住んでるマンションを退去したら被告になった話
皆さんは被告になったことはありますか?
かくいう私はつい一ヶ月くらい前まで被告でした
ことの起こりは、2018年の4月にさかのぼります
ピロロロピーロピロピーローピ(さかのぼる時の音)
私は昨年4月まで、東京の端っこで一人暮らしをしていました
新築、1K、駅徒歩15分、オートロック付き、バストイレ別、2階以上という好条件で、家賃もそこそこだったのでそれなりに気に入っていた物件でした
そのマンションの契約時に「退去する時にはクリーニング代4万円+『原状回復費用』(万が一汚したり壊したりしたところがあったらそこを元に戻すために別途払いなさいという金額)が請求される」という説明を受けていました
その原状回復費用の金額を決めるため、私は引越しが終わった後の空っぽの部屋で膝をかかえて、部屋の中を点検してくれる管理会社の人を待ちました
約束の時間から十数分後(遅刻された)、管理会社の女性がやってきました
遅刻もされたし、その前に「入り口がわからないんですけど〜」的なおっちょこちょいな電話が来たりして心配だったのですが顔が可愛かったので全部許しました
彼女は部屋の中の傷や汚れがあると思われる箇所に、テキパキと目印となる細いテープのようなものを貼っていきます
全て貼り終えると、ひとつひとつの箇所を私も一緒に確認していきました
目印をつけたもののほとんどが、4万円のクリーニング代の中におさまる汚れであるという説明を受け安心しました。友達に荒らされそうになっても土下座して制止するなど綺麗に使う努力をしていたかいがあった……
しかし唯一玄関付近の3cmほどの壁紙の破れのみ別途「クロスの張替え費用」が発生してしまう、という説明でした
「この張り替えってちなみにいくらなんですか?」
「2万円です」
えっ
「こんな小さい傷で?」
思わず心の声が漏れました
小指の先くらいの小さな傷ひとつで2万円…?
高くない?
だって2万円あったらいろいろなことができるよ?
〜2万円あったらできること〜
(1)玄関の前に「早い!」「安い!」「うまい!」と入れ替わりで表示される電光掲示板を設置する
(2)トランポリンとホッピングマシーンを買って人間が自力で飛べる限界を目指す
(3)安いキーボードを3つくらい買って小室哲哉っぽい動きをする
etc...
呆然とする私の前で彼女は言います
「他と比べて結構安いほうだと思いますよ〜」
そうなの…?
とりあえず私の頭の中にはスタンドみたいな感じで彼氏(鬼)の姿が浮かびました
※ご存知ない方もいるかと思いますが私の彼氏は鬼です
彼に聞いてみるか…
壁の傷をこっそりと写真に撮り、LINEで彼に送付
『これで2万円取られそうなのですが』
『絶対に払うな』
瞬速で返事が来ました
なんなら私が送る前からなにかを察知して準備してた?くらいのスピードでした
『なんかでもこれでも安い方なんだそうです』
『高い。支払いを求められたら殺せ』
殺せ…?
さすがに殺生は避けたいので女性との交渉を試みましたが「私は規定で決められている金額を伝えることしかできないので、後日改めて担当者から連絡をします」と言われてしまい、ひとまずこの場は終わることに
この時女性から、部屋を確認したことを証明する書類へのサインを求められました
書類には、部屋の中のどこを確認し、それぞれにいくらお金がかかるのか、といった細かい金額内容の記載もあります
クロス張替え、の欄にはきっちりと「2万円」と記載されていました
今回はその記載の金額には合意していないのでそれに関してはどうしたら良いのか聞いたところ、書類の文言のうち「請求金額に同意しました」の一文に取り消し線を引いて、代わりに「内容を確認しました」と追記して下さいとの指示があったので、それに従ってその場はサインをして終わりました
〜数週間後〜
私の元に、見知らぬ番号から電話がかかってきました
電話に出ると管理会社の男性です
あ、原状回復費用の件での電話かなと思い聞いていると、
管理会社「クリーニング代と原状回復費用の請求書を送るので、現住所を教えてほしいのですが」
請求書を…?
送ル…?
オレ…オマエ…トモダチ… みたいな悲しきモンスターのようなテンションになってしまいましたが、いやいや待てよと
私はまだあの2万円に納得していないのに、請求書を「送る」とは?
私「金額ってまだ確定してませんよね……?」
私は管理会社の女性から受けた説明内容をそのまま伝えました
契約書の「同意しました」という文言には取消線を引いたのでまだ金額に合意したことにはなっていないはず、と
しかし私がいくら説明しても「それは契約で支払うことになってるはずなので」の一点張り
私がそれ以上言えば言うほどに「絶対お金払いたくない人」みたいに捉えられてしまい、全く話が進まない
らちがあかず、一旦その日の電話は「また後日やりとりしましょう」ということで終わりにしました
〜数日後〜
私の元に「家賃保証会社」から「私が支払を行わないため原状回復費用の支払を代行する」旨の連絡が来ました
ホショウ……ガイシャ……?
