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なんでもいいから読んでくれ

僕には文章を書き続け、表現する才能がない。
そう気が付いたのは高校一年生の頃で、コンクールに入賞した知り合いの子の作品を読んだ時だった。
美しくなめらかな表現に読みやすく理解しやすい構成、そして独特で嫌みのない言葉遣い。
商業作品を多く(その時点で500冊は読んでいたし再読もしていた)読んだ僕には、それが商業とそん色ないクオリティであるように思えた。

僕は小学校のころから小説を書いていた。他愛もないファンタジーだが、その時点では僕より書ける同学年の子は少なく、自分が一番文章において優れているのだと錯覚していた。中学では生徒会選挙に出る子を応援する文章も書いたし、小説家になろうでも底辺の成績ながら投稿を始めた。

もちろん国語だけはできたし、作文やスピーチコンテストで誰かに後れを取ったこともなかった。僕は原稿用紙の上の王者だった。

僕は、自分はかならず小説家になるのだと思っていたし、実際そのように人生設計して動いていたので、高校受験もろくに勉強していなかった。生来のろくでなしなのだ。

だが子供の妄想は、いつか消え去るものだ。

高校に入り僕は、自分では指一本も到達できないような素晴らしい文章を書く人たち(僕より優れた人は複数いた)と出会い、挫折した。
奮起して小説に一層熱が入るなんてこともなく、僕はだらだらと週に一回小説を書くか書かないかの自堕落な日々を送っていた。

思い返せば後悔ばかり募る。
自分より優れた書き手がいるのなら、教えてもらえばよかった。
ちっぽけなプライドと自尊心が、ただでさえ才能の無い僕の努力を阻害した。

小説家になろうに投稿した作品は飽きて途中で連載をぶん投げたし、そもそもいくら文章を書こうが意味がない気がしていた。書かなければ上達することもないというのに。

不出来な短編や、事前に調査もしていないシリアスな中編を書いては、他人の承認で自分の文章が肯定されるのを待つ日々が続いた。
文章を書くのは、訓練すれば誰でもできるというのに。
クオリティの高い小説を書くための努力から逃げ、僕は「小説を書く」事そのものを目的としていた。十万文字書いたって駄作は駄作なのに。

ある時、知り合いの中で一番文章が素敵な子が、ぽつりと言っているのを耳にした。

「文章を書くときは苦しいから、泣きながら書くこともあるよ」

家に帰ってすぐ、僕は無意識に拳を壁に叩きつけていた。
その感受性と文章に対する真摯さを持ちながら、何を泣くことがあるだろうか。たとえあなたが適当に文章を書いても、きっと僕のより出来はいい。

嫉妬した。しかし憎悪はできなかった。
あの人たちの文章は文句なく素晴らしくて、いいがかりや負の感情ですら芸術の前には無力だった。

僕にだって意地はある。書いている作品のキャラクターはどうしようもない悪役でも全員大好きだし、面白いものを作ろうとして書き始め、表現を模索して最高の小説にしようと努力もしている。

だが、足りないのだ。こんな努力では、天才には遠く及ばない。
一日最低六千字を、内容や誤字脱字などのミスなく、クオリティを維持して書き続けられるくらいにはならなければ、勝負の土俵にすら立てない。

僕は今、三時間で二千字、それも下書きのようなクオリティの文章が精いっぱいだ。必要なのは努力、そして天才すら超える狂気的な没頭なのだと思う。

だから僕はずっと小説を書き続けている。
才能が無くても、好きなものを仕事にして生きていたいのだ。
小説がうまく書けないのなら、僕の人生の大半は意味を失ってしまう。

娯楽なら、他にいくらでもあるだろう。
ゲームやスポーツみたいに、競技性や創造性があるものだって多く存在する。
でも僕は、あえて小説という選択肢をとる。

それは、物語が好きだからだ。
物語に、心を救われた経験があるからだ。

今、まだ挫折を引きずっているのは否めない。

その事は笑ってほしい。
そしてできれば、読者の方には僕みたいにならないで真っすぐ生きてほしい。

僕も笑顔で前を向いて歩けるように、小説を頑張って書くから。
才能が無くても、努力が続かなくても。
お互いぼちぼち頑張って、人生うまくやっていきましょう。



p.s.

僕は承認欲求の塊です。なぜなら、物語の面白さは読者が決めるから。

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自作(なろうとpixiv、pixivのほうはr18)を一応宣伝しておきます。無理に読む必要はありませんが、ここまで読んでいただいて「読んでみてもいいかな」と思った方はお暇なときにでも読んでいただけると嬉しいです。

読んでいただきありがとうございました。
面白かったら評価をいただけると励みになります。

それでは、読者の皆さんの人生に幸あれ。


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