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お姫様ラッコ

これは、私が子どもの頃に聞いたお姫様の話。

その姫は我儘で、いつも海辺で仰向けに寝そべり、侍女たちから差し出される新鮮な貝をむさぼり食べていた。貝が小さかったり、形が悪かったり、少しでも気に入らないことがあれば、容赦なく貝殻を投げつけては、血を流す侍女を見てケラケラと笑うのだった。

ある日、粗末な格好をした老婆が現れ、姫に食べ物を恵んで欲しいと頼んだ。

「なんで私が食べ物をあげないといけないの?あなたにあげるくらいなら、捨てた方がましよ」

姫は手にしていた貝をぽいぽいと海に放り投げて老婆を嘲笑した。老婆は「愚かな姫よ。そんなに貝が好きなら、一生貝だけを食べ続けるが良い!」と言い、手にしていた杖を天にかざした。その途端、海の水が黒く泡立ち、冷たい霧が姫を包み込んだ。姫の手足が捻じれ、骨が軋む。悲鳴を上げると、喉から出たのは「キィッ」という獣じみた鳴き声だった。姫はラッコにされてしまったのだ。

その後、姫の姿を見たモノは誰もいない。


でも、人間がラッコに変わるなんてことが本当にあるのでしょうか?そもそも、誰が老婆を見たのでしょうか?

姫は恨んでいた人はたくさんいたそうです……


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