代などの謝礼は忘れずに。


5 助けてくれる人には感謝してお願いしよう

これは介護準備というよりも、実際に介護を初めてからのことだが、付け加えておいた。

「申し訳ないから」「悪いから」という気持ちは大事だが、一人では限度がある。

ご近所で手助けしようと言ってくださる人がいれば、その人の負担にならない程度でお願いしよう。

最初から頼める兄弟や親戚がいれば、一人で過酷な遠距離介護などはしていない。

むしろ他人様の心の方が、ずっとあたたかい場合がある。

私がそうだ。

申し訳ないと思って最初はご遠慮していたが、もうどうにもならない時にはとうとうお願いし、今回もずいぶん助けていただいた。

幼児期からの幼なじみや小学校からの同級生だったということもあるが、本当に有り難かった。


思いつくままに書いたが、介護は同居、近距離、遠距離、共通してたいへんな部分と、それぞれの立場ゆえにたいへんな部分とがある。

私は遠距離のケースで自分の経験からざっくり書いたが、どれも楽な介護などない。

しかも、一人で暮らし、自分の生活費を稼ぎ、自分の生活を成り立たせ、その上で親の遠距離介護は、一人で何人分もの役割をこなさなければならない。

「自分の健康が~」だの「生活を第一に~」だのとは、したことがないから言えることで、実際には自分の生活を圧迫される。

それでも「自分の健康と生活が最優先」というフレーズは、できるだけ思い出した方がよい。

長期戦を覚悟して、できるだけ公共サービスを利用し、迷惑にならない程度に他人様の力も借りてこなすしかない。


「苦労は買ってでもせよ」という人間がいたら、今も抱えている私のを、まとめて売りつけたいわ💢








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