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吹奏楽部の感動喚起のメカニズム

自己紹介

  • 吹奏楽部顧問

  • 社会科教師

です。現在は私立中高で働いてます。


感動ってなに?

ところであなたは「感動」について、考えたことがありますか?人はなぜ感動するのか。そもそも感動とは何なのか。

そこでかなり以前にこの論文に行きついたのです。
正直いつごろだったかは覚えていないけれど、読むとめちゃくちゃ面白い。今日はこの論文の内容から、いろいろと「感動」について、要約しながらひも解いてみましょう!

映画と感動のメカニズム

感動とは、人がある出来事や体験を通じて「強い情動的な反応」を示す現象です。たとえば感動が起こる仕組みを僕が大好きな「映画」という側面から見てみましょう。

映画は、視覚・聴覚を通じてストーリーやキャラクターに観客を没入させ、感情を動かす強力なメディアです。映画が感動を生むメカニズムには、以下の要素が関わります。

物語の構造と感動

映画は一般的に「起承転結」や「三幕構成」といったストーリーテリングの手法を用います。

  • 序盤(起):登場人物の紹介や状況説明。観客が感情移入しやすくなる。

  • 中盤(承・転):葛藤や困難が発生。主人公の成長や挑戦が描かれる。

  • 終盤(結):問題が解決し、カタルシス(感情の浄化)を生む。

この流れの中で、観客は登場人物の感情に共感し、クライマックスで強い感動を覚える。

*起承転結の最後には、最後まで観た者だけが見ることができる美しい風景がある。

期待とギャップによる感動

映画は観客の「期待を操作」し、意外性を持たせることで感動を生み出します。

  • サプライズ要素:思いがけない展開やどんでん返しが感情を揺さぶる。

  • 葛藤の解決:苦難を乗り越えたときの達成感が感動につながる。

  • キャラクターの変化:成長や変化が明確に描かれることで、感動を強くする。

例えば、「努力が報われる」「家族が再会する」「自己犠牲が報われる」といったシーンは、観客の期待とのギャップを生み出し、感動を引き起こす。

*葛藤とサプライズは感動に必要不可欠な存在。

*どちらの画像も映画公式サイトにて配布されているものを使用しています。


3年間の三部作

あれっ?これってさ、全くもって部活と同じじゃない?って思っている訳です。そうなんです。さきほどまでの要約は、全くもって3年間の部活動生活と同じなんです。吹奏楽部じゃなくても、どの部活にも当てはまる話だと思うんです。

たとえばうちの吹奏楽部で言えば、出身中学校によって活動レベルにも大きな差があり、全国大会へ出場した生徒もいれば、地区大会にも出たことがない生徒も混在している訳で、部員がクラブに求めるニーズは様々です。だから当たり前に、生徒たちには悩み事がたくさん生まれる訳です。

しかし、この「悩み事」がたくさんあればあるほど、生徒が成長するのもまた事実。しかも、必ず起承転結、3年間で終わる(エンディングがある)のです。

つまり先ほどまでの映画が感動を生む仕組みと似ていて

1年生の起承転結(episode1)

  1. うきうきで入学し、憧れた部活に入る

  2. 思い通りになることと、ならないことを目の当たりにする

  3. 予想以上にしんどい悩み事が発生する

  4. 3年生が神様のように見える

  5. うまく行かないことを解決できる力が徐々に身に着く

  6. 役割が与えられる

  7. 個人的に貢献できることが増えていく

2年生の起承転結(episode2)

  1. 後輩が増えることにうかれる

  2. 思い通りになることと、ならないことについて考える

  3. 予想以上にしんどい悩み事が発生する

  4. 1年生からも3年生からも色々言われる

  5. うまく行かないことを解決できる力に磨きがかかる

  6. 役割に責任がのしかかる

  7. 協力により貢献できることが増えていく

3年生の起承転結(episode3)

  1. 後輩と責任が増える

  2. 思い通りにならないことを、思い通りに動かせるだけのチームワークを持っていることに気が付く

  3. 予想以上にしんどい悩み事を抱えた後輩の面倒を見れる

  4. 1,2年生の関係を心配し、自分たちが一歩引くことを覚える

  5. うまく行かないことは解決・解消する

  6. 役割とアイデンティティが重なっている

  7. 貢献ありき、他者の救済ありきで考える

  8. 幸せに卒部する

学年ごとに、葛藤があり成長があり、起承転結があります。

3年生になるころには、個人個人の成長によって抱えていた学年の問題は解消していくのです。

このような「3年間の三部作」を経て、満員のホールで盛大な拍手を浴びながら定期演奏会で卒部する訳ですから、活動に対してや自分たちが過ごした3年間に対して感動が喚起されることはもはや必然なのでしょう!

働き方改革と部活の今後

現場で働く者として、働き方を改革してくれることは大いに賛成なんですが、部活動を地域以降していくことも悪いことだとは思いませんが、そこに「感動」があることを願います。

振り返って、その感動があるから今を生きていられる私のような者もおりますので…。

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