聞くこと
インタビュー記事や、イベントの報告記事を読んで、心動かされた時にいつも思う。私が知りたかったことを上手に伝えてくれてありがとう、と。
本当に心動かされる記事に会った時は、どうやったら、こんなに伝わってくるのかと深く感心する。それは、自分が同じようにできなかったからだ。
これまでの私は、自分が見聞を広げたい、知識を得たいと思って他人の講演を聞いたりイベントに参加したりしても、そこで知り得たことを周りに伝えることが苦手だった。決して報告書が上手に作れないわけではなく、ちゃんと聞いたり、体感したりしたつもりなのに、書く段になるとなにかが足りないのだ。実の内容を知らない人が読んだら、それなりの報告書かもしれないが、参加した当事者である私が納得のいかない内容なのだ。
編集・ライター養成講座に通って、その答えが少しだけわかった。
ここから書くことは、あくまで私の場合のおはなし。
自分ではない誰かに、相手の思いや熱の強さを伝えるために聞くことと、自分の欲求を満たすために聞くことと、では、同じ聞き方をしていてはいけないということだ。
ひとつは、心構え。
対象が自分の興味が大きなものであればあるほど、そのことを意識して聞く。自分の熱量を全く出さないわけではない。事前準備の段階から、熱があるからこそ聞きたいことと、自分の興味とは別に聞かなくてはならないことを整理する。インタビューなら、尚更のそれを意識して、「自分は今目の前のインタビュイーに夢中になりすぎている、もっと落ち着け!」と言い聞かせ、意識して低めのテンションを維持する。たとえそうしても、熱さは漏れているだろうから、相手に対して冷淡な印象を与えることはまずない。
インタビューではなくイベント報告でも同じだ。自分が浮足立つほど楽しい気持ちを意識して抑える。私は冷静にこの楽しいイベントを観察しているんだ、と思い込むようにする。
そして、聞き方。
単に自分の知識欲を満たすためなら、楽しみながら聞いてしまうことになる。しかし、誰かに伝えるために聞くならば、伝えるときにどんな表現を選ぶのか、どんなテンションで伝えるのかを考えながら丁寧に聞く。
たとえ、予想していたことと全然違うコメントが帰ってきたとしても、動じてはならない。もしかしたら相手は答えにくいかもしれないということも、丁寧に静かに聞く。自分の質問が相手にうまく伝わっているかどうか、常に細心の注意を払う。
セミナーや講演会でも同じ。自分の知識欲を満たせることへの喜びを極力抑えて聞く。えーそうだったんだ! なんていう感情がいちいち出てくると、それにまつわる背景を想像したりなんかして、その次に語られる大事なことを聞き逃すことにつながる。
卒業制作のインタビューを経て、というか、まさにこのインタビュー中に、私は上記のことに気付き、自分を軌道修正していた。ボイスレコーダーに残された2時間の記録を聞きなおすと、最初と最後では自分のテンションがまるで違っているから面白い。インタビュー始まった直後の、自分の緊張と熱の入り方は、今聞いても恥ずかしくて笑える。でも、あの2時間という、私にとってはとても長いインタビューのおかげで、それ以降セミナーやインタビュー(ライターとしてではなく企画担当としてのおまけ参加だけど)での話の聞き方が変わった。
インタビューが熱すぎると、文章で冷静な分析がしにくいけれど、インタビューが冷静にできれば、文章では緩急をつけられる気がする。
いま、オウンドメディアの過去記事を全部チェックしなおす、という作業をしているが、200本以上記事を読むと、だんだん、上手い記事、下手な記事がわかるようになってきた。最初の頃は遠慮がちに修正指示をしたり削除要請を出していたが、だんだん容赦なくその判定をくだしている自分がいる。はっきり言って、この「あげあし取り」を繰り返す仕事自体は好きではないし、くそおもんない。けれど、良い文章、悪い文章含めて、文字を読むことを強制的にでもさせてもらえる環境はありがたい。きっと自分が何かを文章で表現するときにこの経験は役に立つはず…
同僚から、外に頼んでいた記事を内製化して、あなたがインタビュアーになってライティングしたらどうかしら(オウンドメディア編集担当の傍らで)、と言われたが、今は断りたい。
仕事として、限られた納期に文章を納品できる気がしないからだ。磨きに磨きをかけて全然完ぺきではないけれどこれ以上はどうしようもありません、という状況になるまでどれほどの体力を使うか想像したら、なにかの片手間にライティングをすることはできない気がした。卒業制作は構想から納品までまる2か月以上あったのに、あの程度。それなのにだいぶ憔悴していた…
養成講座のしょっぱなでは、副業ライターなんて素敵~♪なんて思ってた時もあったが、そんな甘いものでもないな。書きたい気持ちは、ここで書くことで折り合いをつけていこうと思う。
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