夜は黒
夜は嫌いだ。
何もかもが静かで、少しずつ黒の世界に魂が吸い込まれる感覚があるからだ。
夜になると思う、この世界は本当は、ブラックホールの中で、限りなく広がる宇宙に地球だけが存在していて、そして人はそれを知らずに生きていると。
真っ暗なブラックホールに包まれた世界はゆっくりとゆっくりと時間の進みも歩く速度も遅くなって、いつか全てが止まったように見える。
そんな世界が今おきていて、その中で自分だけが正常なおかしな世界に取り残された気分になる。
なぜ誰もブラックホールに吸い込まれていることに気づかない。
そう思いながら大声を張るけど、私の声は黒に吸い込まれて誰にも届かず消えていく。
夜になると黒が動き出す。
昼間や白の世界だから暗い奥のそこで黒は息を潜めている。
夜になると自分の出番と言い張りながらゆっくりと走ってやってくる。
少しずつ確実にじわじわと白を侵食していく。
だけど、それに誰も気づかない。
身も知らぬ恐怖に自分だけが恐れている。
今日もゆっくりとブラックホールの黒に飲み込まれていく。
夜はあけない。