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友情の総重量

正臣の家の蔵で遊んでいたら埃まみれの秤を見つけた。支柱に飾り文字で”友情計”と刻まれていた。
「何これ?」
と正臣。僕は肩をすくめた。
「体重計?」
「動くかな?」
「試してみよう」
正臣が秤に乗ると、針が揺れ50キロを示した。次に僕。いつもと同じ45キロだ。やっぱり体重計か。友情計だなんて書いてあるから何かあるのかと思ったけれど、拍子抜けだ。正臣も同じ気持ちだったのか、ふざけて僕に抱きついてきた。秤の針が大きく揺れる。表示された数字は、
「110キロ?」
「95キロのはずだよな」
1人ずつ計り直すと正しい値を示すので、壊れている訳ではなさそうだ。不思議に思っていると、正臣がつぶやいた。
「友情の重さだよ」
「え?」
「ここに友情計って書いてあるだろ。総重量が2人の体重の合計より重いっ
 てことは、俺らの友情が15キロだってことじゃないかな」
確かにそれなら合計値がずれる理由の説明が付く。
「でも、15キロってどうなの?”重い男”ってやつ?」
「嫌なのかよ⁉」
「そんな訳ないだろ、親友」
おどけて言ったら、正臣の耳が真っ赤になった。かわいい奴だ。
もう一度2人で友情計にのったら総重量が2キロ増えていた。

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