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祈願上手

最近セールスが絶不調。このままじゃ昇進レースで同期に後れを取ってしまう。こうなったら神頼みだ!

神社には先客がいた。彼は真剣な表情で長々と手を合わせている。みんな大変なんだなぁと思いながら、僕も続いて祈りを捧げた。

「セールスの成績が上がりますように。いや、どうせならすぐに昇進できますようお願いします!」

二礼二拍手一礼をして帰ろうとしたら、すぐ隣で見た顔がお参りをしている。同期のケンジだ。「お前も昇進祈願か?」と聞くと「いや、俺は宝くじ当選を願ったんだ」と言う。欲しいモノも人それぞれなのだ。

翌日、出勤すると上司に呼ばれた。「君、来月から課長ね」。驚いたが嬉しかった。その日の午後ケンジから電話が。
「聞いてくれ!宝くじが当たったんだ!」
「マジで⁉いくら?」
「一億円!」

早速、きのうの神社にケンジとお礼参りに行くと、あの男がきょうもいた。真剣な表情で何かを祈っている。僕たちは興味を惹かれ話しかけた。
「きのうもいましたね。この神社のご利益はすごいから、きっと願いはかないますよ!」

それを聞くと静かに微笑み、「氏子の願いが叶うことこそ私の願いです」と言い残し、彼はす~っと本殿に吸い込まれていった。

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