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大関をたった14場所で陥落した男⑥大部屋からの脱出  付き人・駿馬の存在

とはいえ、入門3年目の照ノ富士は、大所帯の中では下っ端。
移籍直後の番付は幕下10枚目だが、「若い衆」でいる間は入門年がモノを言う。
30畳の大部屋に、20人程の力士が生活するこの部屋で、最初に与えられた寝床は、炊事場のすぐ横、最も居心地の悪いスペースだった。
「早く関取になって個室貰うぞ! そう思って頑張った」

有言実行の照ノ富士は、移籍直後の2場所を、いずれも6勝1敗の好成績で終え、9月には十両に昇進。晴れて個室を手に入れた。同時に、駿馬が照ノ富士の付き人となった。


「間垣の時、駿馬さんから『ガナは関取になるんだから、その時に付き人の仕事を知らないと困るでしょ』と言われ、付き人の仕事も教えてもらった」
その駿馬が自分の付き人になったことは、とても心強かった。強い照ノ富士をさらに強くした。
「荷物を運ばせたりしない。大事なことしかさせないよ。お金の管理も全部駿馬さんに任せてある」
場所中は参謀役となり、花道で相手の特徴を伝える。私生活で行き過ぎた行動があれば、臆せずに注意する。相撲のことも普段の生活のことも、信頼できる駿馬のおかげで成り立っている。
最近の大事な相談事は何かと尋ねると、
「辞める相談かな(笑)。こういうのは正直な方がいいでしょ」
と、こちらが苦笑いする変化球を返してきた。明るく話す裏には忘れられない痛みを抱えているようにも見えた。 (つづく)

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(本記事は、(株)宣伝会議が主催する教育講座「編集・ライター養成講座」の卒業制作として提出した記事から掲載しています)

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