シハライ……ダイコウ……?(モンスターの再来)
「家賃保証会社」とは、貸主への家賃滞納などがあった時に保証人の代わりに立替をしてくれる機関です
あくまでも私が"互いに合意"している金額に対して支払いを行えていなかったら(たとえば家賃の滞納とか)この保証会社は出てくる必要があるのだろうけど今回の場合は金額がまだ決まってないじゃん!!?!?!?
私「いや、私その金額にまだ合意してないんですよ…」
保証会社のおじさんに、管理会社とのやりとりの全容を伝えました
私のその言葉を聞いた保証会社のおじさんは言います
おじさん「あ、そうなの?でもこっちは何も聞いてないんですよね〜、ご自分でもう一度管理会社に確認してもらってもいいですか?」
電話を切ったあと、背中のあたりに怒りの気配を感じました
それを背後で聞いていたのは、そう
彼氏(鬼)
です
※みなさんも(笑)のように気軽にご利用ください
実は彼氏は昔から不動産投資などをやっていて自分でもマンションを保有しておりとにかく死ぬほど不動産に詳しいうえに性格が怖いという、私がもし管理会社の人間だったら絶対に敵に回したくない人種です
鬼「それってさぁ、有印私文書偽造だよ」
私「ユ…ユウインシブンショギゾウ……?」
鬼「保証会社がお金を支払うには契約者が何かしらの合意をしたというサインがないとできないはずなんだけど実際君はクソ管理会社から提示されたクズ金額に合意すらしていないわけでこれはどこかの段階で勝手に君が合意したことにされて支払の手続きが進められてるということでありれっきとした犯罪だよ殺すべき」
いきなり長台詞をキメだしたうえに攻撃的な単語が散りばめられていて怖いな……と思いましたが言われたことをよく反芻してみたら事実はもっと怖かった
私は合意した覚えのない金額を合意したことにされ、いつの間にか支払をすることになってしまっている…
鬼「ここから先は俺が代理人としてやりとりするから君は委任状だけ用意しなさい」
私はわけもわからないまま「委任状 フォーマット」でGoogle検索して出てきたWord文書に必要項目を記入し、今後の連絡の一切は彼から行う旨を管理会社へ送付しました
〜数日後〜
彼氏は私に聞こえるようにスピーカーの設定をしたあと、管理会社に電話をかけました
彼氏「これは有印私文書偽造ですよね。こちらは金額に合意はしていない。あと、あきらかに不当な請求です。これで2万はありえない」
管理会社『とにかく支払ってもらわないと困る。契約時にも原状回復費用についてはそのように説明している』
彼氏「いや話聞いてますか? そもそも金額に合意したことになっていない。こちらには書類の控えもある」
管理会社『こちらは裁判を起こすことも辞さないぞ』
彼氏(鬼)『えっ、別にいいですけど。だって犯罪おかしてるのはそちらだし…』(何言ってんだこいつ、というトーンで)
管理会社『待ってろよ』
ガチャ切り
管理会社の男はかなり喧嘩腰で電話を切りました
(この後彼氏が荒れ狂ったことは説明するまでもない)
〜2ヶ月後〜
管理会社からの連絡もぱたりと止み、そんな騒動なんて忘れかけていた昼下がり。
郵便書留が来たなと思って受け取ってみたところ、裁判所からの「支払督促状」でした
生まれて初めての支払督促状に恐れおののく私
それを見た彼氏
彼氏「裁判所からの通知だったら怖気付いて払うと思ってんだよ。単細胞の馬鹿が」
同じく単細胞な私はいや確実に払わないといけないだろうという気持ちになりかけました。払わないと何か大変なことになるのでは…と
でもたしかに改めて考えると私は何も悪いことはしていない…
支払督促状をよく読むと「2週間以内に異議申し立てをしないと仮執行の宣言をする」とあります
IQが低い私には一文字も理解できないので彼氏に聞くと「異議申し立てするに決まってる」と言いました
私はなんでもわかる便利ツール「インターネット」で「異議申し立て」と検索しました
『『民事訴訟の手続きに移行します』』
この一文を見た私は恐怖により「祟りじゃ・・・祟りじゃ・・・」と村一番の長老みたいな口調で5回つぶやきましたが、彼氏はそれを完全に無視してテキパキと異議申し立ての書類に必要事項を記入し、ピッチリと封をしました
〜1ヶ月後〜
き、キターーーッ!!!
裁判への「呼出状」だーーッ!!!!!
※自分の名前の前に「被告」とついた文書が送られてくるのは割とダメージがでかいので嫌いな人に圧倒的なダメージを与えたい場合は名前に被告とつけた文書を送るのがオススメ!
彼氏「わざわざ負けに来るとかほんと馬鹿だな。裁判でボロクソに罵ってやるよ」
こうしてトントン拍子で被告になった私
果たして私は無事に「勝訴」の紙を持って裁判所から飛び出すことはできるのか!?
次回につづく!
〈本日のひとこと〉
蝶のように舞い、泥のように寝る
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