リベンジトリートメント
美容サロンを首になった。
些細なミスを理由に、店長は「お前はもう必要ない」と言い放った。
自分勝手に人の尊厳を踏みにじった店長を絶対に許せない……
「もう一度聞きます。本当にやるのですか?」
医者の問いかけに、手術台の上で黙って頷く。もう医者は何も言わなかった。麻酔ガスを吸うと視界がぼやけて、意識を失った。
数時間後、目が覚めて鏡を見ると、そこに映るのは知らない男の顔だった。
翌日、偽名を使ってあのサロンのスタッフ募集に応募すると即採用が決まった。私は真面目に働き、徐々に店長の信頼を得ていった。
閉店後、私は店長と2人で残り、売上をチェックしていた。
「君が来てくれて、本当に助かっているよ」
「前の人はどうして辞めちゃったんですか?」
「大人の事情って奴だな……」
私は店長の背後から近づくと、頭の上からトリートメントをぶちまけた。店長が驚いた様子で振り返る。
「何すんだよ!」
「懐かしい香りでしょ?」
私が囁くと、怒りに顔を赤くしていた店長の動きが止まった。
「何を言っているんだ?」
「この香りで、奥さんにバレちゃったんでしょ」
「お前、彩なのか⁉」
店長の顔色が青くなり、体がガタガタと震えだす。
「不倫の末にポイ捨てした女が、そんなに怖いの?あ、そうか。もう女じゃないんだった」
私は愛用しているハサミを手に、ゆっくり店長に近付いた。