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【航海日誌】Chaatl村遠征(8/23-24:撤退)

「ハイダグワイを、カヤックで旅をする」ということを掲げ、動き始めて半年。初めてカナダでのソロ・カヤックツーリングを敢行しました。

目的地はChaatl村。グラハム島南部に位置するダージン・ギーツ村から片道40キロほど、無人島Chaatl島にかつて存在したハイダ族の村跡です。モスキート・ポールと呼ばれるトーテムポールが非常に良い状態で残っているとのこと。現地でのカヤックに詳しい人々に話を聞き、二泊三日のツーリングの目的地に設定しました。

結果としては、一泊二日で撤退する判断を下しました。一日目でほぼ中間の位置であるEast Narrowsまで到達し、二日目で行こうと思えば行けたのですが、さまざまな準備不足と知識不足を痛感したため大事をとった形です。本来ならChaatl村まで辿り着き、神秘的なポールの写真をことばとともに共有したかったのですが、、

行程

予定行程
8/23
10:00 家を出発 Masset→Daajin Giids
12:00 出艇:Kagan Bay
16:00 East Narrows 通過
19:00 キャンプ地到着:Downie Island→設営・夕食
21:30 気象→就寝

8/24
5:00 起床→気象
6:00 朝食、撤収
7:00 出艇:Downie Island
9:00 Chaatl Narrows 通過
13:00 到着:Chaatl Village→昼食・撮影
15:00 出艇:Chaatl Village
17:00 Chaatl Narrows 通過
19:00 キャンプ地到着:Government Creek→設営・夕食
21:30 気象→就寝

8/25
5:00 起床→気象
6:00 朝食、撤収
6:30 出艇:Government Creek
10:00 East Narrows 通過
12:00 到着:Sandiland Island→昼食
13:00 出艇:Sandiland Island
15:00 行程終了:Kagan Bay

実際の行程
8/23
11:30 家を出発 Masset→Daajin Giids
14:30 出艇:Kagan Bay
15:40 Tree Island 通過
16:10 休息:Sandiland Island 対岸
17:10 East Narrows Head 通過
18:10 McLellan Point 通過
18:30 キャンプ地到着:Trounce Inlet対岸→設営・夕食
21:30 気象→就寝
行動時間:4時間 航行距離:21.6km

8/24
5:00 起床→起床(撤退判断)
6:50 朝食、撤収
8:30 出艇:Trounce Inlet対岸
10:30 East Narrows Head 通過
11:35 到着:Sandiland Island→昼食
13:30 出艇:Sandiland Island
14:50 行程終了:Kagan Bay
行動時間:4時間25分 航行距離:21.6km

概念図

航海日誌

8/23(水) 20:25記載

昨日までの頭痛は十一時間睡眠で復活、八時起床。タロンは朝早くから仕事へ。昨日から家に遊びに来ているコディーがサーモンクリームチーズベーグルを朝ごはんに用意してくれる。スイートなナイスガイである。オートミールも流し込んでふくふくな朝ごはんを決め込み、今日出発することを決める。カヤックをひとりでなんとか「死ぬまで18歳」号に載せ、ドライバッグ4つに三日間分の食料を詰め込む。

食料:
日清 函館塩ラーメン(バンクーバーで買ったもの)2パック
白米 3号
オートミール 2食分
スモークサーモン 2缶
パン 5切れ
クッキー 4つ

家の台所にあったものをかき集め、それっぽい食料を調達。三日間、決して多くはないが足りはするだろう(足らなくなる)。ちゃんと前日までにパッキングできればよかったが寝込んでしまっていたので出発時間がずれ込む。サングラスも一度忘れて取りに帰る。

スタート地点のキャンプ場にたどり着いたのが14時。水場のないキャンプ場で、MSRのウォーターバッグを満タンにはできない状態で出発することになる。3リットル強はあるので、今日一日は足りるだろう。車からカヤックを降ろし、引き潮の海岸まで持っていくのが一苦労。前後のハッチにドライバッグを詰め込み、出艇。14:30。

Lina Islandの陰をでてから、南東の風が強く吹き込んでくる。Windy(気象アプリ)では弱い北の風を指していたので不本意である。モレスビー北部かMaude Islandからの吹き下ろしだろうか。上げ潮とも相まって嫌な波が立っている。幸い小さな島の多いKagan Bayなので、島陰で一息つきながら一気に漕ぎ抜ける。

島陰でひとやすみ

Kagan Bayを抜ける。さっきまでの風はやはりMaude Islandから吹き下ろしていたのか、湾を抜けると一気にベタ凪になる。風がなければこんなにも漕ぎやすく、こんなにも暑いのか、、1回目の休憩をSandiland Islandの向かい岸の小さな砂浜で取る。16:10。キャラメルクッキーが身に染みる。少し散策すると錆びて朽ち果てた機械の跡がある。昔の林業の工具なのだろうか。この段階でDownie Islandまでの到達を諦め、East Narrowsを超えたところでキャンプすることにする。今日の満潮は18:34。海図によると、上げ潮の時間だとEast Narrowsは潮流に乗って楽に抜けられるはずだ。West Narrowsは潮流の向きが逆のようなので、とりあえずはEast Narrows通過を目指そう。

East Narrowsの始まりを標すポッドを17:10に通過。遠くにEast Narrowsの一番狭い=一番潮流が早いポイント、McLellan Pointが見える。本当に狭そうだ。地図にはそこを超えてすぐクリークがあるようだ。そこをキャンプ地にしよう。

McLellan Pointまで残り4キロの地点から、本格的に潮流を感じ始める。18:10、McLellan Point通過。満潮まであと二十分なのにも関わらず、なかなか流れの早い。写真を撮っていたらカヤックを180度回転させられてしまった。とはいえ、潮流にのってしまえば簡単に通過できる。

18:30、キャンプ地着。カヤックを海岸からすぐの森にあげ、少し奥にテントを立てる。スリーピングマットがいらないぐらいに苔でふかふか。熟睡できそうだ。

近くにクマの糞があって慄いた

晩御飯は塩ラーメンをゆでてスモークサーモンの缶詰をぶちこむ。超簡単かつ贅沢な男メシである。ご飯を終えてクリークで水を汲もうかと思いMSRの浄水器とウォーターバッグをもって森に分け入るが、いくらあるいてもクリークらしきものは見つからない。漕いでいて川らしきものも一度も見なかった。水はどこへ行ってしまったのだろうか?

Sotoさんよりご支援いただいたガソリンストーブ「ストームブレイカー」
使い勝手も良く火力も抜群。良い相棒になりそうだ。

今日は21kmちょい。14:30→18:30の四時間行程、時速は5キロちょい。悪くはない。もっと日誌も書けることがありそうだが、モスキートとノーシーアムがとても不快なのでシュラフに潜り込むことにする。ヘッドライトの電池が切れかけていることに気づき、予備もないことに頭を抱える。基本だろ

8/24(木) 5:45記載

五時起床。真っ暗、六時の出発は諦める。ヘッドライトが使えないのは本当に不覚であり、iPhoneの心許ない灯でこれを書いている。小さい明かりの中では今の食料も水もとても心許無く思えてくる。水源はいまだ見つからないし、ソロツーリングのエネルギー消費量を舐めていたようで、このままではお腹いっぱい食べられそうにない。今回は下見ということにして、引き返す方が安心な気がするな。かっこつけて無理して遭難してしまうより、今回の学びを活かして自信を持って到達し、撮影できた方がいいかもしれない。

8/24(木) 15:15記載

六時過ぎにテントから出る。もう日の出はだいぶ遅くなってきているようだ。ドライバッグにギアを詰め込み、テントを撤収する。四年前に木曽駒ヶ岳に行ったときに買ったNaturehikeの格安テント、いまでもgoing strong。目を瞑ってでも立てられる。水の残量的に、今日昼過ぎくらいまでは持ちそうだ。最後の塩ラーメンをゆでて朝ご飯にする。オートミールを朝ご飯にする予定だったが、それらは行動食にすることとする。朝ごはんは簡単でがっつけるものがいい。撤収し、湿ったウェットスーツ(ロングジョンズ)を着る。冷たくて本当に不快。やっぱりドライスーツのほうがいいのかな、、

出艇、8:30。7:47の満潮を境にEast Narrowsからは帰り道方向に流れ出すはずなのに、いまだ上げ潮の方向に流れている。おかしい。そこまで強くないにしろ、漕ぐ手を止めると一気に流れてしまう。ルークも言っていたけれど、このあたりのNarrowsでは潮汐の大きさによってどのあたりで潮目ができるかは大幅に変わるようだ。海図の情報がすべてではない。岸にはブラック・ベアがひとりで歩いている。あまり刺激しないように遠くから一枚撮影。

10:30、East Narrowsの入口を通過。二時間で7km。潮に乗って楽チンだろうとタカを括っていたこともあり、ずっと逆の潮流を漕ぐのは堪えた。ようやく潮流は落ち着いてくる。ずっと海岸近くを漕いで、クリークサインのところに立ち寄ってみるがぜんぜん水が流れていない。ここ一週間くらい雨が降っていないからだろうか?(ハイダグワイでは極めて稀)

Sandiland Islandに到着、11:35。ルークのおすすめのキャンプスポット。コックピットからでてストレッチをする。ウェットスーツが本当に不快。ドライスーツ、なかなか高額な投資になるけど必要なのかもしれない。見たところ、初日に荒れていたKagan Bayは落ち着いてそうだ。昼ごはんにはスモークサーモンの炊き込みご飯、二号分。撤退時あるある、撤退決定以降のご飯が豪華になる。やまけん一年のときのプレ夏、中央アルプスを三日目で撤退した時の晩餐はすごかったな、と思い出す。13:30、再度出艇。

やはりKagan Bayに入ったあたりから南東の風が強くなる。まだ13時代なのでそこまでは強くないが、うっすら波が立ち始めている。カヤックの横腹に平行にあたる嫌な波だ。とはいえ一度経験済みなので、例の如く島々を繋ぎながら湾を渡っていく。心地よくパドリングできる。しっかり食べるというのは大切である。天気は最高、スリーピング・ビューティもよく見える。

14:45、Kagan Bay到着。とりあえず学びの多すぎるツーリングだった。コーラが飲みたい。

収穫ポイント

ソロ時の消費エネルギー・準備時間の体感

今回、事前計画、家からの運転、カヤックの運搬から食事準備まですべてを自分で行う初めてのツーリングだった。思ったよりソロでのカヤックは漕いでいる時以外の時間(カヤックの昇降作業、設営撤収など)が誰かと一緒にツーリングに出かける時の倍ほどかかるということ、そして自分はツーリング時いつもにも増してたくさん食べるということを確認できた。

事前パッキング・持ち物チェック

前日に偏頭痛で少し体調を崩しており、当日までパッキングできていなかった。そのため、予備バッテリーを忘れたり食料計画に考えが及ばなかったりなどした。チェックリスト、前日・当日のフローを明確にし、自信をもってツーリングに出かけられるようにしたい。

水リソースの確保

ハイダグワイで水不足になることなんてない、とみな口を揃えていうので、歩いていればクリークに出会うと勝手に思っていた。が、海図にのっている情報から辿ってもなかなかフレッシュウォーターを見つけることができなかった。現地でのカヤック経験が豊富な人やルークに水資源の探し方を聞く。

***

撤退になったとはいえ、残り短い今シーズンの目標が明確になった良い初ハイダグワイツーリングでした。やはりデイツーリングを10回やるより、キャンプツーリングを1回こなすほうが学びは本当に多いです。九月末までに、今回のChaatlをリベンジ、モレスビー島のLouise島周回を目指し、研鑽を積みます。

楽しかった〜〜!

***

🏝️カナダ最果ての地、ハイダグワイに移住しました。

移住日記は以下のマガジンからどうぞ。

📚写真集を出版しました。

🖋イラストを描いています。

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上村幸平|kohei uemura
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