【人工内耳】2.大学病院へ
クリニックからの紹介状を携え、人工内耳手術が受けられる大学病院へ。
小学校入学時の健診で難聴が判明してから病院を転々とし、最後に来たのがこの病院だった。当時の診察券を母が残しておいてくれたお陰で、何も手続きすることなくスムーズに診察を受けられることに。診察表を印刷すると、小学生の時にここで診察を受けた日付が残されていた。母えらい。この初診日がのちに年金手続きをするうえで非常に大切な記録となる。
何十年ぶりかに訪れたのだけど、近年全面建て替えしたので何もかも変わってしまい、違う病院へ来たような感覚。診察待ちで呼ばれたのが分からず、先生自らドアを開けて名前を呼ばれた。電子版に番号が表示されていることに後で気付く。部屋に入ると、私のカルテを見た先生が少し考えてから椅子をひいてぐっと近付いてきた。
「この距離なら聞こえる?」
そうか、距離が必要だったのか。先生のは話し方は大きな声を出すわけでもなく普通だった。遠くの音が聞こえにくくなっているんだから、距離を詰めれば聞こえやすくなるのだとこの時初めて気が付いた。難聴者の聞こえの特性をわかっているのだ。
先生が自分のノートパソコンを取り出して、講義で使用していると思われる人工内耳の説明動画を見せてくれた。私の耳は外道道を出たところにある耳小骨は大丈夫。聞こえにくい原因は内耳の蝸牛にあるので、ここに外科手術で頭にインプラントと呼ばれる装置を埋め込む。
私のほうは自分のタブレットを取り出して、いまの人工内耳って凄いんですねスマホとリンク出来るんですよとウキウキ顔で話しだした。
先生「勉強してきてると思うけど…」
はい、ここに来るまでにネットでたくさん調べてきました。
両方ともしたほうがいいね、ということで先ずは聴力が低下している右耳に人工内耳を入れることになった。右耳を入れてみて良ければ左もやることに。2回目は自費かと思えば、どうやら両耳とも保険が効くらしい。手術費はどれくらいですか?と聞いたら
「日本はいい国でね、高額医療費控除で6万円くらいで受けられる。ただし、動産保険に入る必要はあるけど…」
実際はもう少し高かったが、メドエル本社があるオーストリア在住の知人に聞くと、そこでは医療費は全て無料で受けられるらしい。驚いた。国によって違うのだろう。
「音楽の聞こえ方はどうなります?クラシック音楽好きなんです」
先生が困った顔で首を横に振る。
「そういう目的があるなら左の耳は残しておいたほうがいいね」
人工内耳は言葉の聞き取りに特化して作られているので、音楽は個人差があるようだ。特にクラシック音楽のような複雑な音楽となるとメロディーを聞き取るのは難しいらしい。
2017年に成人人工内耳適用の改正され、ちょうどいい時期だったのかもしれないと言ったら「法律で決まってるわけじゃないからね」と。人工内耳適用基準に満たなくても本人が望めば手術をしていたのだろうと思われる。術後の効果は若い人、頭のいい人は回復が早いとか。やはり脳の柔らかさが聞こえと関係しているのかもしれない。
手術日はいつがいい?と聞かれ、8月中旬まで忙しいのでそれ以降なら可能ですと伝えたら8月は予約でいっぱい。9月18日の水曜日に決まる。
先生が大丈夫ですよというようにかすかに微笑んでいた。
そういえばこの病院、診察時に看護士さんが常駐してないのは何故だろう…。
言語聴覚室でSTさん(言語聴覚士)に各メーカーの説明を受ける。人工内耳は3社あり、各メーカーの特性などを教えてもらう。メドエルはMRIが3.0テスラまで可能なので頭に埋め込むインプラントの磁石を取り外す必要は無いが、コクレアは手術が必要等云々。(※2019年の時点)
2019年2月にコクレア社から最新機器であるNucleus7が日本で認可され、iPhoneとBluetoothで音声をリンクできる機能あると知って以前からこれに決めていた。この機能が無かったら人工内耳を選択していなかったかもしれない。
Dr.とはずっと口話で会話していたが(低い男性の声なら聞き取り可)、女性のSTさんとはずっと筆談。腱膜炎になりそうなくらい書かせてしまって申し訳ない…。
部屋へ出る際に
私「人工内耳はどのくらいで新製品が出ますか?」
ST「5年くらい」
口話で会話したのは最後だけだった。