白うさぎに導かれ、いにしえの神々に会いにゆく第一章 心優しい神と因幡の白兎の物語 紀行編1-2 賣沼神社
紀行編 1-2 賣沼神社
因幡の白兎にまつわる白兎神社は何度も訪れることになったものの、白兎がオオナムチノカミに結婚を予言したヤカミヒメを祀る賣沼神社へはなかなかお詣りに行けなかった。
存在は知っていたし行きたいと思っていたのだが、交通手段がわからなかったからだ。
やがて思いがけないチャンスがやってきた。
山の白兎神社である福本白兎神社へ行くことができ、そこからさらに足を伸ばして賣沼神社へ参拝できたのだ。
因幡の白兎とは異なる山の白兎神伝承と福本白兎神社、そして山の白兎神と関わりが深い成田山青龍寺については別の章で詳しく述べよう。
「どうして呼ぶのよ!」と怒りながらのイヤイヤ参拝が多い中で、福本白兎神社と賣沼神社は私自身が行きたくて行った数少ない神社だ。
山の白兎神とはいえ海の白兎神と白兎同士で連絡済みだったのか、ようやくヤカミヒメにお詣りに行けたのだった。
賣沼神社へは公共の交通機関では行けない。
タクシー利用一択だった。
福本白兎神社、青龍寺を参拝した後に、JR郡家駅からタクシーで賣沼神社へ向かった。
駐車場から進むと公園になっていて、入り口にはオオクニヌシノミコトとヤカミヒメの像がある。
清らかな小川を背にしたこじんまりしたお社は、いかにも清楚な美しい女神様が穏やかに鎮座している様を表しているようだった。
車でなければ行きにくい場所なのだが、それでも頑張ってお詣りに来てよかったと思った。
多くの寺社を回り、力強く尊い神社をたくさんお詣りさせていただいたが、個人的に好きな神社の一社だ。
夕方に近い時間だったにもかかわらず青空がさえわたる日で、「ようやく来てくれましたね」と微笑みかけてくださっているようだった。
「はい、お詣りできて嬉しいです」と心の中でつぶやいた。
入り口近くにある社務所らしい建物は土日だけ開くらしく、御朱印などは役場でいただくと張り紙がしてあった。
汽車の時間があるので役場へ行く時間はなく、参拝を済ませた後はゆっくりとその場で深呼吸をしながら周囲の風景を眺めていた。
日本の原点とでも言えそうな穏やかな田園風景と点在する家々、さらさらと流れる小川、小さいが手入れの行き届いたお社。
地元の人々に大切にされているのだろう。
オオクニヌシノミコトやスサノオノミコトやイザナミノミコトやコトシロヌシノカミを祀る神社の圧倒的に強い神気とは全く異なり、魂に染み渡るような優しい神気の神社。
場所が場所だけに行くのがたいへんなのだが、できることなら何度でも訪れたい大好きな神社だ。
帰りは郡家駅に戻って汽車で、二回目にお詣りしたときはそのままタクシーで鳥取駅まで行った。
どちらにせよ交通費がかかることを覚悟せねばならない。
賣沼神社
ご祭神 八上比売
明治元年に合祀 イザナギノミコト
保食神
建御名方神
タカオカミ クラオカミ
御神徳 縁結び
住所
鳥取県鳥取市河原町曳